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「今日は私がおごってあげるから何も言わずに私のおすすめを食べるように」
「着いてきたのミスったかな・・・」
ここの学食は食券制らしく、陽菜は券売機にお金を入れると同じものを2つ買う。
冬夜の位置からは何を買ったかよく見えなかった。
別々のものを買われたら何が出てくるか怖くて仕方がないが、同じものを買っているので食べれないものでは無いだろうと安心はしている。
「じゃあ取ってくるから冬夜は席でも探してて」
「了解」
席を探せと言われているが、現在は春休み。
どこでも選び放題な状態だ。
冬夜は受け渡しのカウンターから一番近いところに席を取って陽菜を待つ。
「あー。疲れた……」
ここまで色々なことがあったので、バタバタしていたがようやく一息つくことが出来た。
姉を探しに魔術学園まで来たかと思ったら、幼馴染を見つけて、更にはお勉強までさせられたのだ。
疲れていてもおかしくはない。
「おまたせ冬夜」
「お、早かったじゃ……ってお前頑張りすぎだろ!」
「大丈夫よ。こぼしてないもの」
陽菜は器用にお盆を2つ持って来ていた。
お盆に乗っているものは蕎麦に見える。ここまで全くこぼさずに持ってきたのには冬夜も驚きを隠せない。
「と言うか蕎麦かよ。なんかもっと学食特有のものを食べてみたかった気もするけど」
「まぁまぁ、騙されたと思って食べてみなさい」
冬夜はこれだけ大きな学園の学食のおすすめなので、実はもっと派手なものを期待していたが、おごってもらっている身なので強くは言えない。
見た目はどこにでもあるような蕎麦ではある。とりあえず一口食べてみる。
「あれ?意外とうまいぞ」
「普通の学食だって思ってたでしょ?」
冬夜のその言葉に陽菜はなぜか勝ち誇った態度だ。
二人はそのまま世間話をして食事を終える。
「そういえば冬夜は真冬さんに呼ばれたから来たんだっけ?」
「ん?そうだけどそれがどうかしたか?」
食後に落ち着いてお茶を飲んでいたら唐突にそんな事を聞いてきた。
「その手段が手紙だったのよね?」
「そうらしいな。俺はそれを見てないからよくわからないけど」
陽菜は両手で持ったお茶を眺めながら注意深く聞いてくる。
その様子に違和感を覚えながらも特に気に留めることなく答えていく。
「そう……それ本当に真冬さんからだったの?」
「え?何言ってんだよ陽菜?」
ごめんなさいとだけつぶやくと陽菜は一気にお茶を飲み、勢いよく立ち上がると切り替えたのかいつものテンションに戻って話し出す。
「さ、冬夜そろそろ戻りましょ!」
「あ、ああ。そうだな」
冬夜はおいてかれるわけには行かないので、急いでお茶を飲むと陽菜を追いかける。