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11/22

鈴

とうちゃん、聞いてよ。

律ったらほんと、しょーもないんだから。

O40(オーバー40)の全国大会は、毎年、秋に行われる。

そこに出場するには、関東大会に出なきゃならない。

そして、関東大会に出るには、埼玉県予選を勝ち抜かなきゃならない。

さらに、埼玉は3リーグあって優勝して勝ち上がらなきゃならない。

3年かかる。

果てしない・・・

律、どうするつもり?

埼玉は西武台と三郷の2強がいて、にわかチームじゃ歯が立たないよ。


「ねぇ、鈴。俺、そんなの目指してないよ」

へ?これじゃないの?

「鈴、これに出ようとしてたの?そりゃ、シニアのチーム所属はするから出られるけど」

「全国、行かないの?」

「逆に聴くけど、行くの?」

「…無理だとは思う」

「うん。予選は参加してもいいけど。楽しさは失いたくないわけよ」

「だから、大会はここから参加。天然芝で1泊2日、温泉付き!」

「おー!!!」

「フレンドリー部門とチャレンジ部門があるんだけど、ここはチャレジで行こうと思う」

「いいね。本気で楽しもう」

「埼玉県予選もね。勝ち上がったら面白いけど、11人ギリギリは流石に厳しいよな」

「O40とは言え、選手層は厚いからね」

「この大会も秋だから、全国出られなかったチームが来るかもね。ひゃーワクワクする!」

なんでワクワクできんだろうねーこの人は。

「あとさーユニどうする?」

「そうだね。大会出るなら最低ホームとアウエイの2種は作らなきゃだな」

「ホームは水色かな」

「えー!赤じゃないんだ。鈴は赤って言うと思った」

「瑛さん、ジュビロだからねー遠慮してみた」

「いやいや。水色って意外と他のチームと被るのよ」

「そうなんだ。じゃ、赤白とか?昔のフェイエみたいな」

「あーシンジがいた頃のね。いいかもね」

「セカンドは黒とか」

「被りそうにないけど、暑くね?」

「じゃ、黒白」

「ファーストがお祝いで、セカンドが忌まわしい感じだなw」

「パンツとソックスはどっちも黒で、番号はゴールドがいいな」

「んーじゃ、とりあえず絵にしてみんなに相談してみよう」


…でさ。ずっと思ってたんだけど…


「うちのチーム。なんて名前なの?」

「あ…」

「考えてなかったの?」

「あはは…」

さすが、ばか律。

「明日、みんなにそれも相談しよう!」

「原案作ってなかったら、みんな、呆れるから。考えておいでよ。宿題ね」

「ほーい」


…期待できない。変なの考えてきそうだ…


次の日のミーティングは荒れに荒れた。

原因は戦術ではなくて、律の持ってきたチーム名だった。

①FC老眼…当然却下

②FCオジオバ…意外にも「ojioba」ならいいという意見もあった。

③FCdareno…落とし物みたい

④FC GODZILLA…強そうだけどね

⑤FC kitty…弱そうだよね

⑥FC mine…パッとしない

で、最後に出してきたのがこれだった。


「FC1999」


なーに出して来るんだよ、律。

「律、それさー」航が言いかけると

「世紀末ってこと?ノストラダムスの予言の年?」と瑛がおもしろそうに言った。

「数字って無いからいいかもね」賛成の声が上がる。

「いや、その年号は…」航が止めにかかる。


「律は忘れられないんだよねーりんくんとのサッカーが」と私が笑った。

みんなの頭の上に「?」が浮かぶ。


「鈴のダンナが亡くなった年なんだよ」航が短く言った。


「そ。俺たちにサッカーの楽しさを教えてくれたヤツが亡くなった年」


「なんで?どうして…その年をチーム名にするの?」瑛が顔を歪めた。


「俺のサッカーの原点があいつでさ。あいつが亡くなった時、俺、誓ったんだよね。あいつから教えてもらったサッカーの楽しみ方をみんなに繋げるって」


これ、お酒飲んでは律が泣きながら私に話すやつ。


「だから、俺のスタートでもあるんだよね」

ほーら泣き出した。え?航まで泣くの?やめてやめてって!


「スタートなら、チームのスタートで今年の年号でいいじゃん」と私が言うと

「いや。鈴がよかったら、それで行こうよ」

「俺たちが好きだったサッカーはそこからだったんだ…」

東高卒業生組も神妙な顔になる。そんな大袈裟な名前にしなくていいから!みんながそんなもん背負わなくていいって!


結局、FC1999になった…


なんだかなぁ。

とうちゃんが死んだ年を背負って、サッカーするって。

ちょっと重い。

でも、律にとって1999年は、とうちゃんを失った年じゃないんだろうな。

とうちゃんからもらったサッカーを、自分で繋ぎ始めた年なんだ。

それなら、まぁ、いいか。

それに今はもう、私だけの1999じゃない。

律がいて。

瑛がいて。

梶さんがいて。

パパたちがいて。

私がいる。

上手い人も、そうじゃない人も。

昔から蹴ってきた人も、最近始めた人も。

みんな、まだサッカーがしたい。

それだけで集まったチームだ。

FC1999。

うん。

悪くないかも。

とうちゃん。

私たち、まだまだサッカーやるよ。

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