体育祭(前編)
「起きて、翔斗君。」
深い眠りについていると突然、綺麗な声が聞こえてきた。
「・・・誰?」
「私だよ、澪だよ。」
その綺麗な声はそう返してきた。
「・・・俺ん家に澪がいるわけないだろ。」
未だに寝ぼけていた俺はその声を夢による幻聴と判断し、また眠りにつこうとした。
「今日は早めに登校しなきゃいけなんだよ、忘れちゃった?」
それでも澪は優しい声色で言い聞かせるように話してくれた。
「・・・。(ガバッ!)」
俺はその言葉で全てを思い出し無言で勢いよく起き上がった。
「おはよう。」
「・・・おはよう。」
澪はいつも通り見る人を魅了するような笑顔を浮かべながら挨拶をしてきた。
「ふふっ、時間なら心配ないよ。」
澪は俺の考えていることを読み取ったのか俺が言葉を発す前に教えてくれた。
「そうか、よかった。悪いなわざわざ起こしに来てもらって。」
「ううん、大丈夫だよ。久しぶりに翔斗君の寝顔も見れたことだしね?」
澪はそう言った後、俺の部屋を出て行った。
「さっさと着替えるか。」
俺はいそいそと制服に着替え始めた。ちなみに、今は6時でいつもより起きる時間がだいぶ早い。
そして、澪がわざわざ起こしに来てくれた理由というのが実行委員の事前会議が朝早くにあるためだ。そのため俺たち実行委員はいつもより早く登校する必要がある。そして、俺はそのことを完璧に忘れていた。そこで、澪が気を効かして起こしに来てくれた、と言う話だ。
着替え終わり最低限の身だしなみを整えてからリビングに向かうとそこには澪と結衣が仲良さそうに会話していた。
「あっ、おはようお兄ちゃん。」
そう言いながら結衣はいつの間にか習慣になりつつあるハグを求めてきた。
「あぁ、おはよう結衣。」
シスコンである俺は当然その要求に答え結衣を優しく抱きしめた。1分ほど抱きしめると結衣は離れていった。
「あはは、相変わらずだね2人とも。」
澪はその様子を見て微妙に引きつった笑みを浮かべながらそう言ってきた。
「?」
俺はその言葉の意味が分からず首をかしげた。
「・・・。(ドヤァ)」
結衣はなぜかドヤ顔をしていた。
その後は3人でご飯を食べ、いつもより早めに澪と一緒に家を出た。
「澪と一緒に登校するのも久しぶりだな。」
「うん、そうだね。」
大抵、澪は俺よりも早く登校してしまうので朝に会うことはほとんどなかった。
「・・・翔斗君。」
「なんだ?」
澪が妙に硬い声で話しかけてきた。
「これからは一緒に登校しない?」
「・・・急にどうした?」
俺は澪の真意が分からなかった。だが、表情から僅かに不安が読み取れた。
「別にいいぞ。」
「ッ!本当っ!?」
「あ、あぁ。」
俺が了承すると、澪はオーバーリアクション気味に反応してきた。
「ありがと。」
「?あぁ。」
俺たちの家から学校はそれ程遠くないので程なくして俺たちは学校に着いた。
「それでは、最終確認をしようと思う。」
会議室に行くともうすでにほとんどの人が揃っていた。全員が揃い次第すぐに会議は始まった。
「救護班はローテーションしながらテントの中で待機。招集係は選手の点呼を忘れずにやっておいてくれ。得点係は現場の指示をしっかり聞いてね。それじゃあ各々、最善を尽くそう。」
「「「おぉ~~!!」」」
実行委員長であるその男の人が言い切ると、他の実行委員たちもそれに続いて雄たけび?をあげた。
「頑張ろうね、翔斗君。」
「・・・あぁ、そうだな。」
澪も気合十分といった感じで声をかけてきた。
しかし、俺は心の中ではなにかが引っかかっていた。




