第543話【ゼクードVSアグリス】
紅いオーラを全身から発するアグリスは大口を開けた。
なんだ? と思ったのも束の間。
アグリスの口内が光ったと思うと、次の瞬間には血のように紅い灼熱のブレスが吐かれた。
「いっ!?」
『ちっ!』
ゼクードとナイトはそれぞれ左右に避けた。
しかしアグリスのブレスの射程は長く、遥か遠くの山に直撃して爆砕した。
いつかのセレンのブレスとは桁違いに広範囲で超射程のブレスは避けたゼクードとナイトを優に巻き込んだ。
「うわあああああああ!」
『くそっ! なんて広さだ! ぐあああああああ!』
お互いに吹き飛び、ゼクードに至ってはオリハルコンの鎧が熱で溶けて皮膚にへばりついてきた。
「ぐあああああああああ! 熱っ! く、くそおおおおっ! ああああああああ!」
皮膚が焼ける激痛にゼクードはもがき苦しんだ。
鎧が赤熱して形を歪にしていく。
ブレスが止んだかと思うと、のたうち回っている間にアグリスに腹を踏まれた。
ガンッ!
「ぐっ!」
「アンタいったいドレスに何をしたのよ! アンタのせいでドレスが死んだ! 全部アンタのせいで!」
怒り狂い、そして泣き叫びながらアグリスは爪をゼクードの肩に突き刺した。
「ぐあっ!」
「アンタが死ねば良かったのに!」
突き刺した爪を紅く光らせ爆発!
肉片が飛び散り、ゼクードの左腕が吹き飛んだ。
「がああぁあああああああああああああああああ!?」
気が飛かける痛み。
耳元での爆裂音で鼓膜がやられ、全ての感覚が遠くなる。
しかしセレンの血がそれをすぐに修復していく。
「なんでドレスが死ななきゃいけないのよ! アンタが死ねば良かったのに! アンタさえ! アンタのせいよ! 全部! 全部! 全部!! 全部!!! アンタの!!!!」
「勝手なことばかり言ってんじゃねぇええええええ!」
ゼクードは右手に持っていた長剣をアグリスに突き刺した。
しかしその長剣の一撃はただの打撃となりアグリスを後ろへ吹き飛ばすだけに終わった。
長剣も先程のブレスの熱で刃が溶けて変形してしまっていた。
歪なブレードは斬れ味を無くしている。
鎧も皮膚と一体化してしまい、動くごとに激痛が走る。
「元はと言えばお前らディアマード家のせいだろうが! 勝手に心臓を入れて、勝手に地元でふんぞり返ってりゃ良かったのに! ドラグーンだの新人類だの! エルガンディに来るから!」
「それを受け入れなかったアンタたちが!」
「ふざけるな!」
失った左腕を再生させたゼクードは長剣を両手持ちにしてアグリスに接近する。
アグリスに近づくにつれ熱が高くなり皮膚を焼いていく。
アグリスに近づくだけで全身が火傷だらけになっていく。
それらを堪えながら構わず突っ込み一撃をアグリスの顔面に叩き込んだ。
吹き飛んだアグリスは地面を転げ回り、すぐに受け身をとって態勢を整えた。
しかし次の瞬間ナイトが背後を取っていた!
ナイトの爪がアグリスの身体を真っ二つにする。
『終わりだ』
「……私とゼクードの間に入らないで」
『!?』
アグリスは真っ二つにされたのに堪えた様子がなかった。
それどころか先程の顔面にくらった一撃も意に介してない。
そしてナイトによって切り裂かれた身体は炎によって瞬時に再生した。
「『エクスプロード・メギド』」
アグリスが唱え、それは裏拳による一撃と共に放たれた。
ナイトはアグリスの裏拳をモロにくらい、追撃で魔法の大爆発を受ける。
吹き飛んだナイトは全身から黒煙を上げて地面に倒れた。
「ナイトッ!」
ナイトから返事はない。
ピクリとも動かない。
一撃でダウンしてしまった。
リィの歌で強化されたナイトが一撃で。
「ナイト! おい! 嘘だろ! ナイト!」
さすがに信じられないゼクードは何度も叫んだ。
だがナイトは復活しない。
迫りくるのはアグリスのみ。
接近されるとまた熱で皮膚が焼けていく。
皮膚と一体化した鎧が赤熱して全身に激痛が走る。
「ぐぅっ! ぁぁ……っ!」
「辛そうねゼクード。でも私はアンタの百倍は辛いのよ! アンタさえいなければドレスは!」
「そうかい。だったらあの時の自分を恨むんだな」
「……なんですって?」
「一人で行動できないからって俺を助けたな? お前の無能さが招いた結果さ。ざまぁ見ろってな!」
「このっ! 言わせておけばあああああああああ!!」




