『七歩目』 天井から聞こえる足音は、数えてはならない。
最新エピソード掲載日:2026/07/03
家賃が異様に安い、築浅の4階建てマンション最上階・402号室。
引っ越して三日目の深夜二時十七分、天井から聞こえた。
――コッ。
ただ一歩。
上には屋上と、封鎖された機械室しかない。誰もいないはずの場所から聞こえる、たったひとつの足音。翌晩は、二歩。その次の晩は、三歩。
日を追うごとに、天井を歩く「何か」は着実に近づいてくる。
管理会社は「上には誰もいません」の一点張り。ネットで検索しても、同じ間取りの部屋に住んでいた前の住人の記録はどこにもない。
ただひとつ、この部屋の掲示板の隅に、消えかけたボールペンの走り書きが残されていた。
「かぞえるな」
唯一頼れる幼馴染は、心霊音声を専門に扱う配信者。彼の助言はいつも同じだった。
「聞こえても、数えるな。数えた瞬間、向こうにも“聞こえている”ことが伝わる」
だが人間は、無音の中で音が鳴れば、無意識に数えてしまう生き物だ。
一歩、二歩、三歩――。
そして今夜、四歩目が鳴る前に、唯の意識は、もう数え始めてしまっていた。
引っ越して三日目の深夜二時十七分、天井から聞こえた。
――コッ。
ただ一歩。
上には屋上と、封鎖された機械室しかない。誰もいないはずの場所から聞こえる、たったひとつの足音。翌晩は、二歩。その次の晩は、三歩。
日を追うごとに、天井を歩く「何か」は着実に近づいてくる。
管理会社は「上には誰もいません」の一点張り。ネットで検索しても、同じ間取りの部屋に住んでいた前の住人の記録はどこにもない。
ただひとつ、この部屋の掲示板の隅に、消えかけたボールペンの走り書きが残されていた。
「かぞえるな」
唯一頼れる幼馴染は、心霊音声を専門に扱う配信者。彼の助言はいつも同じだった。
「聞こえても、数えるな。数えた瞬間、向こうにも“聞こえている”ことが伝わる」
だが人間は、無音の中で音が鳴れば、無意識に数えてしまう生き物だ。
一歩、二歩、三歩――。
そして今夜、四歩目が鳴る前に、唯の意識は、もう数え始めてしまっていた。
第1話「一歩目」
2026/07/03 19:15