コード・スタッカート(3)
狭く、暗い、時折血もついている通路を進んでいく。時折ライトが点滅したり、消えたりもする。その風景にデジャヴ。
その廃墟を抜けた後には――やはり見たことがあるような指令室が広がっていた。
「君たちがあの兵器か――」
中にいた男が口を開く。
「黙れ。この施設はなんだ?」
「まさか、自分と同じものに出会えるとはねぇ」
雰囲気が、暗く、重く、冷たく。常軌を逸した物を感じさせる、その冷酷さ。
戦場の空気が張り詰める――そして、張り詰めた瞬間。
「実力はどうかなぁ――?」
愉悦。余裕。それを含んだ笑み。再び、戦闘が開始される。
「ちいっ!」
「甘い。こんなものか?」
ディーヴァの大剣が弾かれ、その切っ先が、銃弾を割る。
分が悪い。明らかに戦いに慣れている。しかも、多大戦に。
迫る刃を、受け止める。
「へえ。一応は見えていたか。だけど、遅い――余りにも、ね」
力を受け流され、前につんのめる。だが。
「読んでいたさ――」
言葉を切り、背中に向けて振るわれる剣を見ずに躱す。
「貴様は、ギアか。それも――俺らより一つ前の世代の、な」
「面白い。だが、少し隙があるようだな、アヴァランチ?」
衝撃が、動揺を生む。だが、当然。俺たちは、名前で呼び合っていたのだから。
しかしこの男。異様に強い。ギアといっても、マスターの様に情報収集に特化したのではなく、戦闘能力にすべてが注がれている。第一世代というのは、一つのみを強化していたはず。だから――戦闘となれば、その差は明らかになる。そして思う。
――この男は、戦いを生む、と。
その性能が問題ではない。その歪んだ感情がそうするのだと思った。
「ふーん、そうか。君たちでは、どうやら俺には勝てないようだ。降伏するかい?それとも――」
「ほざけ。俺たちに、降伏の二文字はない。貴様を特一級警戒人物に特定した。なぁ、この戦いを引き起こした張本人!」
「その言われは、あまり好きじゃないなぁ。俺の行動は――マスターからの指示だからな」
そういうなり、奴は加速。肉薄する。だが甘い――いや、陽動。
「余裕は、どこにいった?」
投げナイフを用いて、軌道をずらし、刀を振り下ろす。
血が噴き出す。
「そうか――今回はこの程度にしておくよ」
それは、虚空から聞こえた。
「てめえぇっ!」
ディーヴァが、吠える。だが、彼は、去っていった。スラスターを、吹かして。
納得はいかないが、とりあえず、当分の危機は去った。
――ここからは、俺たちのターンだ。




