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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第三章 楽しいクランの入り方

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第45話 銀の翼のその前に。

 マヤ達が所属しているクラン『銀の翼』はコテツさんの友人がテストサーバー時代に立ち上げたクランなのだそうだ。

 初期はコテツさんと、立ち上げたリーダーさんの2人だけだったが、テスト終了時期にはそこにノワールさんとルルイエさんが、正式サービス開始後にマヤともう1人が加入して現在所属人数6人のクランになっているのだとか。


「6人……って事は結構少人数なクランなの?」

 比較対象がないけど、僕の知っている唯一のクラン、『白薔薇騎士団』の皆さんは20人以上居たし、6人ならそれこそパーティでも問題なく賄える人数の筈だ。

「そうね、普通のクランはもっと大人数な所が多いと思うわ」

「攻略組なんかの最大派閥は100人とかのクランもあるしな」

 マヤの言葉に続けてコテツさんが教えてくれた。


 って100人って……想像するだけで人酔いしちゃいそう。

 そんな大人数を管理してるクランとかもあるのかぁ……ゲームなのに大変だなぁ……。

 僕にはそういう事は出来そうにない。

 いや、そんな大人数でなくても、それこそ数十人規模の白薔薇騎士団ですら無理だと思う。ちゃんとまとめてて、しっかり指揮してたアンクルさんは格好良かった。


「あぁでも少人数だけど結構有名なんだぜ?」

 少し自慢げに鼻を掻きながらコテツさんがそう続けた。

「美人が多い」

「そうね、華揃いのクランとか呼ばれているわ」

 同じく自慢げなノワールさんと、マヤが続く。

 確かにコテツさんとノワールさんは美人だし、マヤも可愛いと思うけど、マヤが自慢げなのはちょっとむかつく。


「ち、ちげーよ! そっちじゃねぇっ! クラン対抗戦ベスト4の方だっ!」

 しかしコテツさんだけは顔を赤らめて慌てて否定した。

 コテツさんも美人だと思うし、多分ノワールさんの言った言葉も嘘じゃないと思うけど……でもそれより、


「クラン対抗戦?」

「正式サービス開始直後にあったイベントの事よ。クランの代表5人で参加するPVP(プレイヤーバトル)大会があって、『銀の翼』はベスト4に残ったの」

「へぇ……そんなのがあったんだ……見たかったなぁ」

 きっとコテツさんやマヤは嬉々として戦っていたに違いない。その姿が目に浮かぶ。


「女性だけの参加クランで、ベスト4だったから、開始直後って事もあって結構話題になってたの。一時期は掲示板とかでSS(スクリーンショット)とかも貼られたりしてたのよ」

「へぇ……それはそれで見てみたい」

「全く『セカンドアース』にゃ性別の強弱なんて無いのになんでんな事で注目されるのか意味わかんねぇよな」

「あははは……」


 コテツさんの嘆息に乾いた笑いでしか応えられない。

 すみません、わかります。高校生男子としてはコテツさんのその健康的な身体と巨大な山脈が対抗戦で揺れに揺れていたんだろうと思うと、むしろ是が非でもそのSS(スクリーンショット)が見たかったという気がしてしまいます。

 勿論本人には言えないけど、うん。複雑な男心の高校生にとって、一時の劣情より一生の矜恃なのだ。


「そんな訳で、少人数だからこそ、理解しやすいと思うし、私も信用してるからユウを誘いたいんだけど……ユウはどうかしら?」

「うん、マヤの言う通り、『銀の翼』のリーダーさんが良いんならお願いするよ」

「そう、良かった。じゃあ早速行きましょうか」

「今から!?」

「?……別に何か用事がある訳じゃないでしょ? 善は急げよ」

「それはそうだけど……」


 しかし僕としてもまだ起きたばかりで心の準備が……。

「あ、そ、そうだ! 初めてお邪魔するのに、手ぶらってのも何だし、何かお茶請けでも持って行こうと思うんだけど、どうかな!?」

 やっぱり初対面の人に良い印象を持って貰うには贈り物だよね。それに用意する間に僕の心の準備も出来て一石二鳥! 完璧な作戦だっ!!


「んなもん気にしないし、無くて良いんじゃね?」


 作戦が暗礁にっ!?


「いいえ、贈り物は大事だと思う。気持ちを込めてユウの手作りのお菓子とかが良いんじゃないかしら?」

「え、いいの?」

 何故かマヤからフォローが入って計画に光明が差した。


「ダメな理由が無いもの。材料については私達が用意するからユウは気にせず作ってくれて良いわよ」

「そこまでは何か悪いような……」

「大事なのは気持ち、でしょ?」

「ん、うん! そうだよねっ! よし、リーダーさんに気に入られるように頑張るよっ!!」


 そうだ、僕がクランに入る入らないなんて勝手に決められるんじゃなくて、まずリーダーさんに受け入れて貰えないとダメなんだから、その為にも頑張らないと。

 折角『調理』スキル中級なんて持ってるんだから活用しないと嘘だよねっ!


「……だから、作って貰えば……ユウの手料理が食べら……でしょ?」

「あー……でもいいのか?……いや食いたいけどさ……まぁ……」

「ユウの……美味しい」


 目標に向かって燃えている僕の後ろでマヤ、コテツさん、ノワールさんが何やらぼそぼそ喋っていたようだけど、良く聞こえなかった。

 クランのリーダーさんと待ち合わせの相談とかしてるのかな?

 と、とりあえず僕は僕に出来る事をがんばらなきゃっ!




 時間をあまりかけるのもあれだし、とりあえず簡単に作れて、手軽に持ち運べる、という事でクッキーを作る事にした。

 コテツさんにお願いして足りない材料を買いに行って貰い、その間に厨房を借りて生地を作る。


 と言っても、溶かしたバターと卵、塩と砂糖、あとふるった小麦粉、ついでにベーキングパウダーとバニラエッセンスを混ぜるだけだけど。

 混ぜるだけ、って良いよね! まさに男の料理って感じ。


 すぐに戻ってきたコテツさんからチョコチップを受け取って、更に混ぜ合わせて手でまとめた種を少し冷蔵庫で寝かせてから、適当な大きさに分けていって、オーブンで焼き上げれば完成。


 とりあえず一個味見してみる。

 家で作ったのと変わらぬ味がする。うん、成功だ!

 ベーキングパウダーやバニラエッセンスまであるとか『セカンドアース』の食材事情が不思議になるけど、そのお陰というのは大きいと思う。


 我ながら上手く作れた事を心の中で自画自賛しながら、いくつかに分けてラッピングしてアイテムウィンドウに仕舞う。


「ユウ、私の分は?」

 僕がクッキーを仕舞い終わったのを見て、世界の終わりのような顔をしてノワールさんが呟いた。

「え? えっと……今から一緒にクランに挨拶に行くんだよね? なら……その時一緒に食べれば良いんじゃない……かな?」

「…………わかった。我慢」

 苦渋の決断のような顔をしてノワールさんががっくり肩を落とした。


 さっき朝食食べたばかりだし、皆と一緒に後で食べた方が良いと思ったんだけど、そんなに今食べたかったんだろうか……?

 楽しみにして貰えるのは嬉しいけど、でも素人お菓子にそこまで期待されるのはちょっと荷が重いなぁ……美味しく出来たとは思うけど。


「ノワールが我慢を覚えるとか……ユウ、何気に凄いな」

「ノワールさんって普段どんななのっ!?」


 意味不明なコテツさんの呟きに思わずツッコミを入れてしまった。

 確かにノワールさんってよくわからない感じだけど、我慢出来ない子とかじゃない……よね?


「私、がんばる」


 胸を張るノワールさん。つまりノワールさんにとって胸を張る程の行為って事なのかな……?


「じゃあ準備も出来たし、私達『銀の翼』のホームへ移動しましょ。今ならお昼頃には着けるでしょ」

「急ごう」


 マヤの言葉に僕の袖を引っ張るノワールさん。

 これはクッキーを急げと言ってるんだろうなぁ……やっぱり。




 宿屋の女将さんと旦那さんにお礼を言って宿を出ると、偶然アンクルさんにもばったり出会した。

「これはユウ様、おはようございます。昨晩はお疲れ様でした。睡眠はよくとれましたかな?」

「あ、はい。よく眠れました! アンクルさんも昨日は僕の我が儘に付き合ってくれてありがとうございますっ!」

「いえいえ、これも騎士の努めですから。はっはっは」


 いつも通り快活に笑うアンクルさん。

 でも、もしかして此処で出会ったのって偶然じゃなくて昨日眠ってしまった僕を心配して様子を見に来てくれたとかなんだろうか?

 と思うのは流石に自意識過剰かな、うん。


「あ、そだ。えっと……これ、さっき作ったんで、良かったら騎士団の皆さんと一緒に食べてください」


 と、さっき小分けしたクッキーの一袋を取り出して手渡す。

「おおっ!! よろしいのですか!?」

「本当にお世話になってますから。あ、でも手作りなので味は保証できないかも」

「ユウ様の手作り! 騎士団の皆で心して頂きますっ!!」

「あ、いや、軽く食べて貰えれば……」


 あんまりハードルを上げられても本当に困る。

 まぁクッキーなんて誰が作っても大差ない内容だとは思うけど。


 と、不意に袖を引っ張られて横に目をやる。

 そこには涙目のノワールさんが居た。


「えっと……」

「ユウ、ずるい」

「ご、ごめん?」


 よくわからないまま、ノワールさんに謝る。


「よくわかりませんが……取り込んでいる様子、今日の所は失礼しますね。ユウ様もお元気でっ!」

「あ、はい。ありがとうございましたっ!」

 察してくれたアンクルさんがクッキーを大事そうに懐に抱えたまま、手を挙げて去っていった。


 見えなくなるまで頭を下げ……


「ユウ、急ぐ」


 ……る事は出来ず、僕はノワールさんに連行されるように『銀の翼』のホームへと出発した。





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