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ガルディナ王国興国記  作者: 桜木 海斗(桜朔)
第二章 建国へ向け
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それは暖かな日溜まりのように

ほのぼの回でございます

あの大きな出来事があった日から、今日で2週間になる。


「今日もお願いします、ゲオルグ様!!」


「あっ!?リーシェずるい!!一昨日もやって貰ってたじゃない!!」


「へっへ~ん、早い者勝ちだもんね~。ね?ゲオルグ様?」


「まぁ、ほどほどにな。喧嘩くらいなら構わないが、普段はちゃんと仲良くしてくれよ?」


今、ゲオルグがどんな状況にあるのかと言うと、くしを持った狼人族の少女リーシェに、その櫛を差し出されながら満面の笑みを浮かべられ、それを見ていた兎人族の少女が抗議をし、他にも数多いる獣人から生暖かい視線を向けられているところだ。


あの日、獣人達に家を与え、食事を摂らせてゆっくり休息してもらい。翌日から日のあるうちは学校モドキでまずは文字から教えている。紙はまだ上手く製造できていないため、四角い木枠の中に細やかな砂を敷き詰め、そこに書いて貰っている(ゲオルグは土魔法による整形と風魔法を駆使して空中に描いている。また、教室の後ろにも大きく彫ってある)。


紙はバナナに似た木があったので、その茎を上手く使って和紙のような物を作れないか試行錯誤中であり、またチョークも製造しようと色々試している。石灰も湖に存在したので、何種類かの貝殻を粉末にし水で混ぜ合わせるところまでは出来たが、のりとなる物を未だ上手く作れず苦戦している。


後世に残せる物を、そう思うと、中々難しいものだ。


そして生徒である彼、彼女らの様子だが、どうやら勉強を学べるのが楽しくて仕方がないらしく、毎日のめり込むように励んでいる。結果的には予想以上のスピードで文字を覚えていき、一人のエルフの少女などはすでに数字を使った足し算まで教えているところだ。


<勉強が楽しい、か。俺には苦痛でしかなかったが。いや、小学校に入った時はそうでもなかったか?>


なんてことを考えてしまう。放っておくと火を明かりに使って夜にまで自主的に勉強しようとするため、それを厳しく戒めたこともあったくらいだ(ちなみ、火は中世のように鉄板と石を使って火花で枯葉などに着火するのだが、ゲオルグより彼らの方が余程上手かった)。数学に関してはまだ一人しか教えていないが、これは算用数字を用い教えている。この世界では未だに文字を使った計算が主流であり、桁が大きくなると書くのも読むのも計算自体も面倒なためだ。


しかし、健康的な規則正しい生活をして貰いたいゲオルグとしては、勉強だけを楽しみとは思ってもらいたくはない。


そこで、体力作りも兼ねて何か運動を教えようと、つたなどで編み上げたボール、簡単なゴールポストとグラウンドを作り、サッカーを教えてみたところ、男子の間で目下大流行中である。昼の休憩時間などにボールの取り合いなどが発生するほどに(増産したのは言うまでもない)。ルールは大雑把なものしか知らなかったのだが、小難しいルールなど覚える時間があるなら文字を覚えて貰いたいので簡単な部分しか教えていない。


女子はと言うと、湖で水泳を教えてみようかと思ったが水着がないため断念(ちょっと惜しいことをした)、蔦であや取りや、花の王冠などの作り方を教えると、これらに喜んで食いついた。そして、その中で狼人族や兎人族の立派な尾が少々毛並みが悪いと気付き、木を削り出した櫛を作成、最初はゲオルグが手ずから使い方を教え(夢にまで見た初モフりである!!)、自分達でも出来るように指導もした。その後は勿論、尻尾と言わず髪のためにも全員分作って配った。


そして、どうにもゲオルグに尾を梳いて貰うのが気に入った何名かの狼人族や兎人族の者達が、今ではこうして、ゲオルグが一息ついている合間を見つけては頼みに来るのだ。


「じゃあリーシェ、こっちに」


「はい!」


ゲオルグがリーシェを招くと、リーシェはゲオルグの前に座り、その立派な尾をゲオルグの足に乗せる。


「お願いします!」


「ん、お願いされよう」


そう言って丁寧に櫛で梳くと、リーシェは段々と体の力が抜けていき、最後には地面であっても自分の腕を枕に寝はじめてしまうのだが、これもいつものこと、と言うより、ゲオルグがやってやると男女問わずこうなってしまう。


理由はよく分からないが、本人達曰く、究極的な安心感が得られる、だそうだ。


恐らくは本能的に、圧倒的強者の傍でそれに守られているという感覚が、緊張や危機感を和らげているのではないか、というのが持論である(おかげで最近は毎日モフれてゲオルグの精神衛生も素晴らしい状態である)


上機嫌に微笑みながら尾を梳くゲオルグと、安心しきって身を委ねるリーシェ、その姿はまさしく、親に守られている子のように映る。そして親兄弟から引き離されて生きてきた彼、彼女らにとってもそれは憧れに近い感情を抱くには十分なものであり、毛足の長い獣人以外の者、そう、エルフやドワーフでさえも、最近は髪を梳いてくれと頼むことは少なくない。そして、手が空いていれば決して断らないゲオルグの性格も相まって、この2週間で両者の間の溝はほとんど無くなっていた。


誰も不幸になることのない関係、まさに、理想の家族ではないかと、そう思うのだ。


「私も、あんな尻尾があったらなぁ…………」


そう、どこか悔しそうに呟く虎人族のフェリスも、夜はしっかり髪を梳いて貰っていたりする。そんな、最近のこの街の日常である。




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