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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第三章 楽しいクランの入り方
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第46話 クランのリーダー。

 露店通りから少し脇に入った路地を進んだ先に『銀の翼』のホームはあった。

 といっても、外見は普通の3階建ての西洋風の一軒家だった。違いは玄関に小さく翼をモチーフにしたレリーフの小さな看板がある事だろうか?


 正直クランのホームって言うともっとすごいのを想像していた。


「6人しか居ないからこれで十分なのよ。空き部屋だってまだ沢山ある位だしね」

「少人数クランとしてはむしろでかい方じゃねーかなぁ? 小さい所だと全員で一室、って所もあるらしいし」

「そ、そうなんだ……」


 顔に出ていたらしい。マヤとコテツさんが交互に教えてくれた。

 確かに6人で暮らすには大きすぎる位だろうか?

 いや、そもそもホームってセーブポイントなんだから別に広さとかどうでもいいのかな?


「ほら、ユウ、入るわよ」


 マヤに促されて慌てて皆の後を追う……と玄関に立った時に『進入不可』のウィンドウが表示された。

「?」

 見えない壁にせき止められてる感じでちょっと面白い。

 いや、ウィンドウが見えてるから、見えてる壁なんだけど……。


「そのままだとクランメンバー以外は入れないようになってるの。今申請を出すから」

 そう言ってマヤが何かしらを操作すると、再び僕の前に新しいウィンドウが表示される。


・クラン『銀の翼』から招待を受けています、受諾しますか? YES/NO


 受諾した瞬間、『進入不可』のウィンドウが消え、一歩踏み出せるようになった。

 成る程、こういう風になってるのか。


「おじゃまします」


 中も西洋風な建築様式だった。勿論靴を脱ぐ必要もないっぽい。

 玄関からすぐが多きめなリビングになっていて、テーブルやソファーが置かれている。

 調度品も品が良くて、外国のホテルとかこんな風なんだろうなぁ……って感じ綺麗にまとめられている。

 最初に泊まった高級ホテルのような豪華絢爛さはないけど、上品で居心地が良い感じだ。


 そしてそのソファーに腰掛けて見覚えのある女性が新聞を読んでいた。


「あ、ルルイエさん、こんにちわ」

「ん?……ユウっちやん。こんちゃー! こんな所で偶然やなぁ」


 新聞から目を離しルルイエさんが手を挙げて応えてくれる。

「偶然じゃなくてお呼ばれしたんです」

「そやろなぁ。じゃなきゃ部外者はホームに入れんし」

「そ。だから部外者じゃなくす為に連れてきたのよ」

 マヤが続けて説明してくれた。


「ふーん?……ユウっちをウチ等のクランに?」

 それを聞いたルルイエさんは何やら面白そうに僕を見定める。

 クランに入るのってそんな大変な事なんだろうか……マヤに言われるままについてきただけなんだけど……。

「何か問題ある?」

「ウチはないよー? むしろ大歓迎! でもそういう事ならクランリーダー様ん所に行くんやね。多分居ると思うよ」

 と、階段を指さして楽しそうにルルイエさんは又新聞を読み始めた。


「そう、ありがとう。行きましょう、ユウ」

「あ、う、うん」


 マヤに手を引かれて階段に向かう。

 その後ろでルルイエさんの何やら悪巧みをするような笑い声が聞こえた気がした。

 言われるままに付いてきただけだったけど……なんだか不安になってくる。


「そうそう、言い忘れたけど……」

 階段を上りながらふと思い出したようにマヤが足を止めた。

 当然僕の足も止まり、前を行くマヤを見上げる。


「ユウ、気をつけるのよ? いざとなったら防護印(プロテクション)を使っても良いから、自分の身を守る事を躊躇っちゃダメだからね?」

「何の注意事項っ!?」

「注意事項というか……決定事項かしら?」

「突然マヤは何言ってるの!? ていうか僕は今から何をさせられる予定なのっ!?」


 言うだけ言って又歩き出すマヤ。


 でも僕の足取りはさっき以上に重いものになっていた。おかしい……なんでこんな気持ちになってるんだろう……?

 不安が限界を達してコテツさんとノワールさんを見回す。

 ノワールさんはいつも通り無表情に、コテツさんは苦笑している。


「ユウ、ふぁいと」

「悪気はないと思うから気にしなくて良いと思うぜ」


 2人の助言も全く参考にならなかった。

 本当に何をさせられるんだろう……痛いのとかじゃなければ良いんだけど……。


 でもお世話になるんなら少し位の痛いのとかは我慢した方が良いのかな? いや、あくまでクランメンバーの一員、という立場なら毅然と……でも怖いし……うぅ……。


 あ、いや、待て! そんな時の為に手土産を用意してたんじゃないか!

 持ってて良かったクッキー詰め合わせ!

 やっぱりこういうのが大事なんだよね、うん。


 よし、がんばろう。と思った時、マヤの足が止まった。

 2階を通り越して3階、その奥の部屋の前まで来たらしい。


 両手で自分の身体をぱんぱんとはたき、失礼がないか確認をして、深呼吸をする。


 ふっふっふ、クッキー(きりふだ)の準備も万端。僕はいつでもいいですよ?

 そう思いつつマヤに視線を向けると、マヤも頷いて、扉をノックした。


「マヤです。クランチャットで伝えた件で新人を連れて来ました。入って良いでしょうか?」


 暫く待つも中から返事はない。

 改めてノックして同じ内容を伝えるマヤ。……が、返事がない。


「……どうしよう?」

 不安になってきてマヤの裾をつかむ。


 クランチャットで連絡を受けてた上で入室許可の声が聞こえないって事は……僕、拒否されてるって事……だよね?

 まさか逢う事自体を拒否されるなんて思ってなかったからちょっと辛い……。


「あー……そのまま入って良いと思うぞ? 多分……いつものだ」

 涙目の僕を見て苦笑しながらコテツさんが僕の頭をぐりぐり撫でた。

 励まそうとしてくれたのかな? ちょっと痛いけど、その気持ちは嬉しい。

 でも……いつものってなんだろう?


「はぁ……では失礼します」

 マヤも大きくため息をついて、目の前の扉を開いた。




 薄暗い一室。その奥にクラン『銀の翼』のリーダーの姿が――――見えなかった。

 うん、見えない。

 見えるのは一面のゴミ? だろうか?

 服や鎧、武器なんかは勿論、ぬいぐるみや人形、動物の骨や牙のような物、木の枝や葉っぱ、鉱石……というか岩等々。未整理の倉庫というのが正しい様相をしている。


「えっと……部屋……間違えてないの?」

 心配になって皆を見る。皆一様に首を振る。……間違ってないらしい。


「おーい、サラサラ! 居るんだろっ! 客だ、客! 早く出てこないとこのゴミ吹っ飛ばすぞっ!」

 手近な岩をゴンゴン叩きながらコテツさんが室内に叫ぶ。


「だぁめよぉ~……それは皆との大事な思い出なんだからぁ~」


 ゴミ……もとい思い出? の奥の方から女性の声が聞こえて、のっそりと人影が姿を現した。


 年の頃はコテツさんと同じ位だろうか?ウェーブのかかった背中まである金髪が揺れている。その下にメガネに隠れた眠そうな目と大あくびな口が見える。

 身体の方もコテツさんクラスで修道服を着てるのにぴっちりと胸を強調していて、なんというか……すごい。

 ノワールさんの言ってた言葉で予想はしてたけど、やっぱりリーダーさんも美人だった。


「嫌ならたまには部屋を片付けろよ。いつも言ってるだろ。それかアイテムウィンドウに仕舞え」

「む~り~。もうウィンドウいっぱいなんだから……ら?」


 と、やっとそこで気付いたのかリーダーさんと目が合った。


「あ、えと、は、はじめまして! ぼ、僕、ユウって言います。その……今回は……」

「かーわーいーっっ!!」

「え?」


 と思った瞬間、何かが僕にぶつかって来て全身に衝撃を受けた。

 ダメージはないっぽいけど、頭がくらくらする。一体何が……

 と思った瞬間、僕を包む甘い匂いと柔らかい感触。


「やーん、何この子!? 何処で拾ったの!? こんな可愛い子が落ちてるなんて『セカンドアース』も捨てたもんじゃないわよね~!」


 目の前にあるリーダーさんの顔と感触から、どうやらリーダーさんが僕に抱きついてきているらしい事まではわかった。

 しかもコテツさんクラスのモノがである。その上大きさは同サイズだが柔らかさはもしかしたらこっちの方が格上かもしれない。


 これは……気持ちいいけど危ない。高校生男子としてこの快楽は享受したいけど、し続けるのは危険だっ!!

 これからお世話になるかも知れないのに、そうでなくてもマヤの所属してるクランのリーダーに悪い印象を持たれる訳にはいかない。


 なんとか穏便に脱出を……と身体を動かす僕に合わせて動いて更に抱きついてくるリーダーさん。

「ちょっ……まって」

「あぁ、声も可愛いし、抱いてる感触も最高~。それにさっき『僕』って言ってたよね、この容姿で僕っ子とか最高だよ~! ご飯何食べるのかな? 好き嫌いある?」

「な、無いです……けど、離して……」

「うんうん、私も話したい事いっぱいだよ~。こんな可愛い子に出会えるなんて『セカンドアース』やってて本当に良かったー! 今こそまさに我が世の春よね~!」


 は、話が通じてない!?

 このままじゃいけない、とりあえず目でマヤに救いを求める。


 と、目があったマヤは「だから言ったのに」という視線を向けてため息をついた。

 いや、こんな事になるなんて聞いてないよ!? 


「あぁ、匂いも良いかも! だめだぁこの子クセになるぅ~! おかーさーん、私ちゃんと世話するからこの子飼っていい~?」

 僕を抱きしめたまま上目遣いでコテツさんに強請り始めるリーダーさん。

 『飼う』ってどういう事!? なんだか不穏な話になってません?!


「だれが母さんだ、誰がっ! だから、さっき前もってクランチャットで伝えたろ! そいつはユウ! マヤが推薦するクラン加入希望者だ」


 そう言ってコテツさんはリーダーさんに拳骨を落とし、僕を引きはがしてくれた。

 叩かれた頭を抑えつつ、リーダーさんが僕を見る。

「加入……希望者?」


「あ、えと……はい、その……はじめまして、侍祭(アコライト)のユウです。よろしくお願いします」


 改めてそう言って、僕は頭を下げた。




 

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