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お父様、お母様、結婚したい。

第1章

 体がものすごく揺れている。粗悪な乗り物に乗っているの?馬車・・・か?


 「ミオ! ミオ! 大丈夫か?物凄く具合が悪そうで、息をしていないみたいだった。何か飲むか?水でもいい! 何か飲んでくれ!! ーー今、君の医師がやって来る。心配しなくていい・・・。大丈夫、大丈夫だから・・・」


 使用人のパンネルは医師、コメネルは薬剤師で、常にミオの健康管理を任されている。


 しかし、例え、お抱え医療機関があっても、今、この女性は亡くなったのだ。お気の毒に・・・。


 それにしても、無能な使用人達は、全員クビにしよう。


 でも、今、この人・・・私の名前を呼んでいた。それも随分と、気軽に、ミオ?ミオ王女とか、ミオ王妃とか・・身分を示す肩書きないの?わたし、今度は、どのような身分?


 まだ、はっきりしない記憶を探して、検索をかける。


 あるじによって、適当に転生を繰り返しているが、殆んどの場合が、王妃、皇后、王女、後の支配者、裏の支配者、それか、ナンバー2的な右腕、最悪は王室の5女もあったけど、今度は、のんびりと年を取った女王がいいな~~と、考えている間に、この女性の記憶が送り込まれて来た。


 ミオはガバッと起きて、「え!!! 庶民って・・、何?」


 その男性は、馬車に乗り込んできてから、ずっと、不思議そうな顔でミオを見ている。


 「元々、体が丈夫ではなく、風邪気味で、ずっと、誰とも会うのを、拒んでいたが、本当に、顔色が悪い・・本当に大丈夫ですか?」


 この人・・・、具合が悪い妻を、ずっと馬車に乗せて、殺したの?


 頭の中を整理してみる。


 「旦那様、結婚式の疲れと風邪気味で、具合が悪いので、このまま、私を寝かして下さい。決して起こさないで下さいね。パンネルとコメネルも不要です」


 「しかし、本当にそれが望みなのか?王都までの道のりは、厳しく長い道のりで大変だと思う、僕が、君の側についているよ」


 「でも、まだ、・・お互い、慣れていなくて、恥ずかしいです。パンネルが処方してくれて、コメネルが作ってくれた薬を飲みます」


 「それでは、薬は一度に飲まずに、馬車の揺れもあるから、時間を空けて飲んだ方がいいだろう。エンに伝えておくから、心配はいらない、食事はしっかりとって、温かくして、わがまま言わずに寝るんだよ」


 「わかりました、ありがとうございます」


 その後、どうやら死んだらしい。


 いつも一緒にいるエンは、医師たちの診察も、ミオ自身が拒んでいると伝え、その後、男爵には、

 「奥様の体調は落ち着きましたが、汚れたお顔を、男爵様にお見せしたくないと申されています」と報告し、姿を消した。


 そして、2日後、メイドのエンが、姿を消したと聞き、心配になったアイシン男爵はミオの馬車に様子を見に来た。『男爵! 遅い! すっごく! 遅い!!! 』


 しかし、この遅い! にも訳があって、結婚するまでに、彼女の事で理解出来た事は、物凄い偏食、裁縫は大の苦手、嘘はつかないが、一度締めたドアは、なかなか開かないと言う事だ。


 温厚で、頭のいい男爵も、この道中は、頭を抱え、ふたりの王都での生活に不安を覚えていたみたいだ。


 「旦那様、わたしのメイドのエンは、どこですか?」

 「それが、今日の朝から行方不明で、また、君がどんな無理を言ったのかと思い・・・」


 「それで、様子を見に来たのですね?」

 「・・・失礼だとは思ったが、心配で、すまない」


 「ーー旦那様、実は、物凄く、心細かったです。これからは、いつも、私の側に居て下さい」


 「では、こちらの馬車に移って、側にいるよ。すぐに、パンネルに診察してもらいなさい」


 「はい、王都までは、後、どれくらいですか?」


 「後半日で、着くと思う。僕も君も初めての王都での生活で、苦労をかけると思うけど、これから、病める時も、仲良く暮らせたらいいと思っている」


 ミオは、アイシン男爵の話を聞きながら、一度、死んだ体を復活する為に、もう一度、そのまま眠ってしまった。


 その時、このアイシン男爵の体温が伝わって来たのか、物凄く暖かいと感じた。そして、この男のにおいが好きで、安心できると思っていた。


 「王都に着いて、しばらくは、昔のミオを装わなければならない。庶民で、殺される程のわがまま娘が、男爵と結婚出来たのは・・金か?・・うん、金か?あああ・・眠い・・グー、やはり、金だ」


 ミオは夢の中で、ミオの両親と話している場面を検索する。


 「お父様、わたくし、決めました。アイシン男爵と結婚します! 運命と、出ています」


 「運命、運命です!! 」


 「ミオ、いくら私の可愛い娘だと言っても、庶民の金持ちの娘が、貴族の男爵とは、結婚は出来ない。それにアイシン男爵は、誠実で優しく、おまけに顔と頭が、良くて、この領土の中でも有名なお方だ」


 「貴族たちの間では、それは、それは、競争率が高く、誰もが、結婚させてたい、結婚したいと、思われている人物なんだぞ。・・・絶対、庶民の娘との縁談は、断るだろう! 」


 「しかし、お父様は知っていますか?彼のお父上は、今、重いご病気です。ここのオリザナダ領の領主様は、お父様に領土の半分も売ってしまった、ろくでなしですが、反対に、男爵は、その優秀さが王都まで届き、王宮からの呼び出しが来ているのですよ」


 「ーーお前、良く知っているな?」

 「ええ、彼らからの情報です」


 「お父様、ここからが大事な所です。ヴァイオレット家は、今、お父様がご病気になって、お金がありません。元々、男爵で、給金は少なく、嫡男のアイシン男爵も、本を書くアルバイトをしたりしていました。だから、王宮に呼ばれても、王都までの行く資金が無いらしいですよ」


 「なんと、それはお気の毒に・・・」


 「お父様は、金儲けの才能が有りますが、少しお人好しな所があります」


 「ミオ、それは、どういう意味だ?褒めているのか?」


 「違います。いえ、そういう所は大好きですが、我が家はお金が沢山あって、ヴァイオレット家は、お金がなく、今、国王の命令にも従えません」


 「だから?」


 「だから、わたくしがお嫁に行きます」


 「しかし、お前、まだ、17歳で、結婚は18歳以上でなければならない」


 「わたくしは後1ケ月で18歳。そして、1ケ月後には、アイシン男爵は王都に出向かなくてはなりません。お父様、お願いです。わたくし、18歳の誕生日にアイシン男爵と結婚したいです。お願い! 」


 「う~~ん、お母様と相談してみるが、お相手の気持ちもあるだろうから・・なんとも言えないな・・・」


 その夜、常識のある優しいお母様が、参上して、ミオに話す。


 「ミオ、あなた、18歳の誕生祝いに、とんでもない物をお父様にねだったのね。まったく・・。どうしてこんなに、わがままなの?」


 「ーーーお母様は反対なの?」


 「ミオ、あなたは、まだお嫁に行く前に、覚えなくてはいけない事が山のようにあるのよ。貴族社会に入ったら、それこそ恥をかくのはあなたよ。絶対に、無理に決まっているでしょう! 」

 「貴族社会なんて、どうにでもなるわ。私、どうしてもアイシン男爵と結婚したいの!! お願い、本当に、ーーーこれが最後のお願いだから・・」


 「ミオ・・、お父様とお母様を捨てて、アイシン男爵と一緒に王都に行きたいの?」


 「お母様・・・その質問、ズルい。でも、私、ここには、友達もいないし、その内、誰かと結婚して、その人は、この金持ちの家を継ぐのだろうけど、その人は、お父様や、お母様以上に、私を大切にしてくれると思う?ーーーーこれからも、プラスムス家は安泰なの?」


 「私は、そう思わない」


 「それは・・・、お母様にもわからないけど・・・。ミオ・・」


 「それなら、初めて、好きなだと思った人と、結婚したい。丁度いい具合に、彼も困っているし・・運命だから・・! 」


 「そんな運命が欲しいの?・・・人の弱みにつけ込む運命って・・・」


 「でも、今、手を差し伸べないと、ヴァイオレット男爵は亡くなってしまうのよ」


 「それなら、ヴァイオレット家を援助をするだけでいいのでは?」


 「お母様、お母様も、お父様と一緒で、人が好過ぎます。何の名目で、貴族の家を、庶民の家が援助するのですか?それこそ、名誉を汚したとか言って、国に、殺されます」


 「・・強制的にあなたを娶るように仕向けた方が、罪は重いと思うけど?」


 「でも、これは、対等な取引で、今後の私達家族にも、いい事で、彼も、命令に背き、このまま王都に向かわないで、お父様の死を待つのは、お辛いと思います。お母様、この道しかないのです」


 

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