ユーメデシア領
第52章
ミルク王女は、ジュリエールが言った『広い目、強い心を持った女性』について、ずっと考えている。自分が、もしも、クランの様にジュリエールに認められたら、ダルマルの気持ちが、一番最初に理解できるのではないかと・・・。
「ダルマルは・・・、バカだから、わたくしの気持ちがわからない。でも、クランの様な女性になれば、わたくしは、ダルマルの気持ちがわかるのかしら・・・?」
「イイイーサンは、どう思う?」
「ーーーわたくしですか?わたくしには、ジュリエール様の言葉の意味が重すぎて、答えられません」
「大人でもわからないのに・・・、わたくしでは、わからないわ・・・」
ミルク王女は、その日から机に向かい空を見上げて、ダルマルが元気になって戻って来るのを、大人しく待っていた。
そんな状況が進む中、王都の国王陛下より、連絡があった。
クランの実家のあるユーメデシア領で、はやり病が流行り始めた。と、アイシン宰相に相談するような手紙が届いた。
「アイシン宰相の執務室には、お電話が付いています。当然ですが、王宮の国王陛下とは、すぐに繋がるようにしてあります」
「うん、大変な事にならない内に、どこかで食い止めたい。陛下と協議して、事をすすめよう。父上の部隊は、アンユン第1皇子の元に向かわれたのですか?」
「はい、ブラムスが訪れた日に出発して、アンユン皇子の元に集まっている残党たちの証拠を集め始めました」
「証拠が一つでも見るかった時は、素早く知らせてくれ。国王陛下の御意見を伺いたい」
「国王陛下は、既に、お心をお決めになっているのではないでしょうか?」
「それでも、やはり、ご自分の息子です。最後は、国王陛下に決めて頂きたいです」
「ダルマルはどうだ?」
「それが・・・、全然、発病しません」
「??????」
「マスクが、功をなしたのでしょうか?」
ミオは、考えて、ダルマルくらいの年齢の子供は、免疫力があって、病気に罹りにくいのかも?と思っていた。
「ダルマルは、きっと、誰よりも、今一番、体力があるのではないのでしょうか?なんだかんだ言っても、毎日の訓練は欠かしていませんし、食事は誰よりも取り、力仕事も進んで行います」
「それはそうだ。・・、」と、周りは納得し、
「後は、年齢によって重症化する恐れがあるのでは?」とミオは、さり気なく話す。
コメネルが、
「私も、そう思っていた所です。クランのお母様は、本当に辛い闘病で、兄のブラムスは、初期状況か、又は、軽症なのではないでしょうか?」
「ーーーそれでは、多くのお年寄りだけが、亡くなってしまいます」
「薬の方は、出来上がっていますか?」
「はい、アイシン様が、クミン国より持ち帰って下さった植物をここでも栽培していますので、今回は、その植物を使って、調合しています」
「ダルマルは、既に、その薬は飲んだの?」
「いいえ、本当に、健康そのものでして・・・・。生き生きと、毎日を過ごしています。私たちも彼を見習いたいくらいです」
その頃、アイシン宰相と国王陛下は、今後について話し合っていた。
「ヴァイオレット男爵の部下たちは、既に、大まかな事を調べ上げて、こちらに報告してくれてました。今回は、アイシン宰相やタクシンと、貴重な休暇だと言うのに、申し訳ないと、伝えてくれ」
「とんでもない大丈夫です。それでは、やはり、アンユン皇子の指示だったのでしょうか?」
「いいや、そうでもない。アンユンの周りが、今回は、勝手に動いた」
「奥様の方でしょうか?」
「イヤ、彼女は、最初から、アンユン皇子が、この国を継ぐことを嫌っていた。ーー彼女には、2人の娘がいるが、皇子は、誕生していない。二人目の時に、酷い難産で、これ以上の出産は、無理だと医者に言われていたらしい・・・」
「だから、彼女は、アンユンの元を離れて、現在は、王都の実家に戻って、娘二人と静かに暮らしていると、聞いていた。しかし、アンユン皇子は、私の最初の子供で、側近たちも、大いに期待して、子供の頃から育て上げたと言ってもいい。・・・彼ら周りの仕業だ」
「そっちの方は、ブーメン軍長が、指揮を執り、昨日の夜のうちに王都を出発して、オリザナダ領のヴァイオレット部隊と合流する事になっている」
「はい、今回は、父も、現地に向かう予定だと聞いています」
「問題は、ユーメデシア領の方だが・・・。まさか、一国の皇子の側近が、私利私欲の為に、病原菌を、ばら撒いたと、今は、言う訳にも行かないのが現状だ」
「はい、こちらでも研究を続けています。今回は、ダルマルが、一番先に、接触して、1週間の隔離に入ったのですが、まったく、症状が出ないのです」
「パンネルの考えでは、年齢の高い方の方が、重病になる確率が高いのではないかと・・。それで、先ずは、ダルマルに、祖母の元に薬を届けてもらい、少し様子を見て、その後、例の果物をもう一度届けてもらってから、その症状にあった医療を行って行きたいです」
「そうか、今回は、君たちに頼るしかない。すまない・・・。ミルクは、わがままを言っていないか?」
「いいえ、こちらに来てから、物凄く熱心に勉強されていると、ジュリエールからは聞いています」
「・・・どうしたのだろうか?」
「とにかく、年齢の若い者たちだけで、最初は、クランの実家に薬を届けさせます。適任は、やはりダルマルですが、ダルマルに手伝ってもらう事はよろしいでしょうか?」
「ああ、勿論、彼が納得してくれたら、彼に行って貰ってくれ。ご家族の方々の許可も必要にはなるだろう・・。一般人でまだ幼いのに、申し訳ない」
「はい、もちろん、クランの許可を得てから、さっそく、明日、ユーメデシア領に向かいます」
それから、アイシン宰相は、国王陛下の意向を、クランに話し、ダルマルを連れてユーメデシア領に向かった。
ミオは、自分の知識の限りをアイシン達に伝え、その菌を、今度は、タクシンの町に持ち込まない事にも注意を払うように助言した。
アイシン達は、ユーメデシア領の近くに一軒家を借り、ミオ達は、タクシンの町の外の森に、帰還後の隔離室の建設を始めた。
「ミオ、すまない。今度こそ、ゆっくりとこの町で過ごす予定が・・・、こんなことになってしまい・・、申し訳ない」
「いいえ、国民の命を守る事が、あなたのお仕事だと、知っています。ただ、お元気でおもどりください。マスクは絶対に外さないで、手は、アルコールで消毒して下さいね。外から戻ったら、必ず入浴して下さい。お願いします。大丈夫です。この危機は乗り越えられます」
ジュリエールは、ミオの言葉のすべてを信じて、防疫活動を指揮し、ミルク王女のメイド達も即席の衛生管理者となり、町の中を積極的に消毒する為に働き始めた。
「ダルマルが使っていた小屋は、10日後に、消毒に入りましょう。そして、もう一度、こちらの町に入る前に、ダルマルには、その小屋で、1週間の隔離生活を送ってもらいましょう」
「はい!」
アイシン宰相が、この町を出てから、この町は緊張に包まれ、今回は、ヴァイオレット男爵様も、残党狩りに出かけたので、警備は、手薄になった。
その代わりにと、近くの領土は、タクシンの町の外で、警備を協力して下さった。
「ミオ様、近隣のすべての領土から、応援が派遣され、タクシンの町は、今まで以上に守られています」
「ええ、地方には、地方の協力があります。皆さん、とても心配して下さって、本当に有難いです」
「しかし、それって、アンユン皇子の事が、バレていると言う事に、繋がりませんか?」
「やはり、噂は消すことはできませんね。・・・・ユーリア王妃やミルク王女の事を考えると、心が痛いです」




