第70話 新たなる体制
どうも、ヌマサンです!
今回はロベルティ王国の新体制の話になります!
新体制がどのようなものか、見届けてもらえればと思います……!
それでは、第70話「新たなる体制」をお楽しみください!
マリアナを王に戴くロベルティ王国は政治体制の改革に追われていた。その中で、マリアナ自らの発案で、目下復興の最中である聖都コーテソミルへと遷都することとなった。
さすがにロベルティ王国の旧臣たちからは反発もあったが、王都テルクスは聖都コーテソミル以上に荒廃している有様であるため、これは良い機会であると懇ろに説得し、年明けから少しずつ遷都を進めていった。
この遷都により、旧クレメンツ教国領は直轄領という扱いとなった。とはいえ、旧クレメンツ教国領のすべてが直轄領というわけでなく、マルグリットの治める西のサランジェ領とヴェルナーの治める南のタンデル領を除く。
政治体制としては、マリアナを女王として戴く政治体制に変わりないが、その下に6つの大臣職が設けられた。国家財政を統括する財務大臣、王国軍を統括する軍務大臣、外交関係を担う外務大臣、司法を統括する法務大臣、商工業に関する行政を行なう商務大臣、地方の行政や治安維持などの内政を担う内務大臣の6つである。
まず、財務大臣にはこれまでも財政関係の職務をこなしていたフロイド・ウォードが任命された。
続いて、軍務大臣にはこれまでも軍の総帥の役職を担っており、大陸中に武名が轟いているナターシャ・ランドレスが任じられた。
外務大臣はこれまでに外交を担っていた今は亡きクライヴに代わり、交渉ごとに長けたアーロン・カーシュナーが、法務大臣にはフェルナンド・カーシュナーが任命される。
フェルナンド自身、法律など詳しくはなかったが、決断する速度が早いことや事務仕事の処理速度を見込まれての任命となる。
商務大臣にはランドレス家の家臣であるクレア・カスタルドが大抜擢された。経済や産業の発展、港での交易に関してなど、様々な場面で計算する能力が求められる中、クレアの算術に優れていることをナターシャから聞いたマリアナが責任をもって任せることを決めたものである。
そして、最後の内務大臣にはレイラ・イヴェンスが任命された。クレメンツ教国でも内政に関する職務を担当していたこともあり、適任だと判断された。
以上のような6人の大臣が任命される中、ナターシャの統括する王国軍とは別に、女王マリアナ直属の軍隊が組織された。この軍隊を近衛兵という。近衛兵を束ねる近衛兵長の職にはセシリア・ランドレスが任命されている。
さらに、レティシアやトラヴィスといった面々の名が見当たらないわけであるが、それらはすべてナターシャに統括されている王国軍に所属している。
レティシアは王国軍参謀の役職に就き、トラヴィスは王国五大将に数えられている。
王国五大将とは、王国を代表する5人の将軍である。トラヴィスはその筆頭に数えられ、まとめ役を担っている。残る4人はアマリア、ユリア、マルグリット、ヴェルナーとなっている。マルグリットとヴェルナーはそれぞれサランジェ領とタンデル領の領主と兼任する形となる。
だが、王国を代表する五大将に、ルグラン家のアマリアが組み込まれているのは、家柄や素行に関係なく、マリアナがアマリアに信を置いているからに他ならない。
そんなアマリアも、この厚恩に応えるべく軍務に精を出していたところへ、新たな役目を与えられる。
「ボクに王都テルクスを中心とする先祖代々のロベルティ王国領の領主を……!」
「ええ。あなたが適任だわ。同じ五大将のユリアを補佐役に付けるから、北方でヴォードクラヌ王国に睨みを利かせておいてほしいの」
王都テルクスに新たに北方軍政府という役所を設け、ユリアをその長官、アマリアは領主として軍を束ねるように命じられたのだ。
すなわち、その日から王都テルクスを中心とする代々のロベルティ王国領はロベルティ王国ルグラン領と名を改めることとなる。
また、ユリアが長官を務める北方軍政府を手伝うべく、レティシアの家臣であるサイモンとクラウスも派遣されることとなっていた。
こうして、トラヴィス以外の五大将は領主などの職務を兼任することとなったわけだが、それでも王国軍にはトラヴィスの弟であるローラン、その嫡男であるノーマン、ナターシャ配下の猛将モレーノ、その息子ダレン、マルグリットの弟のヨーゼフなど、人材が綺羅星の如く集結。
そんな中、新たな逸材が北方から転がり込んできた。
「えっと、あなたが私の母の兄の子……つまり、従兄だというのは本当のことかしら?」
「へへっ、オレはセミュラ王国の王族だからな。まぁ、とっくの昔に滅亡しちまったが」
鼻の下を人差し指でこすりながら、ニヤニヤと笑う若者が謁見の間に通されている。その青年の容姿は、真紅の髪と藤色の瞳には確かにマリアナの母であるセリーヌの面影がある。
それに、青年がマリアナに見せた長剣と大鎧、兜といった武具にはセミュラ王国の紋章が刻まれている。
青年――リカルド・セミュラは語った。セミュラ王国がヴォードクラヌ王国に滅ぼされて以降、どうなったのかを。
セミュラ王国はかつてシムナリア丘陵地帯に存在した王国であった。しかし、ロベルティ王国が滅ぼされる3年前に滅亡。その際に、現国王夫妻であったリカルドの父母は処断された。
当時、まだ13歳と少年であったリカルドは家臣たちにより逃がされ、さらに南のフレーベル帝国へと流れ着いた。そこで、皇帝ルドルフからの歓待を受けて育ったリカルドは、かのシムナリア丘陵地帯の決戦にも参加。
その後は旧領を与えられ、フレーベル帝国セミュラ領の領主として治世に務めていた。しかし、先の帝国軍の敗戦とヴォードクラヌ王国の独立により、再びセミュラの地は戦乱に巻き込まれた。
「リカルド様!ルイス率いるヴォードクラヌ王国軍2万4千がここへ向かっているとのこと!いかがなされますか!」
「無論、逃げる」
家臣から伝えられた一報を受け、リカルドは即断即決。戦わず、逃げると言い出したのだ。
「に、逃げるですと!?」
「そうだ!セミュラ領の兵を集めても4千にも届かない!こんな無益な戦乱でお前たち民を死なせるわけにはいかないからな!」
「ですが、帝国からの援軍があれば……」
「帝国からの援軍は絶対に来ない。いかに聡明なルドルフとはいえ、今こちらに向けられるほどの余力はない」
リカルドは理解していた。フレーベル帝国が置かれた立場を。だから、援軍が来ない中で無謀な戦いはせず、逃げると言ったのだ。
「逃げるとリカルド様はおっしゃられましたが、帝国へ逃げるおつもりで?」
「いや、帝都に逃げても敵前逃亡の罪で殺されるだけだ。オレの叔母にあたるセリーヌはロベルティ王国の女王マリアナの実母だからな。金輪際、重用などされることはない。あのクソジジイのことだ、ロベルティ王国に対しての便利な交渉材料くらいにしか思ってないだろう」
よって、リカルドはフレーベル帝国には逃げないと言った。それに、ヴォードクラヌ王国に降らないのは、父母の仇に尽くす義理はないからに他ならない。
よって、消去法でロベルティ王国に来た。ここなら女王マリアナの母方の親族として、悪くない待遇を得られると考えたからである。
「……リカルド・セミュラ、あなたの事情は分かったわ」
「では、オレはここに居てもいいのか?」
「ええ。でも、いるだけじゃなく、王国のために十二分に働いてもらうけれど。それが嫌ならどこへなりとも去ると良いわ」
「そりゃあ、オレだって存分に働かせてもらうさ。伊達に帝国の下についていたわけじゃないことを証明してみせる!」
……こうして、リカルド・セミュラはロベルティ王国に仕えることが決まったのであった。
第70話「新たなる体制」はいかがでしたでしょうか?
聖都コーテソミルへの遷都、大臣たちの任命など色々なことがありました。
そんな新体制でロベルティ王国がどう動くのか、これから楽しみにしていてもらえればと思います……!
――次回「有為転変は世の習い」
更新は3日後、2/15(水)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!




