表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
38/43

38 アルジーラ・ニアヴェルディー1

 ――まったく、セラクに迫っていいのは私だけだというのに――

 ……と。

 どうしようもなくぶっ飛んだ持論に基づいた怒りを訴えながら、ラミス姉さんは現れた。

 鎧は着ておらずインナーのみの軽装。だが、いつも愛用している魔槍はしっかりとその右手に持っている。


「ラ、ラミス姉さん……!?」


 どうして姉さんがこんなところに……いや、そりゃ王都にはいるだろうけど、この時間に起きていて、しかも城にいるというのは……。


「そこの魔族。今すぐセラクの上からどけ。さもないとその胸を削ぎ落すぞ」


 アルジーラさんに向け、ラミス姉さんは忠告の形をした嫉妬をぶつける。


「……あなたもクレイがどこにいるか知っているの?」

「クレイ? 貴様が捜しているということは、それは先日まで捕まっていたという魔族のことか? だったら知らん」

「そう。それならあなたに用は無いわ」

「ふむ、そうか。……ただ、残念ながら私は貴様に用があるんだ」

「……互いの名前も知らないような、そんな初対面の相手に何の用?」

「端的に言うなら風紀の保持だ。一応名乗っておこうか――私はラミス・ラーミック」


 言って、姉さんは槍を肩手で持ち――肩上で構える。

 まるで、これから投擲でもするみたいに。

 ま、まさか……。


「今、お前が襲っている男の姉だ」


 そう言い終えると同時に投げた。

 持っていた槍を、アルジーラさんに向かって思いっきり。

 その着弾地点には俺もいるというのに、構わず投げた。


「……物騒ねぇ」


 アルジーラさんは中腰になって俺の首元を掴み、そのまま俺をラミス姉さんの方へ放り投げながら、自分は跳躍して地下牢の奥へと下がった。

 俺たちがいた場所の石の床をバキバキに砕き、細身の槍が突き刺さる。


「……うわ」


 危ない……アルジーラさんが投げてくれなかったら死んでた……。


「いやぁ、それにしても久しぶりだな――セラク」


 不甲斐なく足元へ転がって来た俺を、ラミス姉さんは仁王立ちで見下ろす。


「ああ、いや、久しぶりではないか。日中、エリティア嬢の護衛として来ていたな。だからまぁ、会話するのは久しぶり――といったところか」

「……なんだ、知ってたんだ」

「当然だ。今までエリティア嬢が護衛を付けることなんてなかったし、このタイミングで顔を隠した従者を雇うなんて不自然過ぎる。だから私はてっきり、セラクが『お姉ちゃん、僕は無事ですよ』と報告に来たのかと思ったぞ。エリティア嬢が健気に隠し通そうとするから見逃したが……そうじゃなかったらあの場で抱きしめるとこだった」

「…………」


 一人称も三人称も違う……。

「僕」と自称したこともなければ「お姉ちゃん」と呼んだこともない。……まあ、子供の頃はそうだったかもしれないけど。 


「……でもどうせ、姉さんはエリティアが一人で来てたとしても見抜いてたんだろ?」

「まあな。エリティア嬢以外に目撃者がいないのは信用に欠けるし、私の話術で問い詰めれば彼女はすぐに白状しただろう」

「今回の件で、俺が姉さんを欺ける可能性のあった手段は?」

「そんなものはない。私は端からお前が生きていると断定していた。私の弟が私以外に負けるはずがないんだからな」

「…………」


 その手の発言の根拠は一体どこから来ているんだ……。


「……というか、姉さんはなんでここに?」

「フフ、愛する弟の貞操の危機ともなれば飛んで駆けつけるさ」

「どちらかというと命の危機だったけど……で、本当の理由は?」

「単純に、お前がここに来るだろうと思ったからだ」


 姉さんは口角を上げて言った。


「エリティア嬢に魔力障壁のことを尋ねさせるということは、そのクレイとかいう魔族を匿っているんだろう? セラクがその子を王都から出す方法を探っているのなら、何か情報を求めてここにやってくるのは自明の理だ。……ただまあ、あの様子だとどうやらうまくはいっていないようだな」


 と、ラミス姉さんは、先ほどから地下牢の奥で目を丸くしているアルジーラさんの方へ目を向けた。

 やはり姉妹だけあって、驚いてる時の表情がクレイによく似ている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 思ったより姉は頭良かった
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ