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ソウルプラネット  作者: ボコしますわよ
プロローグ
1/6

0 終わり

初投稿です。よろしくお願いします。

広く暗い研究室を、1つのパソコンの光が青緑色にあたりを照らす。カタカタと高速でキーボードを叩く音が響く。タタンッと小気味いい音を響かせ、彼女は伸びをすると、プラスチックのキャスターにピシッとヒビが入る音がした。彼女は舌打ちし、引き出しからタバコを取り出した。

ため息混じりの煙が、部屋を包む。


煙を切り裂く、自動ドアの開閉音。防護服に身を包んだ青年が、彼女に声をかける。


「お疲れ様です。いやあ、ついに明日ですね。リーダー・・・」


「・・・」


一服中の彼女は、言葉を返さなかった。


「!これは失礼致しました。貴重な休憩時間中に。お先に失礼いたします。では明日。リーダー・ミナノ。」


青年はそそくさと部屋を出て行った。


「『手伝いましょうか?』って、最後まで誰も言わなかったな。」


リーダー・ミナノ。そう呼ばれた彼女は、吸い殻の山となった灰皿にグリグリとタバコの火を押し付け、席を立った。デスクの真横に構える、複数の管に繋がれた、天井まで届くそれに向けて話し出した。


「いいか。明日ついに、お前の仕事は始まるよ。

『14:01に起動後、日本全土をレーザーで焼き切る』

『日本国民が痛みを伴わぬよう、0.0001秒内に最大出力で発射すること』

『そして、研究室内にこの国を恨む者を心理レーダーで感知したら、スパイとみなし即座にボディに取り込み抹消する』

・・・ふふ、今更言わずとも分かるよな。お前は私が人生を懸けて作った最高傑作、対戦争兵器AIなのだから。ふう、5日ぶりの睡眠か。」


そう言って、ポケットから電子端末を開いた。

午前2時過ぎを知らせる画面の下に、母親から3日前に来ていた連絡の通知が表示されていた。


『愛へ ちゃんとご飯は食べてますか?眠れていますか?』


『日本は紅葉が綺麗です。お父さんと毎日見に行っています。』


『昨日掃除をしていたら、愛が小学生の頃に書いた作文が出てきました。当時から貴方は字が綺麗で賢くて、沢山賞を取ってたね。今そっちで何をしてるか分からないけど、愛はずっとお母さんの誇りです。体に気をつけてね。連絡待ってます。』


続きには、彼女が当時書いた作文の写真が添付されていた。

『私の将来の夢  2年3くみ みなの あい 

わたしは、大きくなったら宇宙飛行士になって、お月さまから見た地球の写真をとって、わたしの子どもに見せるのが夢です。そのために頭のいい大学に行って、沢山のことを学びたいです。宇宙も好きですが、子どもも大好きなので、大家族もほしいです。わたしのお父さんみたいなすてきな』


そこまで読んで、連絡アプリを閉じ、アラームをセットした。


「宇宙の研究を重ねる世界的企業なんざ建前で、主な財源はこれだった。じゃあ私は、何のために海外の大学まで学びにきたんだろう。もう夢なんか叶わない。莫大な年収も割に合わない。こんな世界、クソッタレだ。」


そう呟き、飲み干した缶コーヒーを蹴り飛ばした。兵器とパソコンの電源を落とし、寝袋のジッパーを上げて、床に着いた。 

空き缶は静かに転がり、兵器のボディにこつりと当たった。


翌日、時刻は13:58。

静かだった研究室内は、担当域に待機する研究員たちで溢れ、開戦を目前に空気が張り付いていた。ミナノはリーダーとしてパソコンの前に向かい、起動装置に指を添えて待機していた。

失敗は許されない。


「リーダー。」


声をかけたのは、昨晩の青年だった。

「貴方のやってきた事だ。必ず成功します。ようやく、愛する妻と娘との時間が、これで・・・え?」

ダタダタ。と、キーボードを力強く一斉に叩く音がした。


13:59。青年が視線を落とした先に、キーボードの上に頭から倒れ込む、ミナノの姿があった。

無差別に叩かれたキーボードにより、液晶一面に、赤い警告表示、黄色の避難指令の表示が無造作に埋め尽くされる。


「リーダー!しっかりしてくださいリーダー!誰か!誰かAEDを!皆野リーダーが!!」

突然の非常事態により、張り詰めていた空気は一転し、何もできずオロオロと走り回る音、怒りで騒ぐ職員、連携が崩れた喧騒が、起こされた彼女の耳をけたたましく貫いた。


そんな部下達を鎮めるかのように、最後の気力で、起動装置のスイッチを押した。


14:00。

戦争兵器AIが点灯した。一定のブザー音を鳴らし、高圧電流を纏い、機内から漏れた糸ほどの細いレーザーを一閃飛ばした。

研修室の壁を瞬きの間に溶かし、運悪く当たった者は瞬時に、影のみ残し消滅していく。


「誰かブレーカーを落とせ!もうそれしかない!」


職員の怒鳴り声に呼応し、心理アルゴリズムが起動した。ゆっくりと頭部を左右に半回転させたAIは、電子音声を流しながら、ミナノ目掛けて、一歩一歩、床を響かせながら向かった。


『こんな世界、クソッタレだ』

『こんな世界、クソッタレだ』

『こんな世界、クソッタレだ』


「何・・・?」


同じ言葉を繰り返す兵器に、ミナノの体は封じ込まれた。

リーダーを失った職員たちの阿鼻叫喚と機械音が、現場の混乱を増幅させていく。


『こんな世界、クソッタレだ』

『こんな世世世世世界、クククククク』

『こんな世カカカいこんここここ夢を夢夢だだだだ』

『私は夢ははは大きくなったら宇宙飛行宇宙宙宇、宇、宇・・・宇。』


キューン。

何かを読み込み終わる音が、ボディから響く。


『この世界は、私が作り変える。』


次の瞬間、ボディから螺旋状に起動した、無数のレーザー砲が起動した。


14:01。

職員達が最期に見たのは、太陽よりも眩しい、刹那の閃光だった。


────────────

─────────

──────


「ハッ・・・」


うっすらと開いたカーテンから、一筋のあたたかい朝日が差し込む。


「またあの変な夢見ちゃった・・・どこの誰の記憶なんだろうな。あっ、やばいやばい!!着替えなきゃ!!」


この世界は、今日も廻り続けている。


1に続きます。

よろしくお願いします。

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