圭&仲
サッカーって思ってた以上に、体に感覚って残ってる。
「あの頃みたいに走れない」
それは覚悟してた。
クリスティアーノ・ロナウドやメッシと比較しちゃいけないけど、40過ぎたってできるんだよね、サッカーって。
圭
仲と一緒に律を見つけて、俺たちはFC1999のメンバーになった。
俺たちは、あの軽い律からは想像できない思いが「1999」にあることを知って、ギアを1つ上げてしまった。
「りんさん」の存在は知ってた。
同年代でプロに近い選手が近くにいれば、噂になる。
律とりんの高校は、クラブの練習場の近くで、俺と仲の高校はスタジアムの近くだった。1年の時はボールボーイをやったこともある。
あのスタジアムのボールボーイは、選手のタイミングよくボールを出すことで有名だったので、緊張するんだ。うまくいけばSNSで褒められる。
りんは1年上の学年で、そのクラブのユース。
憧れの位置にいる存在だ。
りんさんに会ったのは県のトレセンだった。
自慢なんだけど、俺と仲は県のトレセンに入ってたんだ。
サッカー王国って言われてる県で、トレセンに入るのは結構大変なんだけどね。高校サッカーで全国大会出てもプロになるのは一握り。
県のトレセンからナショナルトレセンまで上がれば、プロへの道は開ける。
俺ら結構上手かったんですよ。でも上には化け物がいた(笑)
そこで出会っちゃうわけですよ。
りんさんレベルの人たち、天才たちに。
完全に自分がモブキャラであることを思い知らされるわけ。
サッカー強豪校の1年からレギュラーですよ、俺と仲は。
サッカー好きだってだけでやってきたけど、これで生きていくって人たちは、何段階も上にいるんだなって思い知らされたんです。
そんな時、律のサッカーに出会って
「こんなサッカーしたい」って思ったんです。
その後、りんさんの訃報は「消えたサッカー界の星」って報道されて。
俺たちにはないものをあんなに持っていたのに、
消えてなくなってしまうことがあるって事実と、人の命の儚さと、理不尽な思い、怒りかもしれないな。
そんなに知ってるわけじゃないけど、でも、俺たちにとっては身近な憧れだったんです。
仲
りんさんは知ってました。直近でプレー見てましたから。俺なんかザクザク抜かれてた。後で監督に怒られましたけど、あれは無理だってw格が違う。
打ちのめされた帰り道、圭と話しました。
「俺たちは俺たちの勝負をしよう」って。
遊びではしたくない。本気の勝負をしたいんです。
でも、それは自分のフィールドでってねw
東高は県代表にこそなれなかったけど、4強には入っていた。これが俺たちの本気でした。限界だとは今でも思ってませんよ。あと、少しってことでした。
「りんが死んだ」って話は、ふわって舞い降りるみたいに伝わってきました。あの年の浦和は最悪だったんですよ。
レッズは降格するし、これから代表で活躍するはずだったりんを失うし。
全て悪い夢だったってことにしてほしい年でした。
りんさんは1つ上だから、そんなに早く結婚してて子どもがいるなんて知らなかったから、存在を知った時には驚きましたよ。
で、息子はゴールキーパーになって、よりによってレッドブルに入るなんてw
もっと驚いたのは嫁の「鈴」の存在。
まさか、律とサッカーやってるなんてね。
律とりんさんが一緒にサッカーやってるのは見たことないし、律と鈴のサッカーは全く違うだろうけど、なんかしっくりくるのは俺のフィルターのせいかな。
俺は近い位置で、鈴とは連携するけど勘がいいし、サッカーをよく知ってる。俺の勝負しやすい距離までじっくり計って罠を仕掛けてくれる。俺は、そこを狩って前線にボールを送る。スピードのある選手じゃないが、クレバーなプレーだ。プレーヤーとしての考え方や基礎は、律から学んだからだろうな。
律は「ばかばか」言われてるけど、決して「ばか」だけじゃない。
これって、とりあえず「ばか」であることは認めてる?
ひとりひとりへの練習プランは的確だ。
試合の組み立てもやってみてわかるんだけど「すげー!」って思う。
あの人、自分がコーチ向きだってわかってて、今の仕事してるんだろうな。
俺たちは、律より上手かったけど、サッカーを仕事にはできなかったw
「ばか」って、自分の持ってる能力を活かせない人を言うんだと思う。
そうなると律は、1000%活かしてる天才かもな。
で、そんな律に40過ぎてもう一回捕まった俺たちは――
たぶん、ばかなんだと思うw
でもさ。
昔みたいには走れない。
昔みたいには蹴れない。
それでも、ボールが来ると身体は覚えてる。
まだ、俺たちのサッカーは残ってた。
だったら、もう一回やるしかないじゃん。




