体育祭(中編)
「宣誓!我々選手一同は・・・。」
天気が急変することもなく体育祭は晴天の中、始まった。
続々と競技が進む中、俺は救護のテントで待機をしていた。これまで大した怪我の報告もなくこのまま進んでいくものと思われた。
「救護班っ!手を貸してっ!」
すると、校庭の真ん中から悲鳴と怒鳴り声が聞こえた。
「行くよ!」
先輩の後についていくとそこには女子のみの騎馬戦に出場しているはずの澪が足を抱えて校庭に蹲っていた。
「澪!?」
俺は慌てて駆け寄った。澪の表情を見るとあまりの痛みに喋る事すらせず眼を閉じ、痛みをこらえていた。
「っ!」
澪は声を上げないように必死に痛みを堪えていた。
「そこの人今すぐ担架を持ってこいっ!!」
「・・・へ?」
同じ救護班の男子は自分に言ったのか分かっていないようだった。
「お前だよ、早くしろ!!」
「はっ、はいっ!」
俺が怒鳴ると男子は逃げるように走っていった。
「先輩は救急車を呼んでください!!」
「あ、あぁ。分かった!」
あまりの光景に呆然としていた女子の先輩は俺の声で正気に返り電話のある本部へ走っていった。
「翔斗!」
担架を待っていると異変に気付いたのか淳が駆け寄ってきた。
「良いところに来た、手伝え淳。」
俺が協力を請うと淳は即座に「うん。」と頷いた。
「担架、持ってきましたっ!」
声のした方向を見ると先ほどの男子生徒が担架を持ってきた。
「よし、ここに降ろしてくれ。」
男子生徒は指示して通りに担架を澪の横たわっている真横に下ろした。
「澪、少しの間だけ我慢してくれ。」
俺がなるべく優しい口調で声をかけると澪は目をきつく閉じながら僅かに首を縦に振った。
「・・・。」
「っ!」
俺は無言で澪をお姫さま抱っこし、担架にやさしく乗せた。澪は小さく呻いたが何とか痛みに耐えたようだ。
「淳。」
「うん。」
俺が担架の前方を持ち、淳が後方の取っ手を持った。揺れないように気を張り詰めながら俺たちは澪を保健室まで運んでいった。
「これは・・・。骨に異常があるかもしれないわね。」
保健室の先生は澪の足を優しい手付きで触りながらそう言った。
「もうすぐに救急車来ると思うからそれまで耐えてね。」
そう言って先生は他の怪我人を見に行った。
「・・・2人3脚出れなくてごめんね。」
痛み止めのお陰で落ち着いたのか、澪が声を発した。
「気にすんな。それよりもゆっくりしてろ。」
澪は体を起こそうとしたが俺はそれを止めた。
「澪、何があった。」
「・・・。」
「本当のことを言え、あれは事故なんかじゃないだろう?」
俺の考えを言うと澪はあからさまに体を震えさせた。
「・・・騎馬戦で私は上で相手のハチマキを奪う役割を担ってたんだ。そしたら、4組の人たちが思いっきりタックルをしてきて私たちの騎馬は崩れて私も一番上から落ちたんだ。それくらいは大丈夫だったんだけどそのぶつかってきた4組の人たちが笑顔を浮かべながら私のほうに倒れ掛かってきたんだ。それで、足を踏まれたりされて・・・。」
「分かった、もういい。」
俺は尚も語り続けようとする澪の言葉を遮って止めた。澪の言葉を遮ると同時に外から救急車のサイレンの音が聞こえてきた。
「翔斗君、お願いがあるんだけど良いかな?」
「なんだ?」
「リレーを全力で走って欲しいの。」
「それをお前が望むのなら。」
その後、澪は小さく「頑張って」といってから救急車で搬送されていった。俺は決意を決め、教室に戻って行った。
教室に戻るとすでに昼休みに入っているためクラスの皆は昼食を食べていた。
「翔斗!澪はどうだったんだ?」
心配そうな表情をした淳が俺が来たのに気付くと慌てて駆け寄ってきた。
「一応、大丈夫だ。」
俺が返事をすると、クラスの中から安堵の溜息が聞こえた。
「ならよかった。一緒にご飯食べよう?」
淳が俺にそう促してきたが俺はそれを無視し、教卓の上に立った。当然、クラスの視線は俺に向かってきた。
そして、意を決して俺はこう言った。
「・・・お前たちにお願いがある。」




