表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランドレス戦記〜漆黒の女騎士は亡き主の意思を継ぎ戦う〜  作者: ヌマサン
第4章 帝国との激闘
74/187

第74話 危うきこと累卵の如し

どうも、ヌマサンです!

投稿日を間違えてしまい、73話ともども更新が遅くなってしまいました……!

今日は2話更新となりますが、よろしくお願いします。

それでは、第74話「危うきこと累卵の如し」をお楽しみください!

「ルイス様。城主から、投降を申し出てきましたが……」


「ああ、投降なら構わん。受け入れろ」


「ハッ!」


 伝令兵に指示を与えた後、ルイスは椅子に腰かけながら頬杖つき、静かに目を閉じる。


 ルイス率いるヴォードクラヌ王国軍は6万という大軍にまで膨れ上がっていた。その大軍をもって、シムナリア丘陵地帯を抜け、帝国領深くにまで進軍してきているというのが現状だ。


 敵地深くに入っているため、かなり危険な状態であるが、ここまで帝国軍相手に連戦連勝のヴォードクラヌ軍がやって来たことで、帝国の領主たちは次々に降伏を願い出てくるという奇妙な状況が出来上がってしまっていた。


「ルイス様、悪い知らせよ」


「悪い知らせ?なんだ、それは……」


 伝令兵に続いてルイスの前にやって来たのは、空色の髪をツーサイドアップにしている長身の女性。彼女の名はアレーヌ・メニコーニ。


 かつて帝国軍とヴォードクラヌ王国軍が干戈を交えた、シムナリア丘陵地帯の戦いにおいて、一軍の大将を務め善戦した名将ブレント・メニコーニの娘。それが、アレーヌ・メニコーニなのだ。


 そんな彼女のいでたちは、細長い足がチラリと垣間見えるスリットの入ったスカートが目を引く。だが、ルイスはそこに一瞥もくれることなく、渡された書状を読み始める。


 ルイスの澄ました顔にアレーヌはムッとしつつも、書状に記されている大まかな内容を先に口頭で報告した。


「帝国軍5万6千がこっちに向かってきているみたいね。こっちも軍勢を集めれば同じくらいの数にはなるだろうけど……」


「フン、帝国軍5万6千とはいえ、敵の総大将のジェローム・コルテーゼなど聞いたこともない。こんなヤツ、今いる2万4千だけで充分だ」


 議論するのも面倒だとでも言わんばかりの言い草に、アレーヌは立ちどころに異を唱えたが、結局ルイスには聞き入れられなかった。


 ルイスのいる本営の外。そこでアレーヌは入れ替わりでやって来たコリンに話しかけられる。


「ルイス様、結局今の数だけで決戦に臨むつもりか」


「ええ、そのつもりみたい。私は嫌な予感しかしないんだけどね……」


「アレーヌの勘って当たって欲しくない時だけ、当たるからな。今回ばかりは当たって欲しくないところだが」


「もう!それ、私だって気にしてるんだから!」


 コリンとしては紛れもない本心であり、経験上事実と言って差し支えないことなのだが、当のアレーヌ自身もかなり気にしていたらしかった。


「アレーヌさんよ、ここはルイス様の命令じゃなくても、全軍を結集するべきじゃないか?」


「ええ、私もそう思うわ。だけど、王の命令なしに勝手に軍を動かすわけにはいかないわ」


「ホント、真面目だよなぁ。主君のためなんだし、ちょっとくらい無視しても……」


 次の瞬間、コリンは蛇に睨まれた蛙のように動くことができなくなった。それは、アレーヌの眼光が鋭さからである。


 アレーヌの眼光はコリンのような猛者をも恐れさせるほどの鋭さがある。この怒りの感情を帯びた眼光には、父のブレントを想起させるものを感じさせた。


 ともあれ、コリンはそれ以上は何も言わず、おとなしく引き下がった。アレーヌは一際ルイスへの忠誠心が高く、その忠誠心の高さゆえか、融通が利かないのは短所であると言えよう。


「アーネスト、どうせその辺にいるんだろ?」


「無論だ。いつでも主の呼びかけに答えられるように待機するのも仕事のうちだ」


 コリンの呼びかけに答え、物陰からスッと姿を現した。不意に現れたアーネストの姿にコリンは内心驚きつつも、アーネストのいる方へと向き直った。


「アンタはルイス様の配下だが、今回ばかりはオレの頼みを聞いてもらってもいいか?」


「断る……と言いたいところだが、お前の頼みというのは先ほどのやり取りに関することなのだろう?」


 アーネストの察しの良い返答にコクリと頷いて返すコリン。紫色の髪を短く切り揃え、ガタイの良い体格をしている影の男は情報収集に長けている。


 敵地に潜り込んで情報収集するためか、聴覚や嗅覚といった五感が優れているだけでなく、直感もはたらく。そんな頼もしい男に、コリンはシルヴィオの元への使いを依頼した。


「では、行ってくる。シルヴィオ将軍への言伝、しかと承った」


「頼む、これは恐らく一刻を争う事態となるかもしれないぞ……!」


 曇天模様の空を見上げながら、コリンが不安を帯びた言葉を漏らす頃には、アーネストはその場にいなかった。


 コリンがシルヴィオへ伝えるように頼んだこと。それは、ここから西へ徒歩で10日ほど進んだ場所にいるシルヴィオが率いている1万5千だけでも呼び戻せないかということだ。


 孫娘のアレーヌと同じく、忠誠心の高いシルヴィオのことだ。アーネストから主君の危機を聞けば、すぐでも軍勢をまとめてこちらへ来ることだろう。


 ならば、今のコリンに出来ることは、シルヴィオ率いる1万5千が到着するまで、ルイスと共に戦い抜き、帝国軍との戦いを長引かせること。


 もっとも良いのは戦わないことだが、ルイスの態度を見る限り、戦うなと言えば逆鱗に触れることは必定である。むしろ、士気を削いだとして、首を切って晒されそうなもの。


 コリンはシルヴィオへ書状の内容を伝え、援軍を求めたことはコリンには報告せず、胸の内に秘した。胸の内に秘したということはすなわち、アレーヌにも言わなかったということだ。


 アレーヌを経由して、コリンに伝えられれば、シルヴィオへ余計なことはするなと命令するに決まっている。ここは黙っておくが大吉。コリンはそう考え、自身を納得させた。


 そうして、コリンとアレーヌは不安を胸にしながら、主君コリンと共に2万4千の大軍で南下。対する帝国軍もヴォードクラヌ王ルイス自らやって来たことを聞き、敵の総大将を討ち果たせる機を逃すなと全軍で北上。


 シムナリア丘陵地帯から南へ5日ほど進んだ場所に両軍は陣を構えた。その地をケリトデリ盆地という。


 この時に対峙した両軍の陣形は偶然にも、シムナリア丘陵地帯の戦いとまったく同じであった。


 ヴォードクラヌ王国軍は帝国軍を包み込むように、V字型の陣形――いわゆる鶴翼の陣を布いていた。対する帝国軍は三角型の陣形を取っており、魚鱗の陣という。


 帝国軍を囲んでいるだけに、陣形だけ見ればヴォードクラヌ王国軍が優位。しかし、兵数の少ないヴォードクラヌ王国軍には不向きと言える。横に広がることで、敵に突破されやすい。真ん中を抜かれれば、左右に分断され、連携が取れなくなってしまうこともあり得る。


 逆に数が多いにも関わらず、広がらずに固まっている帝国軍は攻守ともに適した陣形である。この陣形にするように命じたのは、策士シリル・アルヌールであり、敵が鶴翼の陣を取ると踏んで、こうするようにジェロームに勧めたのである。


「敵の中央は、このシリル・アルヌールが受け持とう。敵の翼はジェロームの部隊で撃破してくれないか」


「ああ、別になんでもいい。とりあえず、敵の両翼は任せておけ」


「それじゃあ、任せたよ」


 シリルはそう言って自らが指揮する2万8千を三角の先頭部分に据え、敵の中央と向かい合う形を取った。そして、残るジェロームは1万4千ずつ、左右に分け、敵の翼へとぶつけることとした。


 ヴォードクラヌ王国軍の方はと言えば、右翼をアレーヌ、左翼をコリンが担当することとなったわけだが、偶然にもシムナリア丘陵地帯の戦いの時に両翼を受け持った将軍たちの子供たちが大将を務めることとなっていた。


 はたして、此度のフレーベル帝国とヴォードクラヌ王国の戦いの勝敗やいかに――!

第74話「危うきこと累卵の如し」はいかがでしたでしょうか?

今回はルイスが帝国軍との決戦に臨んでいましたが、少々危うい雰囲気がありました……

はたして、コリンの独断で呼び寄せたシルヴィオの援軍が間に合うのか。

そして、肝心の決戦がどのように決着するのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

――次回「生兵法は大怪我の基」

更新は3日後、2/27(月)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ