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ランドレス戦記〜漆黒の女騎士は亡き主の意思を継ぎ戦う〜  作者: ヌマサン
第4章 帝国との激闘
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第89話 手ぐすね引いて待つ

どうも、ヌマサンです!

今回はナターシャたちがユルゲンたちを討ち取るべく、作戦を開始します!

はたして、レティシアの策は上手くいくのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

それでは、第89話「手ぐすね引いて待つ」をお楽しみください!

 ナターシャが3万5千もの本隊を率いて北へ撤退を開始した。これを受けて、カルロッタ配下の歴戦の猛将ユルゲンは独断で追撃するという選択を取った。


 しかし、この追撃そのものがレティシアにより予測されているなどとは、ユルゲンたちの中で誰一人気づく者はいなかった。


「敵の最後尾を見つけたぞ!総がかりだ!」


 ユルゲンは自ら馬を躍らせ、敵の最後尾に食らいつく。その最後尾こそ、ローラン率いる4千の部隊であった。


「父上!予想通り食いついてきました!」


「よっしゃ、予定通り応戦しつつ、北へ退くぞ!」


 ローランはユルゲン率いる8千もの帝国兵が追撃してきた事を急いでナターシャに報告し、ローランが陣頭指揮を執り、追撃を防ぎながら後退を開始。


 1万1千の数を率いながらローラン隊から少し離れて撤退中のナターシャにもローランからの報せが入った。ナターシャはレティシアに目配せをし、一気に迎撃の最終支度を行なった。


 マルグリット率いるサランジェ族の1万3千が真っ先に出立し、続いてモレーノ率いる6千が出立。こうして各部隊への指示を出し終えた後、レティシアもまた弓兵と歩兵を5百ずつ率いて本営を出ていった。


 こうして残ったナターシャ本隊1万1千もユルゲンたちを罠にはめるべく、所定の位置まで北上を開始する。


 一方、ローランの方もユルゲン隊の猛攻を凌ぎながら、ジリジリと後退を続けていた。その引き際には隙が無く、ローランの将軍としての才が十分に表れていた。さらに、ノーマンも大剣を操りユルゲン隊の強者を幾人も斬り捨てるなど、着々と戦果を挙げている。


 猪突猛進しているユルゲンであるが、ブルーノを失う前の冷静さがあれば、あまりにも隙の無いローラン隊を見るだけでも、伏兵があることを察知したであろうが、今のユルゲンには息子の仇討ちしか頭になかった。


 そうして完全にレティシアの策にハマったユルゲン隊8千はローラン隊を追いかけ、ヘキラトゥス山地の入口とも呼べる地へと差し掛かった、まさにその時。


 四方から一斉に鬨の声が上がる。ロベルティ王国軍を追いまくるユルゲンたちに取って晴天の霹靂とも呼べる事態である。


 南の平野部にはサランジェ族の旗が翻り、東の小高い丘の上にはロベルティ王国の旗が掲げられている。さらに、西の切り立った断崖絶壁の上にも少数ではあるがロベルティ王国軍がいるのも確認できる。


 ここに来てようやく罠であったことを悟ったユルゲンは包囲を破って、撤退するように下知する。ユルゲンの指示により、8千の兵士たちが南へと転進する。


「おい、ユルゲン・リーシェ!カルロッタ配下の名将が敵に背を向けるのか!我らとも正々堂々勝負せよ!」


「うぬっ、北へ逃げた者たちが引き返してきたか!」


 ユルゲンたちを誘い込んだローラン隊も生き残った3千と数百がやられっぱなしは癪に障ると反撃に転じてきたのだ。さらには、その背後からナターシャ本隊も続いてくるではないか。


 ユルゲン隊は恐怖した。四方に放った物見からの情報を集めれば、北からはナターシャ本隊を含めた1万4千。東には槍隊を中心とした6千。南にはマルグリット率いる1万3千。さらには西にはレティシア率いる1千。


 すなわち、合計3万4千という大軍勢で8千のユルゲンを四方から完全に包囲したのである。マルグリット隊からは騎馬に跨る弓兵から容赦なく矢の雨が降り注ぐ。


 ユルゲン隊は盾などで飛んでくる矢を防ぐもすべては防ぎ切れず、次々と射倒されていく。ユルゲンも焦る中、西からも矢だけでなく、岩石や大木などが転がり落ちてくる。


 東からはモレーノ隊6千が剣や槍を引っ提げ、側面からユルゲン隊へと攻めかける。南からやって来たローラン隊もユルゲンの首を討ち取らんと死に物狂いで攻めかかる。


 ユルゲンたちを完全に包囲した頃、南に布陣するマルグリットのもとに伝令が入る。


「何?南から3千ほどの帝国軍が向かってくるだって?」


「はい、それはもうもの凄い勢いで……!」


「分かったよ、こうなったらアタシが直接出向くしかないね」


 マルグリットは伝令兵からの報告を聞き、すぐさま5千の騎兵を率いて南下。北上してくる帝国軍に対する迎撃準備を整えた。


「こっちに来るのはローレンス・オニールみたいだねぇ」


「申し上げます!帝国軍のローレンスより、使者が……!」


「使者?」


 マルグリットは使者がやって来たことに不信感を募らせつつ、使者との面会をした。


「使者殿、待たせてしまったね」


「これはこれはマルグリット殿、お会いできて光栄に思います」


 深くフードを被った使者であったが、彼がフードを外すとポニーテール状にまとめた薄紫色の髪が露わになる。使者と名乗る人物こそ、3千の兵を連れて向かってきたローレンスその人だったのである。


「これはローレンス殿自らのお越しとは驚いたねぇ」


「これくらいでなければ、誠意が伝わらないと思ってね」


 マルグリットとローレンスが互いに椅子へと腰かけ、話し合いへと移った。


「それで、ローレンス殿。話というのはなんだい?」


「そうだね、ユルゲン将軍たちの追撃はこちらとしても予測していなかったこと。停戦の約定を違えたことは謝罪したい」


「なるほどねぇ、ユルゲン将軍たちの命乞いだね?それなら断らせてもらうよ。ナターシャ殿からも停戦の約定を違えた者は一人残らず討ち果たせとの命令だからねぇ」


 マルグリットに交渉の余地はないと判断したローレンス。もはや、ユルゲンたちの救出は絶望的。となれば、ローレンスが取れる選択肢は限られていた。


「マルグリット殿は『停戦の約定を違えた者は一人残らず討ち果たせ』との命令を受けていると言ってましたね」


「ああ、確かにそう言ったねぇ。でも、それがどうかしたのかい?」


「では、我々は大人しく南へ兵を引き上げるとなれば、追撃はしないという理解で良いのかな?」


「……確かに停戦の約定を違えていないローレンス殿たちは討ち果たす対象には入らないことになるねぇ」


「では、僕たちはこの辺りで撤退するよ。ユルゲン将軍には武人らしく華々しい最期を遂げられるよう、言伝も頼んでおくよ」


 そう言い残し、ユルゲン隊3千は迅速に陣払いを済ませた。マルグリットも撤退を見届けた後、ユルゲン隊の包囲へと戻るのであった。


 その頃には乱戦模様となっており、四方から攻め立てられ、ユルゲン隊は2千もいないほどにまで数を減らしていた。


「おのれ、ロベルティ王国軍め!せめてブルーノの仇だけでも……!」


 息子の仇だけでも討たんと乱軍の中を駆けまわるユルゲン。彼を討ち取ろうとローランやノーマン父子、モレーノが次々にかかるものの退けられてしまっていた。


 ローランのみがユルゲンに手傷を負わせることができたが、負けは負けであった。それほどまでにユルゲンの武勇は群を抜いていた。トラヴィスやリカルドがおればユルゲンに手を焼くこともなかったと皆が悔い始めた頃。


 ロベルティ王国最強の武将がユルゲンの前に姿を現した。他の誰でもなく、軍の総帥であるナターシャその人である。


 相も変わらず漆黒の鎧を身に纏い、漆黒の馬に跨るナターシャは漆黒の長髪を揺らしながら悠々とユルゲンの眼前へと駒を進めた。


 今ここに、仇討ちに燃える猛将ユルゲン・リーシェと『漆黒の戦姫』ナターシャ・ランドレス。両雄がヘキラトゥス山地の入り口にて剣を交えんとしていた――!

第89話「手ぐすね引いて待つ」はいかがでしたでしょうか?

今回はユルゲンが見事にレティシアの罠にかかっていました。

さらに、ローレンスも救出をあきらめ、大人しく引き下がることに……!

そして、ユルゲンの前に現れたのはナターシャ本人。

一体、どのような戦いになるのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

――次回「提灯に釣り鐘」

更新は3日後、4/13(木)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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