第21話 呪われた水門と光り輝くおっさん
「おっさんの力を見せろって言われても困るのだが、どうやって見せればいいんだ?」
「簡単な話さ。おっさんが持つ道具を使って、呪いを解けばいいだけ!」
「俺の道具を使って? それはまた随分と勝手なもんだな。聖女のあんたが呪いを解けないのに俺が何で解ける?」
聖女のお付きの二人からは特に何の言葉もないが、俺の言葉を聞いて無言で頷きつつも、聖女の提案の方に力強く頷いている。
呪いを解くのは聖女の役目だと認識しているからこその頷きなのだろうが、それなのになぜ俺に託すことを良しとしているのか。
「おっさんが呪いを解くことに成功すれば、近くにいるあたしも成功したことに繋がる……そうすればあたしは人生の新たな段階を始められるんだ! だから頑張れ、おっさん! あたしの為に!」
俺が持つ聖女のイメージとはまるでかけ離れているな。自分じゃない誰かが解呪に成功したら、それこそ労せずして幸運を得られるってわけだ。
「聖女の新たな段階って?」
「二十五歳となったばかりのあたしが便乗で解呪に成功したら、新しい始まりへ進めるのさ。神聖な女性として神から恵みを受けられるんだ!」
要するに、二十五歳のお誕生日おめでとうついでに聖女として成長した特典で自分だけ祝福されるって意味だな。
「全然関係ない俺が解呪して、聖女のお前は一人で祝福を受けるのか?」
「それが何か問題でも?」
「……いいや。よこしまな聖女ってのも面白いと思っただけだ」
「とにかくこの場はおっさんに任せたから、頑張れ!」
やれやれ、聖女らしからぬ言葉と堂々とずる賢い態度を取られればこちらとしては素直に従わざるを得なくなるぞ。
俺の道具を使ってとなると、それこそこの場に神クラスの召喚を呼べば一発で解決するとは思うが、それだと俺の力を見せつけることにはならない。
……となると。
ちょっと反則だが、俺自らが門を破ったように見せつけてやるか。
「聖女アルマ。今から俺の道具を使って呪われた水門を開けてやろう! ただし、どんな開け方になっても文句は言わないでくれよな!」
「どんなであれ、開けられるなら文句なんて言わないからあたしに遠慮しなくていいぜ!」
聖女だけの同意では弱いから一応訊いておくか。
「お付きの者たちも構わないな?」
「……はい」
「ええ」
おっ、流石に返事はしてくれたな。
「それなら危ないから離れててくれ。後ろに俺の仲間たちが立っている辺りまで下がっててもらえると助かる」
「そんなに危険な道具を?」
「まぁ、見てれば分かるが、俺から離れてくれた方が安全だ」
「よく分からないけどおっさんの言う通りにする」
よしよし……これでバレずにがぶ飲みできる。俺が持つ道具なら手段を問わずに呪いの水門を解呪出来るが、それではあの聖女が納得しない。
またもインチキな力を得ることになるが――今からがぶ飲みするのは【祝福聖水】という水だ。
昔、冒険者パーティーにいた時にダンジョンで聖なる泉なる場所にたどり着いたことがある。そこから密かに汲んでおいたかなり濃い聖水だが、後で鑑定してもらったら体に浴びせるよりも飲んで体内に入れると、一時的に全身が聖なる光に包まれてダメージを受けない体になるという話だった。
ダメージというのはもちろん呪いの類い限定だが、目の前の水門自体が呪われているのであれば、多分俺の体当たりで破壊出来るはずだ。
なるべくあいつらに見えないように取り出して……あとは一気飲み!
これの問題は味がとんでもなく苦いのとしばらく全身が光りまくることだが、聖女にとって分かりやすい象徴になるかもしれないからそこは我慢だな。
……うぷっ。に、苦い。
――しばらくして。
「あ、あれ、お師匠さまが光ってみえるにぁ!」
「アクセルさま!?」
「ちょっとちょっと、アクセル! え、どういうこと? 何で光ってるの?」
「あのおっさん……もしかして神の化身!?」
などなど、離れたところで待機してる彼女たちがざわついているが、光はともかく体内で得られる力は一度きり。
「うおおおおおおおおおおおおお!!!」
全身が光りまくる中、俺は水門に向かって思いきり突っ込んだ。呪われた水門はそこまで頑丈な門でもなく、俺の必死な体当たりによってあっさりと破られた。
――のだが、どこのどいつがかけた呪いかは知らないが、気づいた時には水門とそこに流れる川の水ごと消し去ってしまっていた。
「そうか、一帯が呪われていたわけか……ううむ、しかしこれは……」
レグロス城への道は開けたが、水門ごと吹き飛ばしてしまったのはどうやって説明すればいいんだ?
「おっさ~ん!! あはは、凄いぞおっさん!」
「うっ――おっ!?」
全身から眩い光を放っている俺に一番に文句を言ってくるのは聖女だと思っていたが、勢いよく走ってきた聖女アルマは俺をめがけて思い切り抱きついてきた。
「あははは! こんなに神々しい光を放つなんて、おっさんはあたしにとって神に違いねえ!! あんたに一生ついていく!」




