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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第四章 転職祭

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第75話 テランの休日。

「さて、そうと決まれば早く出発したいが……いくら2人組とはいえ、このままの格好じゃバレバレか?」

 そう言ってシルフィードさんは自分と僕を見比べる。

 その視線に釣られて僕も自分とシルフィードさんを見比べた。


 お互い細身で華奢な体型。身長差も結構あるから兄弟……には見えないか、髪の色も違うし。それにシルフィードさんは見れば振り向くようなイケメン王子だから目立つだろうなぁ……何か変装が出来れば……あ、そうだ。


「僕、こういうの持ってた!!」


 アイテムウィンドウから猫耳フードを取り出して装備する。そうだよ、僕にはこれがあったじゃないか。

 今日は着替えが多くてうっかりしていた。


「ほほう」


 顎に手を当てて感嘆の声を上げるシルフィードさん。まさか僕が変装道具を持ち歩いているとは思っていなかったのだろう。

 ふふふ、戦略家は何手も先を読むものなのだよ。


「これなら僕だって誰にも気付かれないはず!」

「確かに……可愛いな」


 しきりに頷くシルフィードさんだけど……何か会話が繋がってなかったような気がする。

 確かに猫耳は一般的に可愛いと思うけど、猫耳男子はあんまり可愛くないと思う。


「普段はローブにこのフードを被ってるけど、今日は露店用だった制服にフードを合わせれば僕の事を知ってる人ですら探すのは困難になるって作戦なのさ!」

「なるほど。では私も同じ作戦で行くか」


 そう言ってシルフィードさんも懐を探って取り出した眼鏡をかけた。

 出来る生徒会長って感じだ……イケメンは何を装備してもイケメンなのかっ!


「どうだろう?」

「あ、う、うん……良い……んじゃないかな?」


 イケメンはイケメンだけど眼鏡1つで雰囲気も随分変わったし、これで2人で歩けば問題ないかな?

 イケメンへの怨嗟をぐっと堪えて僕はシルフィードさんの変装にOKを出した。


「そうか、良かった」


 シルフィードさんは安心したように笑顔を見せ……って僕がそんな駄目出しすると思ってたんだろうか? ともあれ、準備が完了して僕達はやっと路地裏からの脱出に成功した。




 通りに出た僕達を気にする人は居なかった。

 何度か何かを探してるような集団ともすれ違ったけどリアクションも無し。作戦は成功である。

 ふっふっふ、天才策士ユウ様にかかればこんなものなのだよ。


「さて、じゃあまず何処に行こうか?」

「んー……どうしようかなぁ……」


 と考えていた僕のお腹がクゥと鳴った。

 そういえば結局今日はホットドッグ一口しか食べてなかったや。一安心して気が抜けたし、もう2時回ってるし、お腹が空いて当然か。


 ……それでも人前でお腹が鳴るなんて高校生男子として恥ずかしいけど。お前は子供かと突っ込まれてもし勝たない。知らず頬が赤くなる。


「っぷっははっ、じゃあまず露店で料理をつまもうか。私も何か食べたいし。勿論さっきのホットドッグのお礼に奢るよ」

「賛成っ!」


 笑った事はどうかと思うけど、奢ってくれるなら許してあげよう。


 そうして露店をめぐる僕達。定番たこ焼きから始まり、焼き鳥、牛串、じゃがバター、肉まん、焼きそば、唐揚げ棒、更にりんご飴、チョコバナナ、大判焼き、クレープ、かき氷と平らげていく。


「っつーかユウ、お前よく食べるなぁ」

「シルフィードさんだって一緒に食べてるじゃん」

「私とユウじゃ身長が違うだろう」

「し、身長はこれから伸びるんだよっ!」


 言ってはならない事を言うシルフィードさん。

 世の中には高校を卒業してから身長が伸びた人も居るって話を聞いた事があるしまだ大丈夫な筈……大丈夫な筈だ。


「あぁ、それで栄養を取ってるんだな。太らないように気をつける事だ」

「残念ながら太る事もありませーん」

「……ユウは今世界中の女性を敵に回したな」

「なんでシルフィードさんまで怒ってるのっ!?」


 大体女性を含めてプレイヤーは皆どれだけ食べても太らないじゃないか。……リアルでも僕はどうも肉が付きにくい体質な事は黙っていよう。昔それを言ってマヤに物凄く怒られたし。


 でも、やっぱりこういうの楽しいなぁ。

 『セカンドアース』に来てからすっかりご無沙汰だったけど、やっぱり高校生男子としは同じ男子とつるんで買い食いしながらだべり歩きとか最高だよねっ!


 何故か知り合いの大半は女性ばかりだったし、アンクルさんや白薔薇騎士団の皆さんは一歩引いた接し方をされてる気がするし。……それがダメって訳じゃないけど、やっぱり高校生男子としては近い年齢の男同士で下らない話をするってのも良いものだ。


 その点シルフィードさんは外見は華奢な王子様といった感じのイケメンだけど、僕の軽口にも付き合ってくれて気さくだし、話しやすい。

 『セカンドアース』に来て初めての『男の友達』かもしれない。


 そう思いつつちらりとシルフィードさんを盗み見る。

 シルフィードさんも僕の事を友達と思ってくれてるだろうか? さっき逢ったばかりだし、多分シルフィードさんの方が少し年上っぽいし、楽しそうにはしてくれてるけど……そうだと嬉しいな。


「ん? どうしたユウ?」

「ひゃ!? いにゃ、な、ナンデモナイデスヨ?」

「何故片言なのだ」

「こ、この後の事を考えてて……と、そうだっ! お腹も膨れたし、『鍛冶師(ブラックスミス)最強武器決定戦』っていうのがやってる筈だけど見てみない?」

「……まぁ良いだろう。武器か、確かに興味あるな」


 うんうん。武器に興味がない男の子は居ない。

「じゃ、決定! 早速行こうっ!」


 そう言って僕はシルフィードさんの手を引っ張ってかけだした。

「……そっちは南門だが……何処へ行こうというんだ?」

「……『鍛冶師(ブラックスミス)最強武器決定戦』ってどこでやってるんだろう?」


 シルフィードさんは演技っぽく盛大なため息をついて、僕が掴んだ手を握り直して中央に向かって歩き始めた。

 くそう、イベントがある事はソニアさんから聞いてたけど、場所まで聞いてなかったのは不覚だった。

 情報を制する者が世界を制するのに……準備期間は忙しくてそんな暇なかったからなぁ……つ、次で汚名挽回だっ!




 そうして到着した場所は生産者ギルドの屋内だった。

 アイテムの価値が高い為防犯上建物の中で行うのだという。


「ほう……これは……」

「すごく綺麗……」


 シルフィードさんが感嘆の声をあげ、僕はその美しさに見惚れていた。


 『鍛冶師(ブラックスミス)最強武器決定戦』。

 決定戦と言っても。何も武器同士をぶつけ合わせてどっちが強い、とかというイベントではない。

 そもそも『鑑定』で調べればどちらが高性能か? なんてわかっちゃうのがゲームだし。


 参加した鍛冶師(ブラックスミス)は自分の作り上げた自慢の一振りをイベントに登録し、展示する。

 そうして展示されている武器の外見や性能を見た観客が欲しいと思ったアイテムを入札形式で値段を記入。最高額を書いた人が入手出来る。


 そして、その入札金額の合計が一番高い人が優勝、というイベントらしい。


 僕は侍祭(アコライト)だしコテツさんに譲って貰った『治癒の杖(スタッフオブヒール)』があるから入札する気はなかったんだけど……。

 陳列された品々が予想以上にすごかった。


 性能的に良いのは勿論、レベル20、30といった武器が並んでいる。

 でも凄いのはそこじゃない。陳列されてる一振り一振りが『美しい』のだ。

 芸術品と言われても納得してしまいそうな美しい武器が展示室内に静謐に並んでいた。


 寒気を感じるような綺麗な刃紋の日本刀、凄みが溢れる強大なウォーハンマー、ドラゴンの彫刻が彫り上げられたバトルアクス、穏やかな木々が重なり合う魔法杖。

 機能美と装飾美が絶妙にブレンドされた品々。一振りだけでもずっと見ていたい美しさなのに、それが沢山並んでいるのだ。


 この光景は……男の子にはヤバい。

 シルフィードさんも多く語らず食い入るように見つめている辺り男の子だなぁと心の中で苦笑した。


 勿論コテツさんの造った武器も陳列されていた。

 それはいつもコテツさんが使っている斧系ではなく、意外な事に短剣だった。


 しかもその短剣には刃がついておらず、攻撃力も0。それなのにレベル30と表示されている。

 真っ白な刀身には天使をモチーフにしてるのだろうか? 精緻な細工が施されて居て、柄には深い青色の宝石がはまっていて、輝くような美しさだった。


 その短剣の名前は『純白の天使』と書かれてある。


 いつもがさつで力強いコテツさんとは真逆の武器に、彼女が何を思ってこの武器を仕上げたのか後で聞いてみたくなった。


「……冒険者の造る武器とは此程の品々なのだな」

 並ぶ武器に圧倒されつつ、シルフィードさんがぽつりと呟いた。

「モンスターと戦うには良い武器が欲しくなるし、切磋琢磨した結果……なのかな?」


 生産系の職業は実戦闘で活躍出来る訳じゃないし、趣味でやってる意味合いが大きい。それ故にやってる人の本気度が違うのかもしれない。

 こんなすごい武器を見ると僕も造ってみたくなる。……造れないけど。


「なるほど、求められるからこそ、その練度は増していくという事か」


 何やら納得しているシルフィードさんと一緒に僕達はじっくり最高の武器を堪能して会場を後にした。

 シルフィードさんは3点程入札していた。


「あまりの凄さに少し毒気を抜かれてしまったな」

「うん、凄かった」

「しかし、少し疲れたな。この後どうする?」


 どうしよう? あとソニアさんに聞いたのは……『ファッションショー』なんて男2人で見てもつまんないしなぁ……。あと残ってるのは……『ペットモンスター品評会』だっけ?

 ペットモンスターも新実装システムらしいし少し見ておきたいかな?


「じゃあ次は『ペットモンスター品評会』に行ってみない?」

 そうシルフィードさんに提案してみた。

 すると何故かシルフィードさんが一瞬物凄く怖い顔をしたように見えた。


「?」

「あ、いや、すまない。ペットモンスターか……」

「えっと……嫌だったら、無理にとは言わないけど……」


 もしかしてシルフィードさん、モンスターにトラウマとかあるんだろうか? 悪い事言っちゃったかな……。

「いや、何でもないよ。ちょっと驚いただけだ。『ペットモンスター品評会』に行こうか。私も一度見ておきたかった」


 そう言って微笑むシルフィードさんはさっきのが錯覚だったような気がする程優しい笑顔だった。




「ふぁぁぁぁっ!!」

 会場に到着し、足を踏み入れた僕はさっきとは違う感嘆の声をあげた。

 そこは柵で囲った中に芝生を敷き詰め、その中に何十匹ものペットモンスターを放し飼いにして入場者と触れ合えるようにした展示場だった。

 そしてその柵の中に音速犬(ソニックドッグ)二尾猫(ツインテールキャット)一角兎(ホーンラビット)火妖狐(ファイアフォックス)、と言った様々な小型ほ乳類系のモンスターが溢れている。


「シルフィードさんっ! 見てっ! もふもふっ! もふもふがいっぱいだよっ!!」

「そうだな、もふもふだな」

 シルフィードさんは何故か柵の外から眺めているだけだった。


 どれもこれもまだ子供なのか小さくて抱きかかえられる位の大きさで、フィールドに居るモンスターとは全然違ってすごく可愛い。

 これでテンションがあがらない人が居る訳がないっ! 外にいるシルフィードさんは勿体ない事をしてると思う。


 僕はどの子と触れ合おうかな? と辺りを見回していると、ふと視線を感じてそちらを見る。

 一匹の音速犬(ソニックドッグ)が僕を見て、「ぅわん!」と鳴いた。


 と同時に柵の中のモンスター達が一斉に僕を見た。……ように感じた。他の人と触れ合っていたモンスターもである。

 何か嫌な予感が……。


 と感じるまでもなかった。一斉にモンスター達が僕に向かって駆け出し、飛びついてきた。

 小型とはいえ数十匹のモンスターに飛びつかれ、押し倒され、全身にすり寄られ、舐められる。

 皆それぞれに甘えた声を上げている。痛くもないし、攻撃されている訳ではないみたいだけど……。


 攻撃じゃなかったのは良いとして、そりゃ僕はモフモフは好きだけど、好きだけど、これはちょっと待って!?


「落ち着いて!? そんな一杯っ! って、だめっそこはっ!! んぁっ!」


 なんとか宥めようとしても止まらないモンスター達。

 むしろ更に僕に潜り込もうと服の中にまで進入しようとしている。


「って、シルフィードさんぁっ! たっ、助けてぇっ!!」

 自分1人じゃどうしようもなくなっている事を認めて、外に居るシルフィードさんを見た。


 本当に楽しそうな顔で襲われている僕を眺めているシルフィードさんが見えた。

 あの顔、見覚えがある。

 ……そう、マヤがよくやってる表情だ。という事は……シルフィードさんの助けは期待出来ない。


 絶望の二文字と共に、更に激しさを増すもふもふに埋まっていく僕。


「って、本当にっ! んっ! ひぃんっ! ゆるいてっ! ら、 らめぇっ!!」


 僕の切ない悲鳴が会場に響いた。




注釈/

今回の『汚名挽回』はわざとです。

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