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ランドレス戦記〜漆黒の女騎士は亡き主の意思を継ぎ戦う〜  作者: ヌマサン
第4章 帝国との激闘
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第90話 提灯に釣り鐘

どうも、ヌマサンです!

今回はナターシャたちによる第一次ダルトワ領侵攻も大詰め。

ナターシャとユルゲンの一騎打ちがどうなるのか、見守っていてもらえればと思います……!

それでは、第90話「提灯に釣り鐘」をお楽しみください!

「貴殿がユルゲン・リーシェ殿ですか!」


「そうだ、私がユルゲン・リーシェである!向かってくる貴公は……そうか、その出で立ち、『漆黒の戦姫』か……!」


 目の前の女騎士の出で立ちを見て、誰が出てきたのかが分からぬユルゲンではなかった。しかし、カルロッタの麾下として勇名を馳せた猛将として、尻尾巻いて逃げるわけにはいかなかった。


「フッ、『漆黒の戦姫』であれば、相手にとって不足はない!いざ、尋常に勝負!」


 斬り捨てた敵兵の血が滴る水色の大剣を肩に担ぎながら、ナターシャと正面から向き合った。このユルゲンからの勝負をナターシャも快く受けた。


 ナターシャが決闘を承諾すると、ユルゲンは出し惜しみすることなく氷魔紋を発動させる。大剣へ冷気を纏わせ、一撃必殺の気迫をもってナターシャへと斬りかかる。


「ハァッ!」


「ぐぬっ!?」


 大上段からの冷気を纏う斬撃に対し、ナターシャは気合いの籠もった叫びと共に神速の如き抜刀術が振るわれる。抜刀からの斬り上げをユルゲンの一撃は破壊力で優り、弾き返す。


 ユルゲンの間合いから逃れようとするナターシャを逃がすまいと、ユルゲンは下から上へ斬り上げを放ち、そこからは嵐の如き勢いで斬撃が叩き込まれる。


 とても大剣を振るっているとは思えない速度の斬撃にナターシャも戸惑ったが、正直トラヴィスやセシリアの大斧から放たれる斬撃の方が破壊力も速度が上であると実感していた。


 すなわち、ナターシャにとってユルゲンはトラヴィスやセシリアに比べれば弱いということ。ナターシャもある程度ユルゲンからの斬撃を魔剣ヴィントシュティレで軌道を逸らしたりして受け流して見せる。


 帝国最強の戦士であるヴィクターとも渡り合った実力であるナターシャが小手調べをしている間に片を付けようと、ユルゲンは焦ったように怒涛の連撃を叩き込む。


 しかし、ユルゲンの全力ではナターシャに一太刀も浴びせることはできずにいた。圧倒的な実力差を前に、さすがの古強者も恐怖を覚えた。


「くっ、まさかこれほどまでの実力差があるとはな……!とても同じ人間とは思えんっ……!」


 ユルゲンの恐怖を纏う言葉を聞いたナターシャから怒涛の反撃が開始。漆黒の斬撃は目にも止まらぬ速さで見舞われ、その鋭さたるや神業という他ない。ユルゲンが防げそうで防げない絶妙な間をもって斬撃や刺突を滑らかな動きで仕掛けていく。


 結果、ユルゲンは体の随所を切り裂かれ、貫かれる有り様となり、血だまりが形成される。


「なぜ、同じ人でありながら、こうまで実力に差が出るものなのか……!才能とは慈悲なきものよな……!うぐっ!?」


 自嘲気味に笑みを浮かべるユルゲンへ、瞬きの内に肉薄したナターシャにより、胴体を両断された。ここにカルロッタ麾下一番の名将として名高いユルゲン・リーシェは討ち取られた。享年48。


 ナターシャは丁重にユルゲンを弔い、各隊へユルゲン隊の殲滅を急ぐように指示を飛ばした。それからしばらくして、ユルゲンと共に停戦の約定を破ってロベルティ王国軍へ追撃を仕掛けた8千の兵はあえなく討ち死にとなった。


 対して、ロベルティ王国軍は死傷者を2千出したのみに留まり、大勝利と言える戦果を挙げた。この最後の大戦果を伴って、ナターシャたち遠征軍はヘキラトゥス山地を越えて、王都コーテソミルへと凱旋した。


 かくして、ナターシャを総大将とするロベルティ王国軍によるダルトワ領への侵攻は一旦幕を閉じた。序盤こそアランを討ち取り、トラヴィス隊に大打撃を加えたカルロッタ率いる帝国軍であったが、リカルドによる中入り作戦によって戦局がひっくり返る形となった。


 カルロッタは今回の戦で、譜代の家臣であるユルゲン・ブルーノの親子が討たれたばかりか、居城であるヌティス城まで奇襲を受けたことで、ダルトワ領での支配権が揺るぎつつあった。


 この年のダルトワ領をめぐる大戦は両軍痛み分けとなったが、確実にロベルティ王国軍の鋭い牙がダルトワ領に食い込んだと言える。


 ともあれ、戦後処理に双方追われる形となっていたが、マリアナたちロベルティ王国にとって、目の上のたん瘤と呼べるのはジェロームとシリル率いる帝国軍により奪取された旧ヴォードクラヌ王国領である。


 現状、西と南で帝国と境を接しているわけだが、ジェロームとシリル率いる帝国軍5万はヴォードクラヌ王国の王都であるレシテラに駐屯しているため、油断ならない状況。


 王都テルクスを中心とするルグラン領には五大将であり領主でもあるアマリアが、同じく五大将であるユリアと共に守備についていた。その兵数は2万数千。今、攻め込まれれば防ぎ切れる数ではない。


 こうした事情もあり、西にも南にも気を遣わなければならない状況となっているが、このルグラン領にはかつてのヴォードクラヌ王ルイスと家臣のアレーヌ、コリンが落ち延びてきている。


 この事を知ったヴォードクラヌ王国の再興を願う者たちが集結しており、レティシアはルイスを押し立てて、『同盟国ヴォードクラヌ王国の復興』を掲げて、ルイスたちの旧領奪回を手伝うことを提案した。


「マリアナ様、まだまだ課題が山積みですね」


「ええ、正直頭が痛いわ……!でも、レティシアの提案したヴォードクラヌ王国領奪回は良い策だと思うわ」


「はい、私も同感です。なにより、帝国と二方面で国境を接しているのは厄介な状況ですから」


 玉座の間にて、遠征帰りのナターシャと女王マリアナは雑談を交えつつも、今後の国策について軽く意見を交換し合っていた。


「まずは、ルイス殿の国内での扱いをどうするかということですか」


「ええ、とりあえず何かしらの役職を与えなければ」


 2人は悩みに悩みぬいた末、ルイスをロベルティ王国ヴォードクラヌ領主とする方針で固め、領土奪回の暁にはルイスがヴォードクラヌ王となることを了承する旨の書状を同封し、王都テルクスにいるルイスの元へ届けさせた。


「ルイス様、マリアナ女王からは何という風に?」


「フッ、オレをヴォードクラヌ領主という扱いにするつもりらしい。だが、奪回が叶った暁には王として独立する許可証も付いている。まったく、抜かりないな」


 傍らに控えるアレーヌを相手に苦笑するルイス。アレーヌとしては、書状の内容を見る限り満足のいく計らいだと思い、ルイスが苦笑する意味を分からずにいた。


「アレーヌ、これでは旧領奪回が叶わなければ名ばかりの領主だ。それに、ロベルティ王国によるヴォードクラヌ領侵攻の口実にオレ自身が使われているわけだ。あまりいい気はしないだろう?」


「確かにそうね……。でも、旧領さえ奪回できれば問題ないわ」


「ま、まぁ、そうだな。ともあれ、引き続きヴォードクラヌの者たちのまとめ役はアレーヌに任せるぞ」


「ええ、分かったわ」


 アレーヌはルイスからの命令を受けて退出。ルイスはシリルから受けた傷から病を発していた。そのため、ベッドで寝たきりとなっており、アレーヌが代わりにヴォードクラヌから集まって来た者たちを統率している。


 一方、ルイスやアレーヌと共にロベルティ王国へと落ち延びてきたコリンはといえば、ルイスたちを見限り、アマリアの配下の武将として収まっていた。コリンはユリアと面識もあることから、アマリアへ推挙されたのである。


 ともあれ、ロベルティ王国は北でも南でも状況は移り行く。はたして、これからのロベルティ王国の命運やいかに――!

第90話「提灯に釣り鐘」はいかがでしたでしょうか?

今回はナターシャがユルゲンを討ち取り、ロベルティ王国軍は撤退に成功。

勝敗がどっちが勝ったとは言えない、微妙な感じではありますが、与えたダメージはロベルティ王国側の方が大きいような?

ともあれ、これからのナターシャたちの戦いを見守っていてもらえれば幸いです。

――次回「池魚の殃」

更新は3日後、4/16(日)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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