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ランドレス戦記〜漆黒の女騎士は亡き主の意思を継ぎ戦う〜  作者: ヌマサン
第4章 帝国との激闘
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第80話 南征の始まり

どうも、ヌマサンです!

今回も更新が遅れてしまい、申し訳ありません!

今回からはロベルティ王国が帝国領への侵攻が始まります!

それでは、第80話「南征の始まり」をお楽しみください!

 例年通りの雪解けを迎えたロベルティ王国。かねてより計画されていたフレーベル帝国ダルトワ領への侵攻が開始されようとしていた。


「ナターシャ、今回も遠征軍の総指揮をお願いするわね」


「お任せください、マリアナ様」


 王都コーテソミルにて築城中の王城では、女王マリアナと軍務大臣であるナターシャの両名が遠征前に話をしていた。


 ナターシャも3国平定の際に初めて総大将を務めた時には不安を感じていたが、今では大軍を率いることにも慣れてきており、マリアナとしても心配する必要はないと感じていた。


「それで、今回の遠征についてだけど……」


「はい、まずはトラヴィス将軍率いる1万3千とアラン殿率いるプリスコット領の兵士6千が先鋒として進むことになっています」


 ナターシャはやり取りの中で地図を指し示しながら、マリアナに遠征の進軍ルートや各隊の兵力などを包み隠さず説明していた。それを聞き、マリアナも楽しそうに地図を眺めている。


 今回の遠征では先のジェフリーによる反乱の平定において、大きな損害を被ったラローズ領とフォーセット領からは兵士を出させず、国土の復興に充てるよう指示。


 残るプリスコット領からは出せるだけの兵員を出させることとなったが、プリスコット領主ラッセルは妹婿のアランを大将として6千もの大軍を率いて上洛させた。


 さらに、アラン自身の希望でプリスコット領の兵たちは先鋒に加わることとなり、トラヴィスと共に先鋒としてダルトワ領へ攻め込む運びとなったのである。


 そういった事情でアラン・プリスコット率いる6千を加え、トラヴィス隊と併せれば1万9千という数となる。そんなトラヴィス隊には、副将としてトラヴィスの弟であるローランと甥のノーマンも参陣していた。


 トラヴィスだけでなく、ローラン・ノーマン父子、アランの3名も負けず劣らずの猛者である。中でも、トラヴィスとローランは長年戦場で戦い抜いてきた歴戦の強者。彼らがいれば先鋒部隊は大丈夫。ナターシャもそう考えての配置であった。


 さらに、ダルトワ領と境を接しているタンデル領には守りを固めておくように名を下している。何より、領主のヴェルナーは何度もカルロッタ率いる帝国軍を退けた守りの名将である。


 そんなヴェルナーには国境の守りを任せ、サランジェ領からの軍勢を次鋒としてトラヴィスたちに続かせる。その数、およそ1万5千。


 指揮官は領主マルグリット自らが執ることとなっており、残る9千の兵はヨーゼフの下で王都コーテソミルの復興にあたっているため、動かせない。


 だが、マルグリット率いる1万5千が後に続くだけでも戦況は大きく変わること間違いないのである。


 そうして、先鋒部隊1万9千、次鋒部隊1万5千に続いて、ようやくナターシャ率いる本隊3万3千が向かう手はずとなっている。


 ナターシャ本隊にはランドレス家の家臣であるモレーノとダレンの父子だけでなく、王国軍参謀の役職に就いているレティシアや、つい先日登用されたばかりのリカルド・セミュラも所属している。このような大陣容をもってダルトワ領への遠征に臨んだのである。


 ――その一方、ロベルティ王国が侵攻してくると見抜いていた帝国の三将軍が1人、カルロッタはといえば。


「ローレンス、例の場所の築城は済んだかしら?」


「ああ、君から言われた通り、5倍の兵を相手にしても耐えられるような堅城を築いておいたよ」


「では、砦の守りはユルゲンに任せるわ」


「お任せを。私が全身全霊で守り抜いて御覧に入れましょう」


 ダルトワ領の中心地であるヌティス城下。その中心にそびえ立つヌティス城にて、ロベルティ王国軍を迎撃するための軍議が開かれていた。


 カルロッタの右手に控えるポニーテール状にまとめた薄紫色の髪が印象的な若者――ローレンス・オニールに命じたのは、王国とダルトワ領の国境から見えるほどの距離しか離れていない場所へ、敵の大軍の猛攻にさらされても耐えられるような砦を築くこと。


 完成したその砦の名はフェルネ砦。その守将に指名したのが、カルロッタの左手に控え、ローレンスとは長机を挟んだ位置にいるユルゲン・リーシェ。


 ユルゲンは薄水色の髪を首元で短く結った中年男性であり、カルロッタの父親の代からダルトワ家に仕えている手練れの将軍である。そんな戦慣れしている将軍をローレンス曰く堅城であるフェルネ砦に5百の兵と共に籠めた。


 すぐに現地へとユルゲンを派遣し、残るカルロッタは従弟であり、参謀でもあるローレンスと共に作戦を練り始めた。


 ちなみに、ローレンスの家名はオニールであるため、一族の者ではないと思ってしまうが、それはカルロッタの父がローレンスの母である自らの姉に頼み、ダルトワ領内の名家であるオニール家へと養子に出したためである。それによって、家名がカルロッタとは異なっているのである。


 ――さて、本題である軍議へと話を戻す。


「カルロッタ様、決戦場はフェルネ砦周辺を予定しているのかい?」


「いいえ、違うわ。決戦の場は……ここよ」


「なっ、ここは……!」


 砦を築いたフェルネ砦から徒歩で丸一日かかる距離をカルロッタの指は指し示していた。フェルネ砦から西へいったところにある小高い丘。名を、ハウズディナの丘という。


「ここに敵を誘い込みます」


「本当にこんな場所まで敵が来るかなぁ?」


「それはあなたの活躍しだいね」


「ちょっ、誘い込むのは僕がやるのかい!?」


 自分に敵を誘い込む囮役を回されるなど、夢にも思っていなかったローレンスは素っ頓狂な声を上げた。それを口元を抑えながらクスクスと笑うカルロッタであったが、直後には主君として正式に命じた。これにより、ローレンスは囮役をする破目になった。


「確かに、ハウズディナの丘は頂上が平らな高台だし、敵を布陣させるにはちょうどいいかもね」


「ええ。それに、丘の北側を流れる川。ここを渡らせてしまえば、撤退するのは困難になるわ」


「じゃあ、川の北側の森に兵を隠しておいて、敵が川を渡り終えたら塞いでしまうのはどうだろう?」


 カルロッタとローレンスはどうやってロベルティ王国軍の先鋒を撃破するか、朝から夜更けまで議論を続け、策を練り上げた。その末に、作戦は無事にまとめることができたのであった。


「ミルカはいますか?」


「ここに」


 軽やかな足取りと共にカルロッタの前へと姿を現した、くせっけの強い紫色の髪をおさげにしている手足の細長い美女。彼女こそ、カルロッタの実妹であるミルカ・オルトラーニその人である。


 ミルカもまた、ローレンスと同じようにカルロッタの父の代にダルトワ領内の有力な土豪であるオルトラーニ家に養女に出されたのである。


 そんな彼女は姉に似て槍の腕前に優れ、一軍の将として申し分ない統率力を持ち合わせていた。


 カルロッタはそんな妹に、ローレンスが敵軍をハウズディナの丘へと誘い込んだ後、川の北側に布陣して敵の退路を断つという重要な役目を申しつけた。


 総大将であるカルロッタも深く信頼しているミルカであれば、申し分ない槍働きをするであろうことはカルロッタだけでなく、参謀であるローレンスも確信していた。


 その後は、誰にどれだけの兵を率いさせ、どこに布陣するかなど、陣構えなどを詳細に記した文書を各将軍へと手配し、来たるロベルティ王国軍6万7千の大軍を迎え撃つべく、カルロッタも領内から6万5千という大軍を動員し、決戦へと備えるのであった。

第80話「南征の始まり」はいかがでしたでしょうか?

ついにナターシャ率いるロベルティ王国軍とカルロッタ率いる帝国軍が激突する流れに……!

次回からは本格的な戦闘も始まりますので、お楽しみに!

――次回「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」

更新は3日後、3/17(金)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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