案件 死に目②
俺は、今西さんの家で朝から晩まで、正確には今西さんが仕事から帰ってくるまで、詰めることになった。朝コンビニ弁当を買い、今西さんの家へ向かう。だんだんと犬と猫も俺に慣れてきたようだ。犬は相変わらず寝てばかりだが、猫は俺にすり寄るようになってきた。しかし、猫が知らせてくれるとは、どうやってだろうか。俺はわからないながらも、犬と猫(太郎と桜という名前だそうだ)と一緒に過ごした。
「太郎、桜、おはよう」
俺は犬と猫に挨拶するようになっていた。
そして、今西さんの家に詰めて十日後だった。いつものようにリビングで寄り添っていた二匹を眺めていると、猫が鳴き始めた。
「みゃ、みゃ、みゃ」
何だ?まさか……。俺は桜に近寄って聞いた。
「桜、太郎の容態が良くないのか?」
「みゃ」
猫は短く答えた。太郎の様子を見ると、相変わらず寝たままだ。しかし、「猫が教えてくれる」という今西さんの言葉。俺は今西さんの携帯電話に電話した。
『はい、今西です』
「河田です」
『河田さん!?何か異変が!?』
「ええ、太郎君は相変わらず寝たままなのですが、桜ちゃんが鳴くんです」
『わかりました。すぐに帰りますので、そのまま様子を見てていただけますか?』
「はい」
今西さんと短いやりとりをしていたら、いつの間にか桜が俺の近くにいた。
「桜、どうした?」
桜は俺を見上げると、太郎の横へ行き、太郎に寄り添った。初めてここに来た時と同じ光景。優しく温かな光景。俺は桜と太郎に近づいた。太郎に触ると、まだ心臓は動いている。俺はほっとし、それと同時に激しい不安に駆られた。この優しい光景が無くなってしまうのか?俺は心臓をぎゅっと掴まれたような気がした。今西さん、間に合ってくれ!
ガチャ
「太郎!桜!」
俺が電話してから一時間後、今西さんが家に駆けこんできた。そのまま太郎のところへ直行した。
「太郎、帰ってきたよ」
そっと愛おしげに太郎を撫でる今西さん。
「みゃ、みゃ、みゃ」
「太郎!太郎!」
一瞬だけのふれあい。今西さんは、太郎をそっと抱きしめた。まるで今西さんが帰ってくるのを待っていたようだ。俺は、たまらず今西さんの家を出た。あの空間に、俺がいてはいけないと思ったからだ。
たったの十日。それでも、随分と情が移っていたようだ。生き物の生き死ににも係わらなければいけないのか……。便利屋って辛いな。俺は、今西さんの家から帰る途中に寄ったコンビニで酒を買い、それを飲みながら思った。
数日後。
ピンポーン
「はい」
「河田さん、手伝いにきましたよー」
「石川さん……」
「河田さん、ずっとどこに行ってたんですか?何回か来たんですよ」
「……ああ、仕事だよ」
「何か手伝えることありますか?」
「……石川さん、正式にうちのバイトになる?」
「えっ、本当ですか!?なります!」
「まあ、仕事がいつもあるわけじゃないから、その都度ってことになるけど」
「それでもいいです!」
やっぱりバイトの一人もいないと、俺が家を空けた時に困るからな。
そして、便利屋の仕事は続いていく。




