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幕間 裏主人公様☆

 











 初めまして、馬です。



 バルガスという魔族を皆様、覚えていらっしゃるでしょうか。

 あの男が手塩をかけて育てたのが、そう、この俺です。

 あのめっちゃ怖い領主がバルガスから分捕った馬、アレ、オレです。

 魔族の本陣まであのめっちゃ怖い領主を乗せて崖を登った馬、それ、俺です。

 あの超可愛い女の子がめっちゃ怖い領主に駆け寄った時に、領主の隣にいた馬、俺です(ドヤァ)


 あの一連の場面、俺がいなければ成り立たなかったことをこれでお分かりいただけたかな?


 そう俺は脇役の中の名脇役、縁の下の力持ち、そうすなわち‥‥。



 でっでえええん!!裏主人公!!



 (・´∀・`)ドヤァ×2



 いやあ黄色い声でキャーキャー言われても、何も出ないぞぉ?もしくは、この物語の裏主人公様にぃ↑嫉妬してもぉ↓俺のか☆が☆や☆き☆はフォーエヴァー!!だから、無・意・味だぜ♡



 だけど、今の現状ものすごーく不満だ。何故かって?


 何で俺が普通の馬と同じボロで安っちい馬小屋に入れられて、しかも、その後、出番が一切無いんだよ!?

 俺は裏☆主☆人☆公☆様だぞぅ☆?なのに何故だ!?

 メインキャラである、めっちゃ怖い領主とめっちゃ可愛いけどブラコンまっしぐら幼女はともかく!!マザコン王子にサド魔女、ストーカー皇子に、苦労宰相、片思い拗らせ女傑に、初恋騎士とか俺以外の脇役登場させ過ぎかつ、何でそんな脇役ばかり推して、俺を推さないのかなぁ? !

 裏主人公は俺だろう!?アンダァスタァンドッ?

 一番ムカつくのは、何でドルヲタヘタレ平凡男が1人で2話ぐらい占領しているかってことだ!!!扱いおかしくない?ドルヲタより俺の方が格上って母ちゃん言ってたよ?何でドルヲタがほかの脇役より超推されてんの?絵面に一切の花もイケメンもいないのに!何で俺、ヲタクに負けてるの!?


 くっそ‥‥これが干されるってことなのか!?


 俺の何がいけないんってんだ。

 こんなに美貌もオーラもあるのに!!(但し、馬基準。)

 こうなったら、何が何でも!裏主人公として復権を目指してやる!!



「おーい、うましかー。ご飯だよ~。」



 げ、また来たぞ、この女。シーラだったか!この女、俺にうましかなんて裏主人公様に失礼な名前をつけた不届き者!うましかって漢字変換したら、馬鹿(うましか)だぞ!?つまり、馬鹿(ばか)って名前じゃねえか!!俺は馬鹿なんて名前は認めない。ああ、認めないとも。

 あ?なら、何て呼べばいいのか?

 それは一つだろう。


 ビューティーオンリーワン‥‥。


 もしくは。


 バハムート~神から選ばれし叡智と栄光の神馬~


 と呼びたまえ。ちなみに名前はフルで言う事。俺の名前を呼びながら、俺を崇め讃えるといい‥‥。干されている事実はさておき、何せ裏主人公だ。ヒーロー、ヒロイン、その次に作品の中で重要、めっちゃ重要、物凄く重要な位置にいるキャラクターなのだ。ハハハッ!!(ドヤァ)


 さて。


 そんな重要な位置にいながらにして、何故、干されているのか原因を考えよう。

 ん?周りのキャラクターの方が濃い?ユリア嬢なんてその典型?やだなぁ、俺の方がキャラクター立っているだろう?何せ馬だぞ。人間やら魔族やら獣人が並んでいるところに俺を思い浮かべてみろ。どうよ、この存在感!!二本足だらけの中の四本足、シュッとした顔に意思の強いつぶらな瞳‥‥この目立ち具合なら、乙女ゲームならメインヒーロー狙えるヴィジュアルと思わないか?そうだろう?

 ハハハッ、俺はキャラの濃さも裏主人公なのだよ(ドヤァ)

 ん?人語を交わせない時点でアウト?

 な☆に☆を言っているのだね?人語を交わせない?つまり、コミュニケーションが取れないということか?ハハハッ‥‥面白いジョークを言う。俺よりコミュニケーション取れない奴が登場しているのに。

 ちょっとあの領主見ろ‥‥!

 コミュニケーションもクソもねえだろ!?

 何だよ、あの寡黙具合!?しかも、表情一つねえとか。人とコミュニケーション取る気さらさらねえー絶対ねぇー!!あれより俺喋ってる自信ある!てかメインキャラで喋らないとかどうなんだよ。話進まねえよ!?しかも、2文以上言うのは珍しいとかどれだけ寡黙だよ。てか、表情無さすぎてもう領主のシーン、絵面にしたら殆どホラーじゃねえの?!?そんなメインキャラがいて良いの!?

 くっそう、何かこうして考えたら、台詞もやる事も殆ど無い癖にメインキャラという美味しい役柄を領主が持っていってる気がしてきた‥‥。これで好感度も高いんだから、尚更、嫉妬に気が狂いそう‥‥。



「シーラ、馬に乗ってもいいかしら。」



 おおっと!!ここで何と、ヒロインちゃんが来たぞ!!味気ない人参に飽きていたところだ!


 ハッ、もしやこれはチャンスなのではないか!?



「お嬢様、メリベルが今、外で散歩してますから、そちらへ。」

「はーい。」



 ちょっと待ったー!!

 ほら、ヒロインちゃん俺に乗れ!技量と実力が無いとか乗りこなせないとかいう設定はこの際、裏主人公様特権で取っ払うから、さ?さあ!!俺に乗れ、俺に乗るんだ!!



「何か、うましかが乗って欲しそうですね‥‥。お嬢様。」

「でも、私が乗りこなせるかな?」

「うーん、乗るだけなら大丈夫じゃないですか?歩かせたり走らせたりは無理でも。」

「じゃあ乗ってみる‥‥!」



 そうだぜ。ヒロインちゃん。そう“まず”は乗るだけでイイんだぜ?



「うわぁ高ーい。」

「ほかの馬より大きいですからね!」



 ふふふっ、ヒロインちゃんは俺の背で無邪気に笑っているが、今のうち。

 そう、ここからが!!ここからがマイステージへの第一歩!!

 ここからヒロインちゃんの好感度を上げ、幾多の苦難をともにわかちあって、信頼を築き、出番を増やし、出番を増やし、出番を増やし、出番を増やし増やし増やしまくれば、裏主人公の復権間違いなし!!そして、裏主人公として活躍が目覚しくなれば、ヒロインちゃんの回想に普通に登場、脇役共との共演を経て、存在感を更に増大させ、やがてはその主役さえ食いかねない美貌とカリスマで、ソロで何話も描かれ、そうして最終的には神様とか魔法とか何とかの奇跡で人間化!!そして、人間化した俺にヒロインちゃんも脇役女子もイチコロ☆そうして、メインキャラである領主をも食うキャラになった俺が、そのメインキャラの座を華麗にゲッツ!!

 そうして、ヒロインちゃんとゴールインして最終回を華々しく俺が飾るのだ!!


 ハハハッ!!ハハハッ!!ハァーハハハッ!!


 まさに完璧!攻略対象だという脇役イケメンなど、そして、あの寡黙なのに何故かメインキャラ領主など敵ではない。

 これからは俺の時代なのだよ。

 そうだな‥‥。題名もこの際、『今日も元気に裏主人公様が下克上(ドヤァ)してます!!』という題名に変えてもらおうか?ああ、何となんと素晴らしい。こうすれば、ヒロインちゃんには悪いが、俺がメインキャラであることを世間様に訴えられる。完璧、完璧すぎる。


 この馬である裏主人公様に皆、釘付けになるのだー!!


 というわけで、ヒロインちゃん。さあ、この美しさの塊である俺に惚れるが良い!いつかは人間化して、『俺に触れると火傷するぜ☆』の一言で君のハートにBang!してあげるからさ☆


「あ、兄様。おかえりなさい!」


 え?領主が来ただと‥‥!?しかも、ちょ?え?な、なんでだろーなー‥‥凄くお兄様に睨まれている気するよー。すんごく黒いオーラを纏っている気がするのはナンデカナー?


「‥‥シヴァリエ、降りなさい。」

「ん?分かった!」


 ちょっと?ちょっとヒロインちゃん俺を1人にしないで!?この人、凄く睨みながら俺のところに近づいて来ているんですけど!?怖いし、めっちゃ怖い!何かもうオーラがどす黒いって!!


「‥‥なぁ、馬。‥‥お前今、何、考えた?」


 あっ‥‥終わった。


















 数日後。







「シーラ、最近、うましか見ていないんだけど、どうしたの?」

「あーうましか?御領主の命で、種馬工場に売ったよ?」

「えー!?あの馬、結構いい馬だったのに!?」

「うん。“お嬢様の将来に良くない”んだって。私は良いお値段で売れたからそれでいいけどね。」

「なるほどー。じゃあ、仕方ないね。お嬢様専用の馬にいつかはしようって話してたけど、お嬢様には馬を新しく飼うか‥‥。」

「あっ、ちなみに御領主から飼うなら次はメスにしろって注文が来てたよ。」

「‥‥オスの馬に何かあったのかしら‥‥御領主‥‥。」


















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