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ガルディナ王国興国記  作者: 桜木 海斗(桜朔)
第三章 国の土台と基礎固め
29/153

問題の最適解

そう言えばこの作品、タグに「ハーレム」とかついてますが、それは作者本人ですら忘れていました。


そんな要素も出せたらな、とは思うのですが、まぁ、随分先の話になるでしょう。ゲオルグがまずは国作りに専心したい性格なので・・・

「ゲオルグ様、大変申し訳ありませんが、期日を延ばしていただけないでしょうか?」


翌日、ゲオルグたちが泊まっていた宿で少し早めの夕食を摂っていたいた時のことである。


「いくつか聞きたいことはあるが………まず、なぜ俺たちがここにいると?」


ゲオルグが今日購入したばかりのハンカチで口を拭きながら問う。


「そこはそれ、我が商会も多くの耳目を持っているということです」


「なるほど、この街で悪事はできんな。それ即ち、お前に弱味を握られるという事か」


「まさか、そんなことは致しません。ただ商人として市場調査と住民の噂や行動には敏感でなくてはならない、というだけのことです」


「………まぁいいが。それより、期限の延長だったか。一体何があった?」


「それが……此度の亜人集めを聞いたハルミット教の連中が、これはよからぬことを起こす気ではと、この街の教会から領主に話を持ち込んだようで………その、我々の動向を探っているようで………」


「ほう」


ハルミット教。獣人を人間と動物の間の過ちで産まれた罪と言い、エルフやドワーフを人間になり損ねた劣等種とのたまっている、全ての元凶(余談だが、獣人と同じく人間と竜と言う二つの種族の特徴を併せ持つドラグニルに関しては、人間と竜の間に産まれたものではなく、竜が人間に姿を変えていると考えているそうだ。かつて時の人となった聖人でも、ドラグニルを敵に回す度胸はなかったらしい)。思わず、ゲオルグの目が細められた。


「事を穏やかに、且つゲオルグ様の事が露呈せぬようするには、時間を掛け慎重に動かねばと………」


「………どれほど掛かる」


「最低でも一月………」


「話にならんな………」


そんな悠長にしている余裕はないのだ。それに、時間を掛ければそれだけそいつらが直接的に干渉してくる可能性も増してくる。そんな無用なリスクは避けねばならない。だが、この問題を速やかに解決するには、教会か領主、どちらか片方だけでも上手く片付ける必要がある。だが、無用な騒ぎも起こしたくはないのも事実。となると、直接圧力を以て交渉するのが一番手っ取り早い。幸いにして、ゲオルグは存在そのものが十分な圧力であり、目的を果たすためならばそれを使う事を躊躇いはしない。問題は、どちらと交渉するかだ。


「………糞宗教家なんぞは論外として………領主か。そうだな、この街の領主を知っているか?」


「?………えぇ、何度か取引をさせて頂いております」


「名前と性格を詳しく頼む。それと、そいつを取り巻く環境もだ」


ゲオルグがそこまで言うと、エドもなんとなく察したらしく、問いに答える。


「この街の領主は名をレイモンド・クルーウェル・グレフェンベルグと言います。王国よりクルーウェル伯の爵位を賜り、対帝国戦では重要な補給拠点となるこのニデアを預かる程度には優秀な男です。この街の南部には穀倉地帯があり、そこの管理も任されております。性格は無難の一言ですな、リスクを極端に嫌います。今回の一件も、影響力の強い教会との関係悪化を避ける為に一応の協力を見せている、と言う表現が正しいでしょう。何かあっても自分に責任が回らぬよう苦心するのは得意なのです」


「つまり、保身の上手い、並み以上には優秀な文官、と言ったところか」


「はい、ついでに言えば、長いものに巻かれることを嫌がりません。自分に不利益を与える者には苛烈にもなりますが、その逆ならば、或いはどう逆立ちしても抗えぬ相手には膝を屈し己を差し出すことをいとわないでしょう」


「成る程、その辺りの機微も察することは出来るか」


「えぇ、弱者に冷たいと言うことは有りませんが、無闇に強者に逆らうような気概もありません。事なかれ主義とでも言いましょうか。あくまでも文官として、平時の為政者としては有能でしょうが」


「ふむ………要約すると、教会よりも強い圧力を以て干渉すれば、簡単に膝を折る、どころか、場合によっては協力的になる可能性もある、と言うことだな?」


ゲオルグがかなり直接的表現で切り出すと、もう完全に察した様子のエドは力強く頷いた。


「そうですな、例えば王家、公爵、国家の重鎮、或いは教会ですら恐れ敬うドラグニルなどであれば、そうなりましょう」


そう、意味深な笑みを浮かべながら返した。


「成る程、そうそう出会える相手ではないな」


「えぇ、故に簡単に屈するでしょうな、万が一、そんな存在に圧力など掛けられれば」


「そうかそうか………ところで、領主の館は街の南部にある一番大きな建物で合っているか?」


「はい、ついでに言えば、この時間ならば恐らくそこに居るでしょうな。領主様は気が小さく、毒味も満足に出来ぬ外食はお嫌いです」


「そうか、居るか」


「居りますでしょう」


思わず吹き出す二人、横に居るフェリスは話についていけないと早々に判断し、黙々と食事を続けていた。


「エド」


「はい」


「全て予定通りにやってくれ、期日の延長は現段階では認めない」


「承りましてございます」


「フェリス」


「ふぁに?」(口に料理が入っている)


「しばらく空ける、先に部屋で休んでいてくれ」


「ん………はぁ、分かった。早く帰ってきてね」


「あぁ、そう時間は掛からんさ。さて、ではエド、俺は急用を思い出したので、そちらに向かう。商品の件、しっかり頼むぞ?」


「承知、では私もこれにて」


席を立ち外へ向かう二人の顔には、似たような表情が浮かんでいる。


「………………悪そうな顔だなぁ」


一人残されたフェリスが呟いたその台詞は、徐々に増え始めた夕食目当ての客のざわめきに掻き消された。

な・・・なんとか毎日更新が続いてる・・・


作者の睡眠時間は日々減少傾向にありますが・・・

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