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ジュリエール登場。

第10章

 数日前に、ミール夫人の妊娠を聞かされたアイシン男爵は、トハルト家令から新しいメイドを提案される。


 「晩さん会の件もそうですが、誰か信頼できる女性のメイドを、雇い入れた方がよろしいのではないでしょうか?」


 「その提案は、王都に着いてすぐに、ミオに話しました。一人くらいなら自分の給金でも雇えると、しかし、ミオはフィージアがいるからいいと、拒否された」


 「ーーー、同行していたメイドは、どうしたのでしょうか?」


 「お恥ずかしい話ですが、行方はいまだにわかりません。よほど綿密に、計画していたとしか思えないのです。エンも、私たちと同じに、ミオ様に助けれれた人間です。余程の事がない限り、裏切る事はないと、思っていました。ただ、彼女が育った場所で、大きな火事があったと報告があり、そこは、少し疑いを持っています」


 「・・・・・・」


 「エンの事もありますが、これから先、何かあった場合に、ミール夫人が王都に来れないとなると、私たちも少し不安です。・・・エレナミ夫人は、王都に来られる事は、どうでしょうか?」


 「母は、父の側を離れる事はしないでしょう。でも、大丈夫です。何かあったら、王都には、母の乳母が居ます。彼女は貴族社会のすべての事に精通していて、子育や、その他の事も適任です」


 「本当ですか?」


 「ええ、本当です。ただ、厳しい人で、ミオが辛い思いをするとしか思えず・・・。それが心配で、まだ、連絡していません」


 「・・・使用人なのに?」


 「ええ、あの母上さえ、頭が上がらない」


 「・・・・・・」


 そんな中、トナカリが、


 「男爵様、ジュリエールと言う、お年寄りが、男爵への面談を希望して訪ねて来ました」


 「え!! 」アイシン男爵は椅子から立ち上がり、慌てていた。


 トハルトは、今までにこんな動揺したアイシン男爵を、見たことがなかったので、その年配の女性が誰か直ぐにわかった。


 「ここでは、なんだ、サロンにお通しして下さい。すまないが、フィージア以外の誰かに、お茶を運ばせてくれ・・・」


 トハルト家令が、

 「わたくしがお持ちします」


 「うん。頼むよ」


 アイシン男爵は、ミオが好むサロンに、ジュリエールを通した。


 ドアを開けると、椅子に座った形跡も一切なく、背筋を伸ばし、髪をきっちり結い、メイドの様な格好をしているジュリエールがそこにいた。


 「久しぶりだね、ジュリエール」

 「お久しぶりです。坊ちゃんもお元気で何よりです」


 「良く、ここがわかったね」

 「はい、坊ちゃんに王都への命令を知り、どうにかこの場所を確保することが出来ました」


 「・・・道理で、他の人達より、王宮から離れていて、随分と広い屋敷だと思ったよ」


 「はい、その後は、遠くから、出しゃばらず、静かに見守る事がわたくしの使命だと思っていましたが、この度、王宮への招待には、いささか納得がいかず、少し調べてみました。


 トントン、

 「失礼します」


 トハルト家令が、お茶を持って来て、二人に淹れ始めた。

 「彼は、この屋敷の家令で、トハルト家令だ」

 「トハルトと申します」


 「ーーー坊ちゃん、メイドはいないのですか?」


 「う?いる。しかし、私の給金では、そんなには雇えない」

 「ええ・・・・。知っています」


 「話を続けてくれ、トハルトにも聞いてもらいたい」


 ジュリエールは少し戸惑ったが、話を始めた。


 「サージ宰相は、ご存じですか?」


 「ああ、遠くから見ただけだが、知っている」


 「サージ宰相の娘のリキュル嬢はご存じですか?」


 「イヤ、会った事もないが・・・」


 トハルトが、静かに耳打ちする。

 「宝石店に居ました」


 「そうなのか?」


 「そのリキュル嬢は、坊ちゃんにお熱を上げていて、どうにか、お二人を離縁させるおつもりです」


 「ええええ!!!! 離縁って、どうやって?」


 「そんな事、どうにでもなります。貴族社会ですから・・・」


 「ーーーそれは、困るな・・・。まさか、晩さん会が、そのような理由だとは思ってもみなかった」


 「わたくしもです」


 「後、国王は、今の隣国たちとの小競り合いをどうにかする為に、成果を出した皇子に王位を継承するつもりで、その為に国中の貴族の若者を集めました。浅はかな彼が、考えそうな事です」


 「ジュリエール! 」


 「ううん(咳)坊ちゃんが娶った女性は庶民の出身と聞きました。そして、大変、大人しい方だと聞いています。わたくしは、エレナミ様のご結婚に強く反対して、疎遠になった身です。だから、今回の坊ちゃんの結婚には、何もいいませんが、坊ちゃんが王宮で恥をかくことを望みません」


 「坊ちゃん、どうか、わたくしをこの屋敷に置いて下さい。お願いします。私も年を取り、60を過ぎました。年を取ると人間は丸くなります」


 「しかし、彼女は比較的おとなしい人で、体も弱く・・・ジュリエールに、耐えれるかわからない・・」


 「私に耐えられなくて、この王都の貴族社会では生きて行けません」


 「しかし、彼女は庶民で、夜会やお茶会などの貴族の集まりに、参加しなくていいし、参加させるつもりもない」


 「では、どうして、このように失礼極まりない招待状が、まかり通っているのですか?ご自身で考えましたか?」


 男爵は黙って返答していない。


 「坊ちゃん、女は、意外に肝が据わっています。奥様が、宝石店でケースごと買い物をしてから、殆んどの時間をこの屋敷で過ごしているのは、王都でも動向を見極めていると私は考えます。聞けば、王都門の外の商売も上手く回っているようです。身分は低くても、エレナミ様がお許しになった女性です。信じてあげて下さい」


 トハルト家令は、この光景をみて、年長者が若者に説いているように見えた。


 (彼女、本当に使用人なのだろうか・・・?)


 その後、庭で、フィージアが、ミオを髪を結う訓練をしながらお茶を飲み、読書をする所に、3人で、出向く。フィージアが丁度、髪を結い終わった時に、トハルト家令は話しかける。


 「ミオ様・・・」

 「トハルト、フィージアが今回は上手に出来ました」


 「ミオ、こちらは、母の乳母であるジュリエールだ。王宮での晩さん会に備えて、ミオとフィージアを指導してくれる」


 ミオは立ち上がり、挨拶をする。

 「こんにちは、ミオ・ヴァイオレットでございます。わざわざありがとうございます」


 「こちらこそ、よろしくお願いします。早速ですが、この髪型でご出席ですか?」


 「ドレスは選びましたか?」


 「はい、3点を思案中です」


 「ヴァイオレット家の男性は、大体、黒に紫、金が入った服装しか着ません。これからは、紫や青などを正装のドレスには、取り入れた方がよろしいでしょう」


 「はい、わたくしもそのように思っております」


 「メイドは、その子だけですね」

 「ええ、」


 ジュリエールは、フィージアの前に立ち、


 「フィージア、あなたのお姉さんは、あなたを王都門に入る前に逃がして、それから、自害しました。よっぽど、薄汚い年寄りに嫁ぎたくなかったのでしょう。しかし、私は、あなたのお姉さまを立派な女性だと思います。自分を守り、あなたを守りました。だから、これから先、お姉さまの事で、あなたを脅迫する人間は、いないハズです。わかりましたか?」


 フィージアは、大粒の涙を流し、そのまま座り込み、泣き崩れた。わかってはいたが、真実を知る勇気はなかったのだ。


 「ーーーお姉さま・・・」


 「それから、奥様の前のメイドですが、出身村を焼かれ、村人を守る為に裏切りましたが、結局は、亡くなったようです。殺されたか、自害したかは、わたくしにもわかりませんでした」


 「え!! 」


 さっそく爆弾二発!


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