EP8
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2時間後、兵士の見張りをすり抜けすり抜けなんとかやり終えた俺はぐったりとして宿に戻ってきた。ほんともう疲れた…ベッドにうつ伏せに倒れこむ。そういえば飯を食ってないことに気づいたが、もはやそんなことはどうでも良かった。枕に顔をうずめながらダガーに話しかける。
「いつバレるかとヒヤヒヤだったぞ、もう二度とごめんだからな。」
『と、いいつつ「もうちょっと、あと少し…」ってのぞいてたのは誰だ?このすけべ。私が止めなければ中に入る勢いだったぞ。』
「何か言ったかな?この素敵紳士の俺がそんなことするわけないだろう。そうだ、ステータスの確認をしないとだな。ステータスオープンっと…あった、あった。【隠密】ゲットだぜ!ピ○チュウゲットだぜ!」
『なんだ?そのピ○チュウってのは。まぁいい。明日から早速レベルを上げに行くぞ。今日はもう寝ろ。』
「ダガーは寝ないのか?」
『私には睡眠というものはない。それに今までさんざん眠っていたようなものだからな。』
激動の一日が終わった。長かった…いろんなことがありすぎて頭の処理がおいつかない。だが、【ヤツらに復讐を】という想いだけは深く胸に刻まれている。それだけでいい。その為に出来ることなら何でもやる…そう思っているうちにいつの間にか深い眠りに落ちていた。
次の日、目覚めたのは昼に近くなったころだ。ヤバイ…寝過ごした!と思ったが異世界だったことを思い出し安堵する。ダガーから『寝すぎだ』とお叱りを受けたのもあって素早く身支度を整え宿をあとにする。宿のおばさん、最後まで無愛想だったなと思いながら通りに出ると、そこには活気に溢れた町の姿があった。通りには馬車が行き交い、露店からは威勢のいい掛け声が飛んでいる。おっちゃん同士が豪快に笑いあい、おばさん同士の井戸端会議の様子もそこらじゅうで見られる。
「ふぅん、昨日は色々あって気付かなかったが、こんなに活気に溢れていたんだな。」
『そうだな、時間があれば見て回るのもいいかもしれんが、誰かさんが寝坊をしたせいで時間が無い。さっさと町を出るぞ。』
「わかってるよ、ダガー。お前性格悪いって言われないか?で、どこへ向かうんだ?」
『唯利のセンスの無さよりは言われないと思うぞ。ゴブ林へ向かう。ほら、向こうに見えるだろ?あの森の奥がそうだ。』
「……ダガー、お前^^;センスが無いって言われないか?この言葉をそっくり返すぞ。」
『うるさいぞ、唯利。ちなみに私のセンスはこの国で表彰される程だ。さっさと行くぞ。』
町を出て街道沿いを歩いていく。空を見ると雲がゆったりと流れ街道沿いには花が咲いている。少し先には木々の生い茂った森がある。とても幻想的なところで元の世界では見ることの出来ない景色に感動していた。そんなことを思っているといつの間にか森の前まで来ていた。
『これから森へ入る。入ったら身を低くしながら進め。敵が3体以上なら戦うことを諦める。もし見つかれば全力で逃げろ。2体までなら1体を不意打ちで仕留め、残り1体は正面から戦う。大幅に上昇したステータスなら1体なら軽く倒せるはずだ。不意打ちが卑怯などとはいうまいな?攻撃は喉を突くようにすればいい。』
「言うわけないだろ。じゃあ行くぞ。」
茂みに身を潜めながら進んでいく。細心の注意を払いなるべく音を出さないように…そうして5分程進んだところで、ゴブリンを発見した。運良く1体でいやがる。昨日のヤツと同じだ、というか全く見分けがつかない。俺は息を潜め少しずつ近づいていく。そして残り数メートルというところでダガーを抜き、ダッシュで敵に詰め寄る。敵は意表を突かれ、今から剣を構えようとしている。そんな時間を与えてやるわけもなく俺はダガーで喉を一突きにした。昨日とは違い呆気なく敵が倒れる。
「ステータスが上昇しているからなのか、昨日とは走る速度もぜんぜん違うな。これなら戦える。」
『油断するな、1体だと思っても近くに仲間がいたりすると囲まれるぞ。さっさとドロップ品を回収して身を隠せ。』
そうだ、俺の命が懸かっている。手早くドロップ品を回収(銅貨3枚)し、茂みに身を隠す。さっきから頭の中で『レベルが上がりました。』が5回ほど繰り返されているが無視し次の敵を探すためにまた身をかがめて歩き出す。
次はゴブリン×2だった。何を言っているかは全くわからないが話し合っているようだ。「ギギッ、ギィッ」などと言って笑っている。何が面白いのかサッパリだ。今度も同じく警戒しながら不意をうつために数
メートルまで移動している時だった。後ろでガサッと音がする。とっさに横へ転がる。さっきまで俺がいたところに剣が突きたてられていた。見れば今までのゴブリンより大きいゴブリンが口に笑みを浮かべこちらを見ている。俺はダガーを抜き、全力で喉目がけて突きを繰り出す。しかし、剣で弾かれてしまう。相手もこちらの速度と威力に驚いたのか、さっきまでの笑みは消え警戒の色が浮かんでいる。
「くそっ、油断した!」
『違う、こいつはゴブリンソルジャー。今までのヤツとは比べ物にならん!こんなやつがここにいるとは!気をつけろ。強いぞ!!」
俺はダガーを構え直す。向こうのゴブリン2体も気付いたのか、こちらに向かっている。このままではまずい。そう思った俺は一撃で決めることにした。前傾姿勢でダッシュし、そこから喉目がけて【スラスト】を繰り出す。敵は反応こそしたが剣の速度が全く違う。こちらは【音速】なのだ。喉を一突きにし、敵が仰向けに倒れる。と、同時に俺は茂みに飛び込む。2体は俺が逃げたと思い、無警戒で追いかけてくる。そして茂みに入ってきたところで隠れていた俺は1体の喉目がけて【スラスト】。逃げたと思っていた奴が突然現れ、さらに仲間がやられて唖然としている残りの1体の喉目がけて【スラスト】。反応すらさせずに2体を屠る。
「ふぅ、疲れた。【スラスト】使い勝手がいいな。ドロップ品を回収するとするか。」
ゴブリンソルジャーからは銀貨1枚、銅貨5枚、何に使うのかわからない皮を回収。他の2体からは銅貨1枚ずつを回収した。また頭の中で『レベルアップしました。』が何回も繰り返されていたが無視する。そして身を隠し一息つく。
『スラストはダガーマスタリー50で習得する技だからな。前から聞こうと思っていたんだがダガーマスタリー99なのにどうしてレベルが2なんだ?』
「あぁ、俺は異世界に召喚されたってのはリーシャとの会話でわかってるだろ?その時にゴブリンに襲われたんだが、俺はそいつを倒した。そしたら召喚された中で一番早く敵を倒したボーナスってことで一つだけスキルをMAXに出来たんだよ。で、俺はダガーマスタリーを99にしたわけだ。」
『なるほど、そんなことが…それなら納得できる。先の勇者ももしかするとそれなのかもしれないな。』
「あぁ、リーシャが言ってた勇者か。あいつは放浪に出たとか言ってたがダガーは勇者がどうなったか知っているか?俺は放浪などとは到底信じられないんだが。」
『すまないが、そこまではわからない。だが私も唯利と同意見だ。あの王女ならおそらくは…』
俺は空気が重くなりそうだったので一旦話を区切り、休憩を終えることにし、また先のように進んでいく。そのあとはゴブリンソルジャーとは出会わずにゴブリンだけを【スラスト】を多用し倒していく。その日俺が倒したゴブリンはゆうに50体を超えていた。夜になり周りが見えづらくなったところで切り上げ、町へ戻ることにした。
うん、唯利君、詐欺並の強さですね。
ですがスラストは本来MPを消費し、ディレイもあるのでそこまで多用できる技ではありません。MP0、ディレイ無し最強ですね(笑)