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うまくいかない日

  いつも通りのバイト終わり、翔は今日もあてもなく街を歩き回っていた。

  給料日まではあと5日。所持金は残り2300円。

  実家から送られてきた米をメインに、少し遠くの激安スーパーへ1袋10円の

  もやしを買い求めに行くのにも抵抗はなくなった。

  毎日もやしを2袋だけ買いに行く翔に店員は訝しげな視線を送るが、そんなこ

  とは知ったこっちゃない。向こうだってこちらの金銭事情を知らないし。


 「もやしの味ぶっちゃけあきたよなー。でも腹膨れるし安いし。こんだけ安くて

  もやし農家は大丈夫なのか?初日は塩コショウ、2日目も塩コショウ、3日目

  は余ってたキムチと合わせて、その次はカレー粉で味付けして…今日はー、

  しょうゆで煮てみるか?」


  ぶつぶつと独り言を言いながら一旦家へ帰る。

  もやしは痛みやすいので、早めに保存しておきたいのだ。

  一度に大量に買って冷凍しておくのも手だが、野菜は、野菜位は新鮮なもの

  を食べたい!という強い意志のもと、冷凍するとその分電気代が上がるのでは

  ないかという恐怖心も後押しして毎日少し遠出して買い物に行くのである。


 「あー…肉食いたい。」


  青空を見上げ久しく食べていない肉に想いを馳せつつ、少し暑くなってきた

  気候にもやしがやられない内にと小走りになる。


  どんっ!


  前を見る内から走り出したのが悪かったのか通行人に当たってしまった。

  慌てて落としたもやしを拾い上げ相手に謝罪して去ろうと思って顔を上げると

  翔はもう一度袋を落としてしまった。


 「…伏見?」


  突然ぶつかってきた翔に気付かず顔をしかめた伏見は翔の顔を確認するなり

  笑顔になった。


 「おー!!翔!久しぶりだな!元気してたか?卒業ぶりだよな?

  あれ?お前今日仕事は休み?」


  相変わらずのハイテンションと少し空気の読めない伏見に翔のテンションは反

  比例して下がったが、顔に出さないように愛想笑いを向ける。


 「ああ。今日の仕事は終わったんだよ。今から家帰るとこ。」

 「仕事ってお前今何やってんの?服装自由とか良いなー!俺なんて毎日スーツで

  最近服も買えてねえし。」

 「お前証券会社で勤めてんだよな?」

 「そうそう。堅そうな仕事だと思ってたんだけど、これが意外と楽しくてさ!

  先輩とかもうるせえおっさんばっかりかと思ってたんだけど、親父世代も歳近

  い先輩も皆親切にしてくれるから、仕事自体は簡単じゃねえけど楽しんでやっ

  てんだ!!んで、お前は今何の仕事してんの?」

 「そっか、俺のことは別にいいだろ。ほら、まだ仕事中なんじゃねえの?」

 「やっべ!そうだった!!俺行くわ!今度また飲もうぜ!連絡する!!」


  こちらに手を軽く上げながら遠ざかっていく伏見の背中を見送りながら翔は小

  さく溜息を吐いた。


 「完全に差ついたな…。残金2300円じゃ気軽に居酒屋にも入れねえわ。」


  卒業以来再会した友人の社会人として凛々しくなった顔を思い出し凹みつつ

  手にぶら下がるもやし入りの袋を揺らしながら翔は家路を急ぐのであった。  

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