託された願い
いつから目を開けていたか
真っ白の光はいつしか月の光であり、
もう部屋は真っ暗で目の前の彼を照らすのもまた
窓から差す月光であった
ただ光って見えるのは月の白い光だけでなく、
彼からは紅いオーラが
言うなれば闘志のようなものが見えて感じる
そして手元を見ると
それを俺も纏っている
「ついにたどり着きましたか?」
「...ああ」
今の境地か、忘れてはいけないあの頃の過去へか
そこまで彼が意図したかは分からないが
至るべき場所に自分は立っているように思えた
「...不思議な気分だ、今はこんな夜の寒い所にいるはずなのに
体が熱いくらいだ...」
「今僕たちは...熱い想いで繋がっているんだ、そして限界までリンク...
魂が共鳴し合っていると言ってもいい」
これが...神霊を纏う者の気分か...
感じる熱も固まった覚悟も灯のようであるのに
心は穏やかだ
「そう...このような状態にあって...
姉さんは平静を崩してしまった。
ただならぬ事情があるのかもしれない...」
彼女に憑いた霊、
彼女本人の心境、
それが今に歪みきった現実を象ったなら
これは闘争で打ち負かすことだけでは解決することは出来ない
憑依の状態の彼女と対話して
憑依を解いてからも彼女の心とぶつかり合って歩み寄らなければ、
また彼女は繰り返し繰り返させられることになる。
それだけは止めなければ
「今出来る限りの霊気をあなたに託しました...
僕から今ここで言えるのは...大したことじゃないけど...
頑張って!!
...これだけです!」
彼の激励を受けて立ち上がり、遂にパスを切る
「よし、行ってくる!」
そう力強く言い放った
その瞬間だった
視界が揺らぎ、めまいが起こった
そして俺は直立した姿勢のまま後ろに倒れて背中全体と後頭部を
もろに大きな衝撃を受けた
薄れ行く意識にもはや見える者はなく
ただ彼が駆け寄る音だけが聞こえて、消えた。
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目を覚ます
布団に寝かせられているようだ
周りを見れば和式づくりの家のまま、
黒田さんの家の寝室の一つで寝かしてもらっていたようだ
起きようとすると風邪やインフルエンザのような体のだるさが
すぐに元の位置に引き戻した。
なんだ...この重みは?
体全体が熱っぽく、風などの症状と違うのは寒気や吐き気はなく
ひたすらに体が重く、熱い。
それで掛けられた毛布を横に放り投げた
尋常でない汗が出ている
息も荒く、自由に動かせない体に喘いでいると誰かの足音が聞こえた
「あ~、もう駄目じゃないですか~ 安静にしてないと~」
気の抜けた声、
昨日の凛々しい顔からいつもの顔に戻った嘉男くんだ。
「か、体が熱くて...」
「それは神降ろしをした後に出るちょっとした副作用ですよ、
ただの錯覚だし正式にやる儀式の後より症状は軽いはずなんだから...
おとなしく...しなさい!」
そう言って俺はのたうち回って転がっているのを元の布団の位置に戻されて、
毛布を掛けようとしている。
「も、毛布を掛ける必要は無いんじゃないか...?」
「ああ、ダメダメ。
今は凄い夏の猛暑日みたいに感じるでしょうが、今は冬ですよ?
汗かいてそこらへんい寝転がってたら、
それこそ風邪ひいちゃうんだから...」
そう言って真夏の昼に温かい布団に寝るような状態になってしまった
錯覚らしいが
「今、気分の良くなる朝食持ってくるから~!」
元気に言って駆けて行った彼を見送り、
俺はうだるような熱さの中
その気分の良くなる朝食、とやらを待った。




