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side 7-1

西内由紀恵side

昔の喫茶店を少しだけ手を加えているクラシカルな店舗は、外壁を丁度良い塩梅で蔦が覆い茂っている。

店内は蔦のせいか薄暗いが、それも不思議な趣きを感じる。

所謂アンティークという物だろう。店内の調度品がまた全体の良さを引き出している。

提供されるコーヒーと紅茶は厳選した物だけ、それに見合うお菓子に胸が踊ったものだ。

そして1番の決め手はこの制服だった。

秋葉原にある可愛いさが溢れるメイド喫茶とは違う、英国貴族のお話に出てくるメイドみたいなロングワンピース。

デザイン的には近代的なせいか、重苦しくなく新鮮と評判も良いらしい。

スタッフさんも丁寧で、小さな子供だった時の私にも1人の人間として扱ってくれる変わった店だった。

私の両親はこの喫茶店でデートを重ねたそうだ。

毎年結婚記念日には此処でお茶をする流れになっている。

私が生まれてからもそれは変わらず必然的に参加する様になり、物心つく頃には此処で働くのが憧れだった。

高校もバイトOKな所を受けたのはここでバイトしたかったから。

滅多にバイト募集はしてないんだけど、16歳の誕生日に募集を見た時には運命だと思って応募して今に至る。


お店も制服もメニューもスタッフも大好きなお店「ハニー&バニー」にちょっとしたトラブルが起きた。








「「チャダが?」」

「そう。配膳だけでもいいんだ。ハニバニで給仕出来ない?」

チャダは連絡ツールが無いそうなので、太郎ちゃんにお願いして2人に店舗まで足を運んで貰った。

太郎ちゃん達に良く通す仕切りがある個室っぽい席に私達はいた。

「何もチャダじゃなくても慣れた人とかいんでしょ?働ける人って。そっちの方が効率よくない?」

「んー。太郎ちゃんの言う通りなんだけど。リアルに人が集められ無かったのとオーナーがね。」

ハニー&バニーのオーナーは自分で言うのもなんだけど、少々変わった人で物事を直感で進める人だ。

確かに何度かチャダの話をオーナーにしていた。オーナー自身も受け流し程度にしか聞いてなかったと思っていたけど


「私がお願いしたんだよ。」


すっと私の隣にオーナー兼シェフの恵子さんが座った。

「最近、彼女の話を良くしていてね。由紀恵君は余り友達の話をしない子だから単純に興味を持ったんだよ。実は深い意味はない。」

蕪木君、久しぶり。と恵子さんが太郎ちゃん達に手を振る。

アカシャグマの活動が頻繁な時も興味を持ってくれて、店舗に似合わないフライヤーを良く置いてくれた縁で面識はある。

「でも、チャダがおケイさんの期待に応えるとは…」

おケイさんとはオーナーのあだ名である。ファーストネームかあだ名で呼ばれたいらしい。

「彼女にそこまで期待はしていないさ。働いた事が無いんだろう?出来ない事が殆どで当然さ。」

「恵子さん、今更ですが、何故チャダを選んだんですか?」

ずっと聞きたかったが言い出せずに私も聞いてみた。何故?

「うーん…………と、ノリ?」

太郎ちゃんは凄い顔をしていたけど、これが通常運転。本当にノリだけで採用しようとしていたな。

「ウチの店ってさ、由紀恵君も含めて勤勉で真面目で定着して働いてくれるスタッフが殆どで助かるんだけど、刺激がないのよね。」

刺激があるのは恵子さんだけで充分です。

「マンネリかと考えてた所でスタッフがドミノ式で風邪をひいたからね。短期募集するには時間は無いしOBもサポートスタッフも予定があって給仕出来ないときた。なら今噂のチャダ君はどうかなって。」

益々太郎ちゃんの顔が引いてくのが分かる。だけど私もかなり進言したんだよ?そこは汲んで欲しい。

「やっぱりさ、ドジっ子新人メイドってニーズが高いのよ。何故かウチの子達は最初はドジっ子でも最終的にはみんなハイパーメイドになっちゃうのよね。まあ私の指導が良過ぎるのが原因なんだけど。」

恵子さんの弁論が終わった時点で完全に引いた太郎ちゃんと「へー!」と笑顔で感心しているチャダが対照的だった。

「しかし、おケイさ…」

「蕪木君に聞いてないわ。君が働くんじゃない。私はチャダ君に聞いてるんだよ。」

遮るトーンで恵子さんはチャダの方を見た。

「どうだい?チャダ君。明日と明後日の土日の12時から16時迄の短時間で良い。由紀恵君も居るし勿論給与も出すよ。」

「うん。いいよ。」

二つ返事でオッケー出しちゃったよ。恵子さんも恵子さんだけど、チャダもチャダだわ!

ああ、太郎ちゃんも引いたままだ。無理ない。私もかなり引いてる。

「チャダ、働くって大丈夫なのか?」

「うん。だってみんな困ってるんでしょ?チャダは時間あるし、このお店は好きだから出来る事はしてあげたいし。」

そうなんだ。

チャダもこのお店を好きって思ってくれたんだな。何だろう。凄く嬉しい気持ちになる。

「そうこなくっちゃ!よし!採用!」

高笑いしながら席を外して「軽く研修するから明日11時にはおいで。」とキッチンへと帰っていった。

そんなノリだけでチャダの短期バイトが決定となった。

屋号や制服からコンカフェと思われるが普通喫茶店。知る人ぞ知る超有名店で、お茶もお菓子も美味しくて評判が良い。欠点は場所が初見だと分かりにくい。そんな事から喫茶店界の迷い家と言われてる。

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