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第52夜(学園編) 学園デビューボッチ

前回のあらすじ


スフィア嬢、苦戦。

謎多きルーク。

 











 入学式からしばらく。






 学園に通う日々が楽しくてしょうがないシヴァリエだったが。





 クラスでは何故だか遠巻きにされていた。













 お久しぶりです。シヴァリエです。

 ふへへ‥‥毎日が楽しい。

 私は男として学園に入ったんだけど、騎士専攻以外の授業は男女共通だがら、殆ど問題が無い。ただフィンからは「馴染みすぎじゃねえ?」と首を傾げられた。

 「あんたさぁ、女性が男装とかボロが出そうなもんなのに、全然そんな事ないな。」

 「辺境伯領でも昼間は男として行動していたからね。4年くらいかな?まあ、あと魔法で完全に男になってるし‥‥。」

 「なあ、素朴な疑問なんだが‥‥あの所謂、息子ってついてる?」

 思わず、変態!って叫んじゃった。


 まあ、そんなことがありつつ。


 学園で習う勉強はカタリナさんやローザレンス家とは全く違う勉強ばかりだ。なんだろう、国の行政官や法務官として働くことが前提の勉強。小学校や中学校で見た基礎的な5教科とはまた別に法律だとか民法、三部議会勉強会だとか国会議員でも作るのか?と思うようなそれ。

 一番びっくりしたのは選択授業の選挙必勝法。名前の通り、選挙に勝つための授業だけど、市民間での政治熱が凄いとはいえ、選挙に必勝法なんてあるようには思えないんだけどな‥‥。実際、教室の前に貼られた選挙当選率は40パーセントを切っていた‥‥必勝法名乗っていいのかな?

 魔法はもっと辺境伯領と違った。

 なんとこちらでは無詠唱魔法はポピュラーじゃなかった。何気なく無詠唱で魔法を使って花に水をやってたら、フィンにものすごく奇異な目で見られて。

 「お前、無詠唱魔法できんの?」

 って聞かれて、お互い、??状態だった。カルチャーショックだった。同じ国だからこっちでも無詠唱が普通だと思ってた。辺境伯領は無詠唱が普通だよ、とフィンに言ったら、フローレンスでは1000人に1人とかいう確率で出来る人が現れないらしく、目玉が飛び出るぐらい驚かれていた。

 「‥‥ちなみに俺も出来たりする?」

 「できると思うよ。私みたいに長くかかる人はいるけど、修得できない人は聞いたことないし。」

 「へえ。こっちじゃ魔法は呪文を言って使うもので、その非効率が一番効率がいいってなってる。その点、あまり無詠唱魔法使わない方がいいと思うぞ。悪目立ちするから。」

 魔法の授業が始まる前にこんな会話していたから良かった。みんな大真面目に呪文を唱えている中、無造作に魔法を使おうものなら悪目立ちどころじゃない。特に私は無詠唱魔法ができることを除けば、魔法の腕は平凡もいいところ。魔法の才なんてない。

 うん、長いものに巻かれておこう。

 騎士の授業は本当に楽しかった。

 模擬戦に模擬戦、更に模擬戦しかしないような授業しかないけど、ゴーレムだったり、実際の騎士だったり、クラスメートとだったり、実体のない魔法だったり、とにかくバリエーション豊かな相手と戦えるのは楽しい。ただクラスメートに、王子がいるから本気を出すのを遠慮するように言われたのはびっくりした。王子だから一番強くないと国の威信が云々とか話していたけど、王子を強く見せたいから、王子相手には本気出すなって‥‥忖度とか色々通り越して、問題のような気が‥‥。


 僕のクラスは30名ほどのクラスだけど、前述した第二王子のミカエラ様を始め、公爵家や侯爵家などの王族や貴族が殆どだ。商人や平民は数える程しかいない。その平民も元貴族だとか‥‥。

 そして、その元貴族の平民の中になんとユリアがいた。

 8年ぶりの再会‥‥!可愛くなってた。ローザレンス家が貴族じゃなくなったらしいって風の噂で聞いてたけど、本当に貴族じゃなかった。けれど、元気そう。

 ‥‥でも、話しかけるのは止めておこう。今、男として学園にいるし、覚えているか分からないし‥‥覚えていたとしても私のこと嫌いかもだ。それにもう私はシヴァリエとして生きた時間の方が長くて、今更、アイリスと呼ばれるのも‥‥。


 まあ、でも、3年はユリアと同じクラス。


 見守っておこう。



 そんな私のクラスだけど、何故か‥‥



 私だけ距離を取られているんだよね!!




「学園デビューしくじった‥‥?」

「思いっきりしくじってるぞ。」

 ランチの時にフィンに呆れたようにため息吐かれて、そう言われた。私はポカンとして。

「な、なんでー?」

「さあ?」

 フィンに聞いたが、フィンも知らないようだ。


 そう、入学初日から何となく気づいてた。

 距離を置かれてる‥‥。

 男女ともにクラスのみんなから。何かしてかな‥‥私‥‥。しかも、先生もよそよそしい。

 別に何かされてるわけじゃない。物理的に距離を取られているだけ。こちらが話しかけようとすると逃げるように避けられる感じの。

 何かした?

 しかも、入学してまだ2週間経ってないし、そもそも入学初日からだよ?クラスメートの何人かは義務的事務的な用事で話しかけることはあるけど、すぐにスっと距離を置く。

 「心当たりないよー。」

 「‥‥溢れ出るオーラが人を寄せ付けないんじゃないか? (適当)」

 「なら、なんで君も避けられてるのさ。」

 「ブッ!」

 そう意外にもこんなにフレンドリーで私の友達にもなってくれた前世から付き合いのあるフィンも、何故か避けられてる。むしろ一部の人から恨まれているんじゃないかってぐらい。

 しばらくしてフィンはバツ悪そうに打ち明けた。

 「‥‥うちの実家のせいだ。いや、正確には命令を下した中枢だけど。」

 「?」

 「取締りだよ。ミドルエリアの奴隷商を捕まえたら、奴隷商に出資している貴族まで芋づる式に捕まえることになるから。それで逆恨みされてんの。」

 「奴隷商‥‥。」

 そう言えば、出会った時も奴隷商を追いかけていた。フィンはため息を吐きながら言う。

 「国の法律で奴隷商売は禁止されている。だが、8年前まで貴族の権力が物凄かったから、看過されていたんだよ。俺ん家も奴隷商は捕まえられても貴族は捕まえられなかった。ところが戦争で大敗して、三部議会が出来たら貴族に権力は無くなった。当然、遠慮容赦なく取締り。国王命令でもある。んで、奴隷商に吐かせて、名前の上がった貴族の邸宅に家宅捜索、そして、黒だったら、逮捕、罰則。だから、この8年間は多忙だったよ。悪質だと爵位剥奪沙汰になったし。」

 「‥‥。」

 呆然。自分の知らないところでフィンは、大変だったようだ。特にフィンの爵位は男爵。それも名誉爵位の男爵如きに処罰されるのは貴族のプライドが許さなかっただろう。

 「だから、俺は逆恨みされてるわけ。同じクラスの中にいる貴族の家の大半、俺の実家がガサ入れしている。そして、覚えている限り、か全員黒。‥‥ったく、逆恨みするくらいなら、国の法律ぐらい頭に入れて守れよな。」

 そう言いつつ、フィンは続ける。

 「まあ、あの三部議会の発足時期を思えば、貴族の権力を落とすために、俺達を奔走させたようにしか思えない。それがわからない奴らでも無いだろうし、やっぱり俺に当たるのは変な話だよ。」

 そして、シヴァリエの方を見て。

 「どうせ、お前が避けられてんのも本当にくだらない理由からだと思うぞ。貴族ってのは体面とプライドだけは気にするからな。しょうもない理由で態度やら行動やら変えるから。」

 そう話した。

 「‥‥特にお前は入学初日からだろ?だったら尚のこと、気にすることねえよ。お前の実家関係で距離を置いてて、尚且つ、お前が何かしたからとかじゃないから。」

 それを聞いて私は心が軽くなるのを感じた。そうか。そう考えれば良かったのか。私のせい??って思ってたけどそうじゃない理由だってある。‥‥実家、ハルト兄様が何かやったとは思えないけど。

 まあ、いいか。

 とりあえずクラスメートが僕が嫌いで距離を置いているのではなく、貴族だから距離を置いているのが分かれば、私がすることはただ一つ。

 静観だ。

 そんな理由で距離を置かれているなら、こちらから仲良くなるのも無理だろう。状況が変わるまで何がするのはやめておこう。

 そして、フィンがしみじみと言った。

 「‥‥まあ、そのなんだ?お前がいて良かったよ。俺、まさかこんなクラスだとは思って無かったから、お前いなかったらボッチ確定だった。」

 「‥‥それ、私もだよ。」

 学園ってもっと和気藹々しているイメージだったけど、そっかー貴族かあ‥‥私も一応貴族だけど、他の貴族とそんなに関わったことないし、こっちの暗黙の了解も知らない。

 本当にフィンがいてくれて良かったなあ‥‥。













 一方、シヴァリエがそんなことをフィンと話している頃。


 クラスメート男子は、

 「辺境伯領‥‥8年前の元凶が‥‥!!」

 「しかも、あの辺境伯領!そんな奴がいきがりやがって!!」

 そう愚弄し。



 クラスメート女子は、

 「貴方、まさか私より先にあの銀髪の伯爵王子に手を出さないわよね?男爵身分の癖して!」

 「おほほ、そんなことしませんわぁ。でも、貴方様、1回もあの方とお話していませんじゃないですか?」

 「あらあら御二方?醜い争いね。嫌われますわよ。」

 「はい??」

 そうお互いを牽制し合っていた。



 そして、そんな様子を背後でユリアは見ながら。

 「ナンダカナー。」

 そう我関せずの面構えで、クラスメート達の言葉に聞き耳立てつつ、遠い目をしていた。






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