第58夜(学園編) ユリアは憂鬱
前回のあらすじ
ラキシスは不運なことに巻き込まれました。
私は憂鬱であった。
それはもう憂鬱すぎて、夜しか眠れないほどに。
おい、そこの、夜寝てるなら十分じゃないかとか言った奴。お黙りなさんし!!
マジで頭を抱えているのよ!これでも!!
はあー。今更になってヒロインって罪な存在(意味深)ってのが分かってきたわよ。
大人しくするってのも大変なのよ。あーたっくもー!!ひゃあ!!
おっと、魔法の授業中にこんなこと思ってたらダメだわ。火魔法が炎上魔法になるところだった‥‥。教室が火の海になる‥‥。
ゲフンゲフン、取り乱したわ。
悩み事は3つある。どれも難問である。
1つ目、大人しくしているのに、何故かじっと見つめられることが多々ある。
同じクラスの平凡顔の‥‥誰だっけ?ファンだっか、フォンだったか、よくわからないけどよく知りもしない男と目が合う。
フッ、ヒロインらしい顔つきの私に惚れたかと最初こそ思ったけど、どうも違う。何か定期的に確認するようにこちらを見る。
‥‥何となく同じ転生者な気がするけど、同じ転生者同士が関わると拗れるってどっかのネット小説で見た。
でも、コイツはまだ良い、序の口だ。
問題はそうシヴァリエ・マイネス!!
あのイケメンである。
彼はふとした瞬間にこちらを見ているのである。ものすっっっっごく!!生暖かい目で!!!!!!!!
なんだよ。その大きくなった子どもを見るような親の目は!?私、あんたに育てられたことないっつうの!?本当に、本当になんなんだ!!明らかに微笑ましいものを見る目なのよ!!
そんな目で見られる度に、揚げ足取り大好きお局様軍団‥‥ゲフンゲフン、イケメンにお近づきなりたい♡顔が良ければ全て良し嬢様隊に睨まれるんだけど!!私、貴方に何かした!?小さい頃に会ったとかそんなのも無いし!
あーもうマジやめてー。
大人しくしたいのに、これじゃ目立つじゃんよ。ハァアアア(深い溜息)
2つ目、何故か悪役令嬢と知り合った。
何故か、本当に何故かスフィア・カルマンという公爵ルートにおける悪役令嬢と知り合ってしまったのだ。他意は無い。
「あなたが、ユリア・ローザレンスね?」
「はい‥‥なんでしょうか?」
「ふーん、地味な女ね。」
「(8年前とかゲームはともかく今は平民だからね。化粧とかに金かけられないわよ。)」
「貴方、学業を疎かにして男に走りそうな顔だわ。」
「‥‥男なんて (ルート攻略忘れたし面倒いし割とどうでも良くなったから)、別に要らないです。この学園の入学だって (流されて入っただけで何がやりたいとか本当に無いけれど、まあ今の実家の地主業だけじゃ将来心許ないから、折角だし程々に金になる資格を取りつつ適当に過ごしながら)学業を真っ当しに来たですし‥‥。」
「??!?‥‥え?貴方、高い志で入ったのではなくて?」
「(ん?この質問どう意味だ?)‥‥高い志が無いと入学出来ないのですか?」
「いえ、少し呆れただけです。ふん、やはり殿方狙いではないのですか?既に手を出しているのでしょう?」
「(何か嫌な人だな‥‥流石悪役令嬢。)あの‥‥(状況も変わっているし選択肢忘れているし、攻略対象、特に王子がめんどくさいことになっているせいで)恋愛に(前向きになる訳もないし、厄介事の気配しかないから)興味ないのでそんなこと言われても困ります。手を出すなんて‥‥そんな。(それより昼飯食べていいですかね?今、本当、恋愛より学園の照り焼きハルチキンなのデスヨネー。何かもう貴方面倒い。というわけで)貴方は私に誤解しています。何故誤解されているのか、私には全く分かりません。誤解の釈明は難しいですが、貴方が言われているようなことは全くやっていません。今後だってやりません。そう誓うのでここはどうかお引き取り願えませんか?」
そこでスフィアさんは目を見開いて、貴方、馬鹿なのと私に向かって呟いたように思ったが気のせいだ、気のせい。というか、気のせいじゃなかったら、心外すぎる。
全くもう変なのに絡まれちったよ。
恋愛する為に生きてんじゃねえー。
ん?昔のお前は確実に恋愛に生きてた?うるせー!今は今、昔は昔!私はもうヒロインだけど、ヒロインしないんだい!!あーもう悪目立ちするのかな?ヒロインって?だから、あんなストーリーで恋愛することになるのかしら?
国を救う話だけど、よくよく考えたら、脇役キャラの死亡率高いし、ヒロインが好きになる人もヒロインを好きになる人も現実にいたら一癖二癖強いんだもの。
ミカエラは(周りが作る)完璧な王子だった。
カイムはちょっとブラコン気質な弟キャラ。
アルフレッドは‥‥まあいいか。
シリウスはヤンデレ千里眼監視皇子。
ラキシスは‥‥女遊び好きだけど真実の愛を探しているキャラで‥‥あら?よく考えたら、この人、子爵の養子として学園にいる筈なのに見当たらないわ。‥‥まあいいか。
あと最後は‥‥ん?名前忘れた。誰だったかな?とにかく平民だった気がするけど‥‥。偉大な魔法士を目指してる系の‥‥。
まっいっか!どうせ忘れてるってことは、そんなに魅力的なキャラじゃなかったんでしょ!
そして、悩み事、3つ目、厄介なやつに喧嘩をふっかけられる。
隣のクラスにエミリア・ナーアサルトっていう女の子がいるのだが、まあよくネット小説で見る取り巻きを連れた悪役令嬢である。ゲームに登場していたかは思い出せないが、やっていることが完全に悪役令嬢。
そう。穏やかなたれ目、ピンク髪、水色の瞳、超守ってあげたくなる小動物みたいな雰囲気。‥‥この容姿にして、性格は私から見て最悪である。
「うふふ、あら、ユリアさんったら、成績優秀者のクラスなのに、外国語ダメダメね。」
そう彼女が言えば。
「くすくす、あーら、エミリア様。笑われて当然の人間にお気を遣うことは無いわ。」
「完璧なミカエラ様に相応しくないクラスメートがいたものね。」
そう取り巻きが言う。
弱い者いじめというか?嫉妬というか?よくわからん神経だ。わざわざ隣のクラスまで来て、私を弄る意味もわからない。てか、私より成績が悪かったから、貴方達、別のクラス何でしょうが。私のクラスが成績優秀者のクラスなら、別のクラスのテメェらはそうじゃねえってことだよ。言っとくがな。外国語だけしか成績の悪くないんだぞ!私!‥‥何かもう揚げ足取りもここまでくると哀れよ?
何で絡まれるのか知らないし、私、何もこの人達にここまで言われなきゃ分からないけど、残念ながら私は彼女達に何も言えないのである。
どうしたら、そんなに好かれるのか知らないが、私のいるクラス以外の女の子、貴族だとか平民だとか関係なく、エミリア・ナーアサルトという少女は類まれなるカリスマを持って取り巻きにしているのだ。女性にモテるというのか、エミリアは常に誰かと一緒にいて、誰かに担ぎ上げられている。
つまり、エミリアに意見しようものなら、全クラスの8割の女子が私の敵になるのである。恐ろしや。
だから、私はこう返すしかない。
「まあ、お恥ずかしい限りですわ。エミリア・ナーアサルト様が言う通り、外国語だけはどうも苦手で‥‥。私のクラスの皆様におしえてもらうばかりです。何せ皆様、私など遠く及ばない方々ばかり。ミカエラ様などその最たるものでしょう。
ご指摘頂き、エミリア様ありがとうございます。あなたのおかげで自分の立場が再度よくわかりました。お気遣いありがとうございます。これから精進していきますわ。」
「は?私はそういうことを言ってるのではなく‥‥。」
「おほほほ、何を仰っていらっしゃるのです?エミリア様は、私に遠回しに頑張れと励まして下さっているのでしょう。流石、エミリア様ですわ。」
「だから、私は貴方を!!」
「分かっています!分かっていますとも!!(ゴリ押し) 何も言わないでください。エミリア様はこの学園の星であり、ミカエラ王子の隣がもっとも相応しい方!そのような方にご指摘頂いて、私感激です!」
「(状況が理解できないマヌケ顔)」
「これからも不甲斐ない私をよろしくお願いします!精進して参ります!叱咤激励がこれほどまでに響く方はいらっしゃいません!!ああ、この感謝をもっと伝えたいのですが、次の授業があるので、ごめんあそばせ!では、次の機会に改めますわ。では!」
私は移動教室先の理科室に向けて踵を返し、彼女らに背を向ける。
舐めんじゃないわよ。アラサー+16歳だぞ、私は!!あんたみたいな厄介なマウンティング野郎なんざ。目じゃねえー。表立って敵に回さなくても撒ける技術と経験ぐらいあるわ。
あー虫唾が走る‥‥。
しかし、エミリア・ナーアサルト‥‥ゲームにいたかな‥‥。ゲームの知識が今欲しいわ‥‥あの女の弱点とか弱点とか知りたい。んで、魔法で私だと足がつかないように仕返ししたい。女で群れて大所帯でイビるなんて不公平すぎるもの。靴に画鋲が刺さらないかしら?もしくは、天井からカエルが降ってくるとか?そういう地味な仕返しが1番ああいうのに効きそう。
‥‥はあ、ストレス‥‥。
多分、明日も来るわよ。どうやって撒こうかな‥‥。
以上、これが私の悩める種である。
これ以上、増えないことを祈りたい。何なの?やっぱり私がヒロインだから、こうなるの?でも、攻略対象に近づいていないのに悪役令嬢に絡まれる率高くない?おかしくない?強制イベント『悪役令嬢に睨まれる』なのかしら?はあ、意味わからん。
ネット小説にあるような攻略対象と強制イベントとかないし、第一、ミカエラ王子とか私を眼中にも入れないところを見ると、ゲーム内のヒロインって結構グイグイタイプの肉食女だったんだなって思う。こっちからアクションを起こさないと向こうが来ることないんじゃない?そのぐらい興味無さげよ、あの方。
まあ、何故かこの学園にいる攻略対象がミカエラ王子だけだから他は分からないけれど。公爵様とアルフレッドはまだ先だから良いとして、なんでラキシスいないんだか。死んだ??
まあ、別にいいか。
とりあえず、これ以上、悩みが増えないように現状維持しつつ、更なる大人しい生活をしよう‥‥うん。
‥‥と、意気込んでいた自分がさっきまでいました。
「えー皆さん、入学してからだいぶ経ち、クラスメートにも慣れたかと思います。ですので、クラス内の更なる団結の為に、魔法専攻と騎士専攻合同の実習を行おうと思います。えー、詳しくは配布資料を読んでください。では、既に班決めを行っておりますので、今から班員で集まり、班長を決めてください。班決めの文句は受け付けません。では、以上です。」
だからってさ。
だからってこれは無くね?
「同じ班よろしくね!!」
「何でまたヒロ‥‥ユリア嬢‥‥?まあ‥‥いっか‥‥。」
「お前ら!俺を!無視するな!!」
ご愁傷様です。私。
ご都合主義にも程があるだろう!!コンチキショー‥‥!!
ああ何故五人グループだというのに、その内、3人がイケメン、平凡顔、王子という地獄のラインナップなんだ!?
イケメンは何か超嬉しそうだ、犬ならしっぽが扇風機のように回ってそう。平凡顔はこっちを見てため息吐いているし、何故か知らないけどその二人揃って露骨に無視する王子はコチラをちらちら見て助けを求めてる。もし翻訳をするのなら、『この二人との仲を取り持ってくれ。』という奴ではないか。御免こうむる。自分でやれよ。
カオスだ。
何だこの三者三様は。
唯一の救いは、最後の1人はまともな奴だったこと‥‥。
「‥‥。」
前言撤回、無口だ。絶望的に無口な男だ。‥‥やっべえ、やっぱりマトモな人間が居ねえ。
私と同じ魔法専攻のレイン・アークライトという人、アークライトという一時期は宮廷魔導師にも任じられた魔法士の家系の人物、透明感のある淡い朱色の髪に、深紅色の瞳の美男子なのだが、まあ王子やら目の前のイケメンやらのせいでクラスの中でも影の薄い存在になっており、なおかつ、無口、当然ボッチ。でも、口を開けたら常識人だから、魔法専攻では割と頼りにされてたりする人‥‥なんだが、今回ばかりは頼りにならなそうだ。ディスコミュニケーション人間なんて、モアイ像と一緒にいるのと変わらない。
先生の声が響く。
「‥‥えーこの班員で5日間、過ごして貰います。問題ありませんね。」
問題大有りだわ!!
コイツらと私、どう過ごせってのよ!!!!
あーもう!どーにでもなぁーれ♡ (ヤケクソ)




