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07 冒険者



 地下都市エターナル

 上級管理者から管理業務を委託された労働者の階層、通称カンペールの街から下に二階。地下二階層のとある場所でランタンの明かりが灯されている。


 冬眠エリアの備品倉庫らしき小さな部屋。

 室内の電気を点けず、更に灯りが漏れないように荷物や機材で囲んだ空間の中心に、ランタンの小さな炎が揺らいでいる。


 それを囲むのは三人の男女

 体格の良い黒人男性と面倒見の良さそうな白人女性、そして少年の取り合わせ。

 そう、ダイアーに遭遇したリュックと、そのダイアーを排除したジェイコブたちが休憩を取っていたのである。


 白人女性が淹れてくれたコーヒーを飲むジェイコブとリュック。これ食べなと渡された栄養補助チョコバーはいささかリュックには甘過ぎるようだが、茶と共に休息の時間と場を作ってくれた二人に感謝しながら珍しい高級品に舌鼓を打つ。


 コーヒーをすするジェイコブは普段から寡黙なのか、全くと言って良いほど喋らないのだが、この最強の戦士と誉れの高いエクスルーダーに従う白人女性が、無口な要塞を補うかのようにリュックの疑問に“先回り”して答えていた。


 白人女性の名前はケイリー、ジェイコブとは幼馴染みで今はビジネスパートナー。上級管理者から依頼された様々なタスクの内容により、メンバー仲介や編成、そして作業工程のデザインをする役目を負っているそうだ。

 そして何故今日は地下二階に二人でやって来たのかについては、上級管理者からの依頼ではなく、やはりリュックも懸念していたダイアー出没の件を調べようと独自に潜入したのだそうだ。


「リュックは何で地下に潜ってたの? 良く独りでなんか潜れるよね」


 ーー本来のリュックであるならば、地下に関しての質問には全てとぼけていた。

 地下へは潜っていない、潜ったとしてもエクスルーダーの護衛が付いたテクニカルの補修作業の見学だったり雑用だとか、その場その場で上手い事を言っては注目される事から避けて来た。


 だが、リュックは何故だか包み隠さず全てを話したのである。


 今までずっと秘密にして来たが、常に独りで地下に潜って来た事。そして自分だけが知るルートを使い地下三階の独自マッピングを行なっていた事。

 収集した貴重な基盤などは上級管理者に提出せずに友人のチャドへあげていた事。

 今日も地下三階で新たなエリアをマッピングした帰りに、ダイアーそしてジェイコブたちと遭遇した事。

 自分のこれまでの人生を事細かに語るように丁寧に語ったのである。


「驚いた! まさかこんな少年が……いや失礼。それにしても凄いのね、リュックは」

「いえ、凄くはないです。結果としてデジドルを稼いでいる訳じゃないですから。電子配給の内容は貧困層そのものです」

「まるで趣味の世界ね。仕事にした方が暮らしは楽になるわよ」

「仕事ですか……」


 もちろんケイリーは皮肉を言っている訳ではない。遊びで地下に潜入する子供だとからかっている訳ではないのだ。

 独りで潜入する度胸と独自の秘密ルートを持つリュックに対して本気でもったいないと感じているのだ。秘密のルートとは、それだけで価値あるものと言う裏付けでもある。


 だが意外にも、ここでジェイコブが二人の会話に口を挟んだ。それも何と返答に苦しむリュックの代わりにジェイコブが答えたのだ。


「仕事にしてしまうと付いて回って来る責任が重くなる。人を雇わなくてはならい事もあるだろうし、自分の判断をいちいち理解させなければならない分足も遅くなる」


 何であんたが口を挟むの? それも滅茶苦茶饒舌だしと、目をまん丸にして口をポカンと開けたケイリー。ジェイコブはそんな彼女をほったらかしのままリュックに向き直った。


「今日我々は、君とダイアーが現れた場所まで一度探索の足を伸ばしていた、その際はダイアーはいなくてクリアだった。この意味が分かるか? 」

「分かります、僕の秘密のルートからはダイアーの出入りは無かった。つまりあのエリアのどこかに地下三階と繋がるフリーの別ルートがある」


 満足の行く答えだったのか、ジェイコブは口元に微かに笑みを浮かべながらゆっくり頷く。


「この後我々はそのルートを探して閉じる積もりだが、君は街に帰りなさい。後ちょっと、もう少しと欲が出て来た時が一番危ない」


 ーーあの伝説のエクスルーダーが自分を気にかけている

 何とも夢見心地のリュックは、この二人と目的や行動を一緒にすると言う甘い欲に誘われながらも、ジェイコブに言われた通り街に帰る事を約束した。


『君の行動能力、マッピングの記憶力、そして暗視能力の凄さは卓越したものがある。本気で地下を目指す気になったら私を訪ねなさい』

『ジェイコブは宝探しやダイアーの殲滅が最終目的じゃないの。エターナルの秘密に迫りたいと思ったら、G区にある私の事務所に来て。リュックなら大歓迎よ』


 最高のエクスルーダー、要塞のジェイコブ

 そしてジェイコブ専属のタスクマネージャー、ケイリー


 二人との出会いを果たしたリュックの運命は、たった一人の緩やかな「モグラ」生活から劇的な冒険者への道へと変わって行く事となる。




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