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「え?な、何をだよ」
彼女の言葉に戸惑う冬夜をよそにロゼは再び蹴りを放つ。
それは先程と同じコース。同じ速度だ。
当然だがそれは同じく弾かれて終わった。
これになんの意味があるのかそんなことを考えていた自分を冬夜は激しく恨む。
気づいた時には既に遅かった。弾いた反対側の側頭部へ彼女の踵が突き刺さる。
正確には咄嗟に手を入れガードをする事はできたのだが、受け切る事はできずそのまま地面を転がる。
しかし、今回はただ転がるだけではない。
もちろん痛みもある。正直このまま転がっていく方が楽なのはわかる。
だが、冬夜は転がされた勢いを活かし、体制を立て直す。
少し距離は空いたがそのおかげもあり、次の攻撃は確実に躱せる自身があった。
「いってぇ!!!さっきからなんなんだよ!」
「これは驚いた。ガードが入るとは思ったがまさか起きてくるとはな。
頑張ったご褒美として良いことを教えてやろう。私は別に手など抜いていない。」
彼女の言いたいことがようやくわかった。
言われた言葉をそのまま信じるならば、ロゼの動きが遅いのではなく冬夜の反応が早かったのだ。
「え?じゃあ俺が急激に強くなったでも言うのかよ」
「そうだと言っているんだ。私の血はどんな健康ドリンクよりも効果があるからな」
まぁ時間制限付きだがと彼女の言葉は続く。
どうやら血を飲んだことにより一時的に身体能力が上がっているようだ。
要はドーピングということらしい。
だがそれでも謎は残る。
最後の攻撃はドーピングされた状態でも反応することができなかったのだ。
「俺は今ドーピングされた状態なんだろ?
それでも今の攻撃は見きれなかったんだけど……」
「大人気なくちょっと本気を出してしまったからな。
流石にガードされたのはショックだったがな」
今のが彼女の本気だったということらしい。
そのおかげもありわかったことがある。
確かに今の冬夜は今までとは違う。確実に身体能力が上がっているのだ。