鈴
メンバーは現在、8人。
なんとか大会には出場できる。
でも、11人でシステムを成り立たせたいなー。
まぁ、律なら8人でも面白いサッカーを考えるんだろうけどね。
サッカー教室の試合を見に行ってスカウトしようかな。
でも、掲示板にもHPにも載せてるからなーそれでも来ないってことは、興味ないってことだよね。でも、悩んでる時間もない。瑠が私を見つけてくれたように、私も誰かを見つけなきゃ。
「鈴、明日の練習、キャンセルするの?」
「うん。ごめん、律。サッカー教室の試合が見たい」
「そか、俺がコーチの試合だわ」
「そりゃいいわ。一緒に意見できる」
「俺は仕事だけどな。だから、誘うのは鈴に任せる」
「わかった。ただ、律の思うシステムの最適なピースを選びたい」
「お!舐めんなよ。俺はどんな選手も輝かせちゃうから」
「へいへい。じゃ、私が選ばせてもらうわ、名コーチ様」
「あざーす」
「褒めてないし」
試合は、20代から50代の律が運営するサッカー教室のチームと地域の草サッカーチームの対戦。地域の草サッカーチームは20代から30代で、どう見ても経験者揃い。サッカー教室チームは少し前の私のように、大人になってからサッカーを始めた面々。練習の段階で勝敗が見える個のスキルの差。
どうする?律。
「はーい。集合してくださーい。今日のシステムね。433で行きます」
433か。
「おだんごにならないように距離感を大事にしましょう」
教室だと丁寧だね、律。
ホワイトボードにマグネットを置いて続ける。
「それから、これ大事ね。相手のボールホルダーの3m手前に必ず1人立つこと。これは、ポジションは関係なく、自分の前に現れたら必ずね。取りに行かなくていいよ。ただし、次で取りに行こう。近くのポジションが前に立ったら、次にどこにボールが動くか考えよう。パスミスがあれば、奪おう。むしろ、パスミスを誘う作戦だからね。インターセプトの気持ちは忘れない。でも、パスミス以外は突っ込まない。3m手前に立つ。常に自信がある10番はドリブル突破を仕掛けてくる。10番の時だけは後ろのポジションが、ゴール前を閉める。OK?多分、これで君らは勝負に出られる。奪ったらゴールにボールを運ぶことを考えよう。失点しなきゃ、負けない。ただし、得点しなきゃ勝てない。得点はね、シュートする数で確率は上がるんだ。だから、ガンガン打っていきましょう。さぁ!行こう!」
縦パスは通さないって作戦ね。
律ってさ。本当にサッカーを面白くするよね。
(勝てる)って可能性だけで、チームは輝く。
みんなやる気に満ちてる。
これなら、楽しくサッカーができる。
がんばれ!サッカー教室チーム!
前半は律の作戦通り。
縦パスは通すことなく、ミスを誘うことができた。
でも、相手は、テクニックとスピードがあり失点をしてしまった。0−1
「前半、お疲れ様です。まずは水分とってください。耳と目だけこっちに向けてくださいね。皆さんは、作戦を忠実に守りました。まずは、拍手です。私のミスは、9番を見誤ったってことです。9番は、得点確率の高い10番にボールを送ります。9番が持ったら10番へのインターセプトもチャレンジしましょう。必ずボールを出しますから、思い切ってコースに入りましょう。さぁ、インターセプトが成功したら、そのままぶっちぎりましょう。ドリブルでもいい。パスでもいいです。9番10番に絶大な信頼を置いてるチームですから、そこを断絶すれば一瞬プレイは止まります。そこが、皆さんのチャンスです」
プロのコーチだ。
相手の個の力と自分のチームの一人一人の個性を生かした指示だ。後半に向かってちゃんとテコ入れしてる。
後半、開始10分で9番から10番へのパスをインターセプトしてかっさらって1点返した。まんまと読み通りのプレイにサッカー教室チームは盛り上がった。でも、そこまでだった。個人プレイに走った10番に陣形は崩され1−2で負けてしまった。
私は2人のプレイヤーに声をかけてみたた。
1人は見事なインターセプトを決めた彼。
律の作戦に最も忠実に反応していたと思うんだよね。
もう1人は相手チームのインターセプトされた9番。
前半の10番へのパス供給率は見事だったと思う。後半は律の作戦で封じられたけど、欲しい選手。話してみて、感触も悪くなかった。多分、律が作るチームに魅力を感じたんだろうね。今日の試合でただのYouTuberという印象が覆ったみたいなこと言って感心してた。
蒼のパパが言うには、律のサッカーはドラゴンマスクのとうちゃんのサッカーを踏襲してるらしい。律には、ピッチにとうちゃんが見えてるんだって言ってた。なんかそれって、嬉しいような切ない話だけどね。
でも、蒼パパ。
律はちゃんと、今いる選手も見てるよ。
上手い人も、そうじゃない人も。
速い人も、遅い人も。
その人が持ってるものを見つけて、サッカーにしてくれる。
だから、私も見つけなきゃ。
私を見つけてくれた瑠みたいに。
「一緒にサッカーしませんか?」。
今度は、私が声をかけるよ。
11人のサッカーのために




