あの視線の理由
春ですね花粉しんどい。
あったかくなりましたね花粉しんどい。
そろそろ暖房も不要になりますね花粉しんどい。
使い捨てマスク売ってないのでなんとか布マスクを購入しました花粉しんどい。
これでなんとか凌げそう…アレルギーなんで結局は花粉はしんどい。りばお。
…
『おい!しっかりしろ!!!』
向こうで胸元をぐわしと掴み、容態を確認するルギくんさておき、俺も武器を握りしめたまま地面に伏してる男の様子を見てみる。
短く切られた金髪混じりの黒髪に赤い肌は間違い無くルギくんの言ってた通りの鬼人族の男性だが、その特徴的でもある筋肉隆々の身体には目立った外傷は見当たらない。
周りを見るに戦闘があった筈だけど……まぁとりあえず息はあるから死んではいないみたいね。
横になった彼の口元に手を翳すと分かる、繰り返し当たる生暖かい息がそれを確かにしている。
しかし、不思議だ。どうしてこんなに地面が荒々しく抉れているのに〝外傷が浅い切り傷だけ〟しかない?
まさか毒か?いや、それならこの切り傷はおかしい。
毒を使うならこんなに所々切れていない〝切れ味の悪い〟刃物を使う理由が分からない。
『加虐趣味?いや、それならこんな軽傷な筈ねぇしな……おーい、ルギくん。とりあえずこの人達は生きてるみたいだから村の中へ──』
ちょいと引っかかる疑問はひとまず置いて、しっかりしろ!おらおら!と襟首を掴んでぶん回すルギくんを鎮めようとしたその時だった。
「──あんだよ?もう追手が来たのかぁ?」
軽薄そうな、それでいて〝嫌なトーン〟の声が足音と共に村の中から聞こえて来た。
『お前…!』
「ああん?ガキがまだ居たのかぁ?……おぉい、なんだよ。あの時〝逃げ出した奴隷のガキ〟じゃねぇかぁ?」
鼻にかかった、それでいて人を小馬鹿にしたような声が思わず反応したであろうルギくんへと向けられる。
ああ、コイツが……例の奴隷商の一人か。
『なんでお前がここにいるッ!!村に何をしに来た!!!』
「ああ?相変わらず何言ってんのか分からねぇな……翻訳魔道具起動──っと」
褪せた茶色のフードからはみ出した、少し長めの、薄汚れた金髪。
服は少し汚れているがしっかりとした作りのその姿は──なるほど、元冒険者といった感じか。
薄汚れた金髪の男は左耳にぶら下がる小さな空色の魔跡玉が嵌め込まれたピアスに手を翳す。
朧げに光りだす魔道具の効果を感じたのか、ニィと嫌な笑みを浮かべて再び口を開く。
「ああよし、これで〝分かる〟ようになった。あんときのガキがここにいる理由は何となく分かる……で?そこのガタイの良い奴はなんだ?見た所ギルド関係者にも見えねぇが……痛いのが嫌ならさっさと消えな」
「悪りぃがそうはいかねぇな。お前、奴隷商だろ?話しはその子からも聞いてる。その子に頼まれた用事もあるんでな。無駄足にされちゃあたまんねぇよ」
我ながら良く言えた物だ。
争い事は嫌な性格だが思いの他すらすらと言葉が出てきた自分に少し驚いた。
どうやら思いの他ムカついてるらしい。
「じゃあ力ずくで大人しくして貰うしかねぇなぁ?その争い事には向いてなさそうなツラで何処まで出来るもんか試してやるよ」
へらへらと下卑た笑みを浮かべながら金髪の男が左腰にぶら下げた小剣を抜く。
あたかも余裕のある表情。
にゃろう…完全に見下してやがる。
『ルギくん、コイツは俺が引き受ける。後で追い付くから先に行ってろ。爺さんの所へ早く行ってやれ。シラタマ、ルギくんの護衛を頼む。いざとなったら重力でぶっ潰せ』
「ふにゅっ!」
がってんしょうち!と良い返事をしながらルギくんの頭の上へと飛び乗るシラタマ。
シラタマが居ればルギくんは大丈夫だろう。
もし、他の奴らが居たとしてもなんとかなる筈だ。
「おいおい、逃すかと思ってんか?テメェ如き──このオレ様が止められるかよッ!!」
刹那、金髪の男がルギくんへと小剣を振りかざし、距離を詰めた。
その突然の出来事にルギくんは身動きは出来る筈もない。
だが──させるかよ。
距離は金髪の男の方が近い。
ムカつきと共に練り上げ済みの身体の状態は下半身へと気を巡らせ、地面を抉る程の衝撃をその場に伝えた──瞬動。
「──ッチィ!テメェいつの間に!!?」
ルギくんの身体に触れる前に俺の右手は金髪の男の手首をガッチリと掴んでいた。
ビタリと勢いを止められたその腕はそれ以上動く筈もない。動かす理由もない。
『さぁ早く行けルギくん。今は〝優先すべき理由〟があるんだろ』
『──ッ!!頼んだ兄ちゃん!!』
何かを思い出したように一瞬だけ狼狽え、そして俺へと叫んでルギくんは村の中へと走り出した。
ああ、そうだ。〝今〟は俺が代わりにコイツをぶん殴っておく。
目的の大事な爺さんを忘れるんじゃねぇぞ。
「身体強化ッ──がぁ!!」
「おっと」
ビリビリと服を破り、無理矢理俺の拘束から逃れ、距離を取る金髪の男。
流石に服の上からじゃあ逃げられるか。
「……テメェ…なんつー馬鹿力だ。…あーあ、クソッ!折角ミスをチャラに出来るチャンスだったのによ!ぜってぇ許さねぇからな!!ぶっ殺してやる!!」
「許さねぇのはこっちの方だこのクズ野郎。子どもに手をあげるおめーには奴隷の身分さえやれねぇよ。俺はおめーが嫌いだ」
声の種類で何となく嫌な人って思う時があるのは俺だけだろうか。
俺にはある。そしてその場合は大体が合わない。
こちらが普通に接したとしても後々「ああ、この人は無理だ」と思う時がほぼ〝来る〟。
奴隷商にも比較的まともな奴は居るだろう。
ここは異世界だ。奴隷にならなければいけなかった人、そして奴隷商にならざるを得なかった人は居る筈だ。
しかし──なったからと言って人を好き放題に出来ると思ってる奴なんざ最早──〝人間じゃない〟。
「はぁっ?何言ってんだテメェはよぉ!ここは異世界だぜぇ!?何でも出来るに決まってんだろうが!!」
フードを外し、金髪の男が吠えるように続ける。
「何でもやったぜぇ?【能力】を使って好き放題に女を貪ったりガキをぼこぼこにしたり雑魚から金を巻き上げたりなぁ!!まぁ、おかげでギルドからは追放されたがなぁ……」
「そういう事か……俺がこの世界に来てからの他の人達からの何処か怪訝な視線は」
ほんと…何処の世界、仕事、種族、人種にもあるもんだな。
たった数人がやる悪行のせいで際立つ──レッテルはよ。
「決めた。おめーはぶっ潰す。とことんまでぶっ潰す」
右手の人差し指を男の顔面へと伸ばし、指し示す。
その俺の挑戦的な行動に反応した金髪の男の眉間に血管が浮いた。
「ああ?こっちのセリフだぁ優男。ぶっ殺してやるッ!!!」
金髪の男が俺へと向かって小剣を携え、駆け出す。
ああ、やってやるよ──そのクソみてぇな思考諸共ぶっ潰すッ!!!
…
カナタ
「俺を置いて先に───」
ルギ
「もうやめて不吉なフラグは立ちまくりよッ!!」
シラタマ
「にゅあー?」




