第73話 若き女帝の誕生
どうも、ヌマサンです!
今回はルドルフ亡き後の帝国の話になります!
はたして、ルドルフ死後の帝国はどう動くのか。
それでは、第73話「若き女帝の誕生」をお楽しみください!
――偉大なる初代皇帝ルドルフの死。
突如もたらされた訃報に、帝都フランユレールに激震が走る。上は貴族から、下は民衆まで。
これから帝国はどうなってしまうのか。ルドルフなしに、南北に敵の侵攻を受けている現状を打破することができるのか。そんな漠然とした不安が人びとの心を襲い始める。
そんな中、帝都に居る貴族たちによって次なる皇帝が擁立された。その名もソフィア・フレーベル。
先帝ルドルフの孫娘であり、先に亡くなった皇子マティアスの遺児である。実の父マティアスからも、祖父のルドルフからも蝶よ花よと育てられた箱入り娘。
箱入り娘が次の皇帝か。そう貴族たちの中でも侮る者たちが現れ始めていた。だが、新たに帝位についたソフィアの政治手腕は祖父以上と言うほかなかった。
反発的な貴族たちを策謀によって瞬く間に捕え、処罰を加えた。処罰と言っても、所領の没収に始まり、当主の処断などが即日実行に移されたのである。中には、一族郎党に到るまで帝都フランユレールで処刑された貴族もいくつかあった。
「ワタクシ、ソフィア・フレーベルは祖父の遺業を継ぐべく、今後も邁進していく所存です。そして、皆も知っての通り、逆らう者は祖父の代からの臣下であっても処断しますから、そのつもりで」
反乱計画や裏切ろうと考えていた者を帝位についたその日のうちに処断してしまった。もはや、宮廷内でソフィアに逆らおうとする者はいなくなった。
さらに臣下の者たちが驚かされたのは、ソフィアに瞬魔紋の力が目覚めていたという事実。まるで、ルドルフが後継者を指名したかのような、そんな感覚をも与えられてしまう。
ともあれ、即位したその日以来、彼女は臣下や民たちからこう呼ばれるようになったという。
――『鮮血女帝』と。
鮮血女帝は内側の異物を排除し、次には外政へと取り掛かった。今、帝国は3国と隣接している状況。うち、2つとは南北で戦争継続中。残る1つは雪解けと同時に攻め込んでくることは必定。
――現状、南北から敵の侵攻を受けているため、こちらを何とかする必要があった。
南はヴィクター率いる3千が孤立した城をヴァルダロス王国軍に包囲されている。包囲しているヴァルダロス王国軍は5万7千。20倍近い敵に包囲されている現状を打破する必要がある。
なにより、ここでスティーブに続き、同じく帝国三将であるヴィクターを失うのは痛手。よって、ソフィアはヴィクター救援に5万という数を向かわせた。
対して、北はと言えば、かのルイス・ヴォードクラヌが旧領回復を掲げて帝国領を荒らしまわっている。
だが、こちらはすぐにでも対処できる。そうソフィアは踏んでいた。よって、ロベルティ王国が動くより早く、ヴォードクラヌ王国を滅ぼしてしまおうという考えに到った。
「ジェロームとシリルはいるかしら?」
「ここにいるぞ」
「フッ、このシリルに一体何の用だ?」
ソフィアに名を呼ばれた2人の青年。2人ともソフィアが幼少の頃より側仕えをしている者たちである。
ジェロームと呼ばれた青年は筋肉質な体つきをした大男で、茶色の頭髪はバサバサに乱れている。上半身が裸であるが、そのおかげもあってか筋肉質な上半身が強調されて見える。
そして、もう一人のシリルは痛々しさを感じる黒いコートに身を包んだ長身の男である。腰まで薄緑色の髪をうなじの辺りで1本にまとめているのもまた、彼の特徴の一つである。
「あなたたちに、大役を任せるわ」
「大役?一体、どんな役回りだ?」
「まぁ、どんな大役だろうと、このシリル・アルヌールに任せておくと良い」
「……コホン。それは、ヴォードクラヌ王国征伐よ」
ヴォードクラヌ征伐。その総大将をジェローム、軍師としてシリルを任命したのだ。
ジェロームは戦いと聞いて上半身裸のままソフィアの部屋中を嬉しそうに跳び回り、シリルは「我が闇の力を解放する時が来たか……!」などと、訳の分からないことを口にしながら、ケタケタと笑っていた。
相変わらず、この2人は頭がおかしいとソフィアは思っていたのだが、ジェロームの腕っぷしの強さとシリルの頭の切れ具合は祖父ルドルフからの折り紙つき。
さらには、他国には名前も素性も知られていないときた。今回の敵であるルイス・ヴォードクラヌを油断させるにはもってこいの逸材である。
ともあれ、ソフィアはジェロームとシリルにそれぞれ2万8千の軍勢を率いさせ、準備ができ次第出発するように命じた。
「ソフィア様、スティーブ様より受け継いだ爆魔紋の力も使って、勝利をつかんでくる!吉報を待っていてくれ!」
ジェロームはソフィアの顔ほどはある大きさの手で握りこぶしを作って、そんなことを言い残して退出。続くシリルも相変わらず訳の分からない言葉を叫びながらソフィアの部屋を去っていった。
「さて、と。北はジェロームとシリルに任せておけば大丈夫ですし、南のヴィクター将軍には増援を向かわせました。これで、当面は防ぐことができそうね。他には……」
ソフィアは1人、地図と睨めっこしながら各地の情勢を整理していく。そして、見つけた。帝国の南に位置し、ヴァルダロス王国の東にあるクウォークという王国を。
彼女はすぐに、優秀な外交官を選出し、使者としてクウォーク王国へと派遣した。
現状、クウォーク王国はヴァルダロス王国と同盟関係にある。だが、それは共に帝国へ対抗しようという狙いから組まれた同盟。
その同盟に帝国が介入することで得られるものは大きかった。すなわち、クウォーク王国にはヴァルダロス王国を滅ぼしても攻め込まないという盟約をかわしたのだ。
さらに、その盟約が履行される条件としてヴァルダロス王国との同盟を破棄し、即時宣戦布告をすること。
クウォーク王国は帝国から提示された条件を見て、一切の迷いを見せなかった。かの王国はすぐさまヴァルダロス王国と手を切り、東からヴァルダロス王国へと攻め込んだのである。
クウォーク王国は2万ほどの兵力を有する小国であったが、今ここでヴァルダロス王国の側面を突かせたことには20万の援軍にも勝る効果を示すこととなる。
対するクウォーク王国がヴァルダロス王国との同盟を破棄し、帝国と喜んで手を結んだ理由。それは、そもそもヴァルダロス王国との同盟は帝国への恐怖から来るものであったことにある。
すなわち、ここで帝国との盟約を拒否すれば、ヴァルダロス王国ともども滅ぼされることとなる。ならば、ここでヴァルダロス王国と手を切り、帝国を結ぶことが最も自国の利益になる。
そう考えれば、クウォーク王国が取った選択は理に適っている。自国を滅ぼされないばかりか、ヴァルダロス王国の領土については『切り取り可』と帝国からも許可を得ているのだ。
ソフィアのやり口は、ヴァルダロス王国と組むよりも自分たちと組む方が帰国のためになると使者の口から上手く誘導させたこと。
そうした外交的な一手も相まって、フレーベル帝国とヴァルダロス王国の戦況は二転三転していくこととなるが、これはまた別の話。
かくして、初代皇帝ルドルフの死により、25歳という若さで帝位についたソフィア。彼女こそ、ルドルフに匹敵するほどの英雄であることを、近いうちにナターシャたちは思い知らされることとなる。
そうして、帝位が孫娘のソフィアへと移る中、雪解けの時期を迎えた。ロベルティ王国は帝国の動きに気を付けつつ、速やかに南のフレーベル帝国ダルトワ領への侵攻を始めるのであった……!
第73話「若き女帝の誕生」はいかがでしたでしょうか?
今回はルドルフの後を継いだソフィアが、内政から外交まで一気にこなしていました。
反乱分子の粛清から、南北の敵への対処をこなす様は見事でした。
はたして、ソフィアの即位がナターシャたちにどう影響してくるのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!
――次回「危うきこと累卵の如し」
更新は3日後、2/24(金)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!




