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第一話 始まりの朝 へようこそ

「解散なんて冗談じゃない!絶対、何かの間違いだ。」

 国営ギルドから解散通知を受け取り、怒り心頭のエル。


 これはしばらく放っておくしかないと、フリムは朝食の準備を始めるため台所にいた。


「何か食べてお腹が満たされたら、少しは落ち着くでしょ。」


 そう思いながら作り始めると、勢いよく玄関の扉を開け外へ飛び出していく音が聞こえた。


「アクレスたちの帰る場所を無くしてたまるか!絶対に取り消してもらう!!」


 ホームを飛び出したエルは、ギルド解散処分を取り消してもらおうと国営ギルド本部へ走っていた。


「よう、エル。朝っぱらから急いでどこに行こうってんだ。」


 声をかけてきたのはバッカス(とその取り巻きのキンギとヨノフ)。アール・コル所属の鉄等級冒険者。


 下級の同業者にちょっかいを出すのが趣味のチンピラみたいな奴。というか、声も風貌もチンピラ。


 ……こんな奴でも駆け出しのオレより等級は上だ。

 面倒くさいのに出会ってしまった。


「別に、お前には関係のないことだ。」

 チンピラに構っている時間はない。

「つれないこと言うなよ、ミルク配達なら手伝ってやってもいいぜ。新米ギルドマスター様。」


 顔を合わせれば、何かと絡んでくる面倒なヤツ。マグナ・アラエに所属してからはあまりなかったが、先代たちが行方不明となってからウザ絡みが増えた。


「おいおい、返事くらいしろよ。ギルドマスター様ともなると、一般冒険者とは会話にも許可が必要だってか~」


 吐く息が酒臭い。どうやら朝まで飲んでいたようだ。


 相変わらずのウザ絡みでイラッとくるが、今はそれどころではない。完全スルーを決め込み先を急ぐ。


「ちっ。無礼な野郎だ。せっかく俺様が遊んでやろうってのに挨拶もろくに出来ねぇのか。」

「……」

「それとも、怖くて返事も出来ないチキン野郎かぁ?流石はクエスト中に尻尾を巻いて雲隠れしちまうギルドの一員だな。」


「おい、ちょっと待て。今なんて言った……。」

 エルの表情が険しくなる。


「あ~尻尾を巻いて『逃げ出し』恥ずかしくて帰って来れずに行方ふめ○※☆」

 口よりも先に手が出てしまった。


 自分のことはいくら言われてもスルー出来るが仲間のことは別だ。それに今朝はタイミングが悪すぎる。


「っ、やりやがったな!」

「ああ、やってやったさ。追加でもう一発欲しいか。」

 エルは拳を握りこんだ。


「先に手を出したのはお前だ!文句はねぇな」

「ちょっかいかけてきたのはそっちだ。今さら後悔するなよ」


 もう一発と構えたはいいが相手は鉄等級。無印等級のエルでは勝負にならない。

 最初の一撃も酔っ払いに不意打ちで入っただけで、今度はしっかりと身構えた状態。しかも、キンギとヨノフも加勢となれば、なおさら勝ち目はない。


 囲まれてしまった……このままでは一方的にやられてしまう。


「クソ、三人がかりとは卑怯だぞ!」

「ケンカに卑怯もクソもあるか!」


 非常にマズい状況。

 バッカス、キンギとヨノフが同時に動こうとした、まさにその時、


「ちょーい、ちょいちょい、ちょい待ち~。街中での戦闘は御法度だよ。」


 軽~い口調で二人の間に入ってきたのは、女性の冒険者。真っ赤な長い髪に、赤を基調とした装備に身にまとい、腰には長剣を携えている。


 周囲がザワつき始める。


「あれ、ライラじゃない?」

「うそ、『灰燼の炎姫』?」


 どうやら有名人らしい。


「げっ、ライラ……」


バッカスが引きつった顔で女性の名を口にした。


「うら若き乙女に向かって、げっ、とは何よ。相変わらず失礼な人ね。」

「うら若き乙女ぇ、お前もう二……」


 バッカスが言いかけてやめた……というより、恐怖で言葉が続かなかったようだ。


「なにか言いたいことがあるのかしら?それ以上続けるって言うのなら、私も混ぜてもらうわ。もちろん、そちらの黒髪少年に手を貸す方でね。」

「ちっ冗談じゃねぇ。やってられっか。行くぞ、おまえら。」

「おい、エル。一発分はいつか利子つけて返してやるからな!」


 そう言い残し、バッカスと、キンギ、ヨノフはそそくさと退散していった。


 早朝にも関わらず騒ぎを聞きつけて野次馬が集まってきていたが、ケンカに発展しないのを残念そうに散っていった。


 エルはライラにお礼を言った。


「助かりました。バッカス達を追い払ってくれてありがとうございます。」


 騒ぎの時は気づかなかったが、正面に相対すると、その佇まいからただ者ではないことが分かる。それに、若いエルは見惚れてしまうほど美しい女性だ。


「あぁ、朝稽古の帰りにたまたま見かけただけだから、気にしなくていいわよ。」

「そうはいきません。必ずお礼はします。所属ギルドはどちらですか?」

「本当にお礼なんていいのに。バッカスにお灸を据えるいい機会だっただけだから。」


 ライラはこのままその場を離れようと思ったが、少し顔を赤らめながらも真っ直ぐ見つめてくるエルに応えた。


「アネモネ。私の所属するギルドだよ。」

「はい、アネモネですね。近いうちに伺います。オレは、エル・アステリア。マグナ・アラエ所属です。」

「マグナ・アラエ!!……のエル・アステリア。良い名前ね。今度はケンカじゃなく一緒に冒険しましょう。楽しみにしているわ。エル君。」


 ライラはギルド名を聞くと一瞬顔を強張らせたが、すぐにいつもの表情に戻りその場を去っていった。


「マグナ・アラエか……団長にはだまっとこ。」


 立ち去るライラの後ろ姿に改めて頭を下げ、本来の目的である国営ギルド本部に向かった。


王都グランベール。国営ギルド本部がある。

有力ギルドが多数拠点を構えており、冒険者も数多く集まってくる。

商いも盛んで活気があり、治安も良く理想の都市。


人物紹介

ライラ・スカーレット

所属:アネモネ

職業:冒険者、魔法剣士

種族:人間

性別:女

身長:179

年齢:2?

性格:面倒見が良い。好奇心旺盛。

普段からは想像出来ない程、戦闘時は苛烈。

超絶美人で人気者。


バッカス・サカズキ

所属:アール・コル

職業:冒険者、チンピラ戦士

種族:人間

性別:男

身長:181

年齢:32

性格:弱い者に強く、強い者に弱い。酒好き。

万年鉄等級冒険者。逃げ足早い、しぶとい、ゴッキンみたいなヤツ。


キンギ&ヨノフ

所属:アール・コル

職業:冒険者、僧侶&魔法使い

種族:人間&人間

性別:男&女

身長:170&165

年齢:28&26

性格:無口&人見知り

言葉が話せないのかと思うほど無口&1対1ではパニックに陥るコミュ障

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― 新着の感想 ―
仲間のために格上に挑むエルの勇気がかっこいいです! 絶体絶命で現れたライラの強者感と、エルの名を聞いた一瞬の「動揺」が気になります。 解散危機のなかで出会ったこの縁が、どう物語を動かすのか気になり…
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