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16/22

梶

練習試合。

1試合目は、私が以前に所属していたチーム。

やりやすいって言えば、やりやすいけど、やりにくいって言えば、やりにくい。

大会が終わったら帰る予定のチームなので、帰りやすい状況ではいたかったりする気持ちはあります。自分が活躍する前提で言っちゃってますけど、練習が楽しくて、このままじゃ大活躍しちゃいそうなんですよw

10番頼みのあのチームに対して、パスを供給する私が抜けたわけですから、10番のイライラは想像がつく。

多分、一人でボールを支配してゴールまで持ってくると思う。

その際、狙われるのは・・・

鈴だ。

鈴を突破するのが楽だと誰もが思う。

フェイント1発で抜けると思ってる。

私が敵のチームにいたら同じことを考える。

相手チームの弱点をつくのは、勝利には必須。

でも、FC1999はちょっと違う。

私が元々いたチームは、そこを見誤って、とんでもない差で負けることになった。


試合前に確認したのですが、新しいメンバーはいなかったんです。

つまり、私の代わりに10番と連携するメンバーはいないということ。

でも、私がいなくてもチームベンチは、和やかに油断している。

策はないんですよ。偶然と個で楽しんでるチームですから。

練習もあまりしないで、試合ができればよかったんです。

ちょっと笑っちゃいました。あーあそこにいたんだなって。


4213、これが律が最終的に組んだシステム。

「1」ここに鈴がいることが、相手には弱点に見えるんですよね。

それが罠だとは気がつかないんだろうなーあのチームは。

ちなみに10番は20代なので、スピードもテクニックも体力もある。

もうちょっと上手かったら、もうちょっと強い意思があったら、草サッカーじゃなかったんだろうなって思います。草サッカーの中には、そんな選手がたくさんいますよね。自分だってそうですから。

自信たっぷりに鈴の前までボールを運ぶでしょうね。

「鈴!右OK」

鈴は右に10番を誘いながら、左を切る。

空いたコースに10番が入ってくる。

シュートを打たれる前にセンターバックがコースを切る。

止まった瞬間を鈴が狙う。そう簡単に10番も取られないが、パスコースを探した瞬間、センターバックがボールに触る。それを鈴は待ってる。

ゴールに向かってボールを持てば、20代の10番が戻るより速い。

鈴は、長くボールは持たない。

周囲をよく見てるし、判断が速い。

更に自分で言いますけど、私が鈴の視野にいて、次のコースを作ってますから。そこに出せばいいので、相手チームは置いていかれます。

私ですか?

律からは好きにしていいって言われてますから、迷わず蹴ります。


ゴーーーーーール!


この日、私は帰る家を失ったような感じでした。

人生初のハットトリック。

律と瑛も1点ずつ取って、5−0。

楽しくて、楽しくて、楽しくて。

3点目を決めた時なんて、相手が元チームだってことも忘れて、思いっきりガッツポーズしてました。

その瞬間、思っちゃったんですよね。

ああ。

私、もうあのチームには戻れないなって。

嫌いになったわけじゃないんです。

みんなとサッカーするのも楽しかった。

10番にパスを出して、思った通りにゴールが決まれば嬉しかった。

岬くんでいるのも、嫌いじゃなかった。

でも、知っちゃったんですよ。

自分でゴールを狙う楽しさを。

それに、私が3点取れたのは、私が急に上手くなったからじゃない。

鈴が奪って、顔を上げる。

山さんが相手を背負う。

瑛が走る。

律が動く。

そのたびにコースができる。

私は、その中から自分で選ぶ。

パスを出してもいい。

ドリブルしてもいい。

そして。

ゴールが見えたら、打っていい。

誰かのために岬くんになることもできる。

自分で翼くんになることもできる。

決めるのは、私。

40歳過ぎて、そんなサッカーがあるって知りました。

試合が終わって、律がニヤニヤしながら寄ってきました。

「翼くん、ハットトリックじゃーん」

相変わらずの絡み。

自分はもっとゴールしたかったくせにw

「どう?イナズマシュート」

「イナズマシュートじゃないです」

「じゃ、次決めてよ」


次。

その言葉が、なんだか嬉しかった。

帰る家を失ったと思ったけど。

違いましたね。

新しいホームを見つけたんです。

FC1999。

次も、ゴール狙います。

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