第71話 有為転変は世の習い
どうも、ヌマサンです!
今回はある事件が発生します……!
一体、どんな事件が発生したのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!
それでは、第71話「有為転変は世の習い」をお楽しみください!
リカルド・セミュラがロベルティ王国に仕え始めてから半月が経った頃。あと一月ほどで雪解けを迎え、再び暖かな春が来るだろうと思われる季節。人々は冬の寒さを耐え忍びながら、春が来るのを待ち遠しいと感じていた。
そんな時節に、ルノアース大陸を揺るがす大事件が起こった。その報せは瞬く間に大陸中を駆け巡る。
「フレーベル帝国の皇帝ルドルフが……死んだ?」
アーロンからもたらされた情報にナターシャは耳を疑った。老いてなお野心と覇気に満ち溢れたルドルフが死んだというのだ。実際に手合わせしたことがあるナターシャだからこそ、受けた衝撃は計り知れない。
ロベルティ王国では、その日のうちに大臣を始め、重臣一同が謁見の間へと召集がかかることとなった。
集まって来た重臣一同も事態を完全に把握することができておらず、みな口元と体の動きがせわしない。
そんな中、外務大臣であるアーロンが今朝入手したばかりの速報を謁見の間で、改めて一同に披露した。やはり、ナターシャも耳にしていた通り、皇帝ルドルフは死んだ。
――それも、ヴァルダロス王国での戦場で、だ。
以前からフレーベル帝国はヴァルダロス王国の攻略には手こずっているのは、ロベルティ王国の者たちは知っていた。だが、まさか皇帝が戦死するようなマズい戦が起こったこと自体、信じられないことであった。
「オレが入手した限りでは、皇帝ルドルフは国境付近でにらみ合っていた両軍が激突した際、ヴァルダロス王国が保有する魔導砲や魔導銃とかいう、未知の新兵器の前に倒れたという」
皇帝ルドルフの持つ瞬魔紋でも、降り注ぐ魔導砲や魔導銃の弾丸の雨をかわすことはできなかったのだという。瞬魔紋とは、目にも止まらぬ速さで動き回ることができるという紋章の力。
紋章には炎魔紋、氷魔紋、風魔紋、水魔紋、地魔紋、雷魔紋、光魔紋の7つの属性に大半は分類することができる。だが、それ以外にも7つの紋章が存在する。
1つはルドルフの瞬魔紋。他には、ナターシャが持つ空間を切り裂く空魔紋。精霊の声を聞き、気候を読むことのできる霊魔紋。これはレティシアが持つ紋章である。
他には、爆発を起こす爆魔紋、重力を操る重魔紋、身体を鋼のような硬度へと変化させてしまう鋼魔紋、思ったような道具を自在に作り出せる械魔紋がある。
爆魔紋は帝国三将の1人、スティーブ・エリオットが所有している。帝国最強と謳われるヴィクター・エリオットが持つ紋章は重魔紋。
残る帝国三将の1人、カルロッタ・ダルトワが有するのは鋼魔紋となるわけだが、あと1つの械魔紋を誰が持つのか、未だに明らかになっていない。
しかし、魔導砲や魔導銃などという未知の新兵器をヴァルダロス王国が使用したという情報と照合すれば、ヴァルダロス王国に残る械魔紋の使い手がいる可能性が限りなく高いことは分かる。
そして、械魔紋により生み出されたと思われる新兵器の前に、虚しくも瞬魔紋の使い手であるルドルフ・フレーベルは敗れ去った。紋章使いが死亡した場合、死亡した人物が有している7属性に属さない紋章は消滅する。
しかし、ナターシャたちが持つ7属性に属さない紋章は大陸に1つずつしか存在しないため、その紋章は死んだ者の血縁や生前親しかった者などの下に、突如発現したりすることがある。
もし、血縁者や友人などに現れなくても、大陸のどこかで産声を上げるため、常に7つの紋章はどこかに存在し続ける。
すなわち、ルドルフの持つ瞬魔紋はこの大陸にいる者の誰かに、発現する。いや、すでに発現していることだろう。
「さらに、戦いの中で皇帝ルドルフだけでなく、帝国三将の1人であるスティーブ・エリオットも戦死していることが判明した」
このアーロンからもたらされた次なる情報にも、謁見の間に激震を走らせた。すなわち、スティーブ・エリオットの持つ爆魔紋もこの大陸にいる誰かに発現したということ。
こんな予想外の出来事に、ロベルティ王国は動揺に包まれたが、これはフレーベル帝国と敵対しているロベルティ王国とヴォードクラヌ王国の両国にとってはまたとない好機。
ナターシャは軍務大臣として、雪解けを待たずに遠征を開始することを進言した。ナターシャ個人としては、火事場泥棒をはたらくようで気が引けたが、この機を逃すわけにはいかなかった。
だが、ナターシャの提案に異を唱えた者が1人。かのレティシア・クローチェであった。彼女はナターシャの下で、王国軍参謀の地位にいる。
レティシアは王国軍の参謀として、率直な意見を述べた。まず、今から準備を始めても完了するまでに半月はかかること。さらに、今後の帝国とヴァルダロス王国の動きを、まずは静観すべきだということ。
この2つの意見をもって、今すぐの出兵に反対した。あくまで、雪解けを待たずに遠征することに反対したのであって、雪解けしてからの遠征は兼ねてよりの計画通りであるため、反対はしていない。
軍略においてはレティシアの実力は確かである。そのことをかんがみて、ナターシャはレティシアの策を容れるよう、マリアナに口添えした。
マリアナもレティシアのことを信頼しているため、レティシアの言うように遠征は雪解け後にするよう改めて命じた。こうして、遠征の時期は一先ず決定を見た。
そんな帝国との一戦を控える中、同盟国であるヴォードクラヌ王国はどうしているかといえば。
「ほう、あの老いぼれめ、ようやくくたばったか」
「ハッ、帝国三将のスティーブ・エリオットも戦死し、帝国は驚きと悲しみに包まれております」
「ならば、兵を動かすは今だな。かつての領土奪回に留まらず、このまま帝国も我がものとしてやろう」
旧領さえ奪還できればよいと考えていたルイスの心に、ぼうっと猛々しい野心という名の焔が灯った。現状、ヴォードクラヌ王国は滅亡直前に有していた領土の9割は奪い返していた。
とはいえ、現在の同盟相手であるロベルティ王国を除いた状態を10割としての9割となる。だが、現在有している兵力は5万を超える。旧領をすべて回復すれば兵数は6万に届く。
今のロベルティ王国の半分に満たない兵力だが、両国の兵数を併せれば、20万を超えることとなる。
そして、ルイスはロベルティ王国と同じく、雪解けを待って兵を進めることとしていたが、こちらは時期を早めることを決断した。
「よし、シルヴィオとアレーヌ、コリンにも伝達しておけ。『雌伏の時は終わった。憎き帝国と雌雄を決するは今をおいて他にない!』とな」
「承知しました」
この時のルイスの表情は限りなく覇気の満ちたものであり、弱冠22歳とは思えない、北方の覇者としての片鱗を覗かせていた。
雪解けを待ってからの遠征を決め込んだロベルティ王国と、雪解けを待たずに侵攻を開始することを決めたヴォードクラヌ王国。
帝国を築き上げた初代皇帝の死を乗り越え、帝国は南北の脅威を退けることはできるのか。
フレーベル帝国の皇位は今は亡きルドルフの孫娘、ソフィアへと受け継がれる。ルイスよりも3つ年が上なだけの彼女にどこまでやれるのか。
帝国がルノアース大陸を支配すると思われていた情勢は、1人の男の死により、目まぐるしい変化を遂げていくこととなった。
有為転変は世の習い。移り変わりが激しさを増す中で、大陸を制覇するのは、フレーベル帝国か、ヴァルダロス王国か。はたまた、ロベルティ王国か、ヴォードクラヌ王国か。
――新たなる激動の時代の幕開けである!
第71話「有為転変は世の習い」はいかがでしたでしょうか?
まさかのルドルフが退場という大事件が……!
その帝国の動乱を突いてロベルティ王国とヴォードクラヌ王国がそれぞれ動き始めていました!
はたして、両国の動きがどうなるのか、引き続き見守ってもらえればと思います……!
――次回「死んで花実が咲くものか」
更新は3日後、2/18(土)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!




