梶
練習試合。
1試合目は、私が以前に所属していたチーム。
やりやすいって言えば、やりやすいけど、やりにくいって言えば、やりにくい。
大会が終わったら帰る予定のチームなので、帰りやすい状況ではいたかったりする気持ちはあります。自分が活躍する前提で言っちゃってますけど、練習が楽しくて、このままじゃ大活躍しちゃいそうなんですよw
10番頼みのあのチームに対して、パスを供給する私が抜けたわけですから、10番のイライラは想像がつく。
多分、一人でボールを支配してゴールまで持ってくると思う。
その際、狙われるのは・・・
鈴だ。
鈴を突破するのが楽だと誰もが思う。
フェイント1発で抜けると思ってる。
私が敵のチームにいたら同じことを考える。
相手チームの弱点をつくのは、勝利には必須。
でも、FC1999はちょっと違う。
私が元々いたチームは、そこを見誤って、とんでもない差で負けることになった。
試合前に確認したのですが、新しいメンバーはいなかったんです。
つまり、私の代わりに10番と連携するメンバーはいないということ。
でも、私がいなくてもチームベンチは、和やかに油断している。
策はないんですよ。偶然と個で楽しんでるチームですから。
練習もあまりしないで、試合ができればよかったんです。
ちょっと笑っちゃいました。あーあそこにいたんだなって。
4213、これが律が最終的に組んだシステム。
「1」ここに鈴がいることが、相手には弱点に見えるんですよね。
それが罠だとは気がつかないんだろうなーあのチームは。
ちなみに10番は20代なので、スピードもテクニックも体力もある。
もうちょっと上手かったら、もうちょっと強い意思があったら、草サッカーじゃなかったんだろうなって思います。草サッカーの中には、そんな選手がたくさんいますよね。自分だってそうですから。
自信たっぷりに鈴の前までボールを運ぶでしょうね。
「鈴!右OK」
鈴は右に10番を誘いながら、左を切る。
空いたコースに10番が入ってくる。
シュートを打たれる前にセンターバックがコースを切る。
止まった瞬間を鈴が狙う。そう簡単に10番も取られないが、パスコースを探した瞬間、センターバックがボールに触る。それを鈴は待ってる。
ゴールに向かってボールを持てば、20代の10番が戻るより速い。
鈴は、長くボールは持たない。
周囲をよく見てるし、判断が速い。
更に自分で言いますけど、私が鈴の視野にいて、次のコースを作ってますから。そこに出せばいいので、相手チームは置いていかれます。
私ですか?
律からは好きにしていいって言われてますから、迷わず蹴ります。
ゴーーーーーール!
この日、私は帰る家を失ったような感じでした。
人生初のハットトリック。
律と瑛も1点ずつ取って、5−0。
楽しくて、楽しくて、楽しくて。
3点目を決めた時なんて、相手が元チームだってことも忘れて、思いっきりガッツポーズしてました。
その瞬間、思っちゃったんですよね。
ああ。
私、もうあのチームには戻れないなって。
嫌いになったわけじゃないんです。
みんなとサッカーするのも楽しかった。
10番にパスを出して、思った通りにゴールが決まれば嬉しかった。
岬くんでいるのも、嫌いじゃなかった。
でも、知っちゃったんですよ。
自分でゴールを狙う楽しさを。
それに、私が3点取れたのは、私が急に上手くなったからじゃない。
鈴が奪って、顔を上げる。
山さんが相手を背負う。
瑛が走る。
律が動く。
そのたびにコースができる。
私は、その中から自分で選ぶ。
パスを出してもいい。
ドリブルしてもいい。
そして。
ゴールが見えたら、打っていい。
誰かのために岬くんになることもできる。
自分で翼くんになることもできる。
決めるのは、私。
40歳過ぎて、そんなサッカーがあるって知りました。
試合が終わって、律がニヤニヤしながら寄ってきました。
「翼くん、ハットトリックじゃーん」
相変わらずの絡み。
自分はもっとゴールしたかったくせにw
「どう?イナズマシュート」
「イナズマシュートじゃないです」
「じゃ、次決めてよ」
次。
その言葉が、なんだか嬉しかった。
帰る家を失ったと思ったけど。
違いましたね。
新しいホームを見つけたんです。
FC1999。
次も、ゴール狙います。




