表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランドレス戦記〜漆黒の女騎士は亡き主の意思を継ぎ戦う〜  作者: ヌマサン
第3章 新たなる王国
68/187

第68話 降りかかる火の粉を払って

どうも、ヌマサンです!

今回はロベルティ王国で色々な変化が起きた、という話になります!

はたして、どのような変化が起こったというのか……!

それでは、第68話「降りかかる火の粉を払って」をお楽しみください!

 謀反人ジェフリーを討ち、マリアナが再び玉座についたロベルティ王国。帝国からの一方的な従属破棄により思わぬ戦乱に見舞われた中、なんとか戦乱を鎮めることができた。


 そんな中において、ロベルティ王国の周囲では様々な変化が起きていた。主に大きな変化は2つに集約されるのだが、これは西と南から1つずつ。


 まず、西で起こった変化。これはかなり大きな変化であった。プリスコット王国から撤退したルイスは、国元へ戻るなり帝国からの独立を宣言。


 今回の敗戦により、北方での帝国の権威がガタ落ちになったこともあり、機会は今だと判断したのだろう。そして、ルイスは独立を宣言した後、ヴォードクラヌ王国を建国。


 『最盛期の領土を取り戻す』と大義名分を掲げ、すでに帝国によって取り上げられていた領土の奪回に動き始めていた。その一環として、ルイスたちヴォードクラヌ王国の方からロベルティ王国へ、同盟の申し入れがあった。


 これについては、マリアナはナターシャやトラヴィスといった重臣たちの意見を聞きながら、受け入れるという方針で一致を見た。


 ただ、これまで治世で頼りにしていたセルジュもクライヴもこの世にないことを、マリアナだけでなく、ロベルティ王国の主だった面々は早くも痛感させられていた。


 ともあれ、ルイス率いるヴォードクラヌ王国とは同盟を締結。これにより、西からの脅威は消え去った。


 さらに、ヴォードクラヌ王国は独立を宣言する前に、ドミニクたちが戦死したキバリス渓谷にて、ナターシャたちが討ち漏らした帝国兵4千数百を討ち取っていたのである。


 それも、ルイスがアーネスト経由で、シルヴィオという家臣に命じていたこと。シルヴィオはルイスの命令を受けて、弓兵を主力とする3千の兵を率いて待ち伏せ、帝国領へと撤退する途中の帝国軍を急襲。これを一兵残らず討ち取ってしまったのだ。


 ただ、その中にはシドロフ王国の国王であるカイルも混じっていた。理由として、ウルムクーナ川の戦いでの敗戦により、自身の国王としての立場に危険を感じたからなのか、帝国で再起を図ろうという思惑があったのか。


 あくまで推測の域を出ないが、敗走中の帝国兵と共に帝国へ向かっていたのは確かである。ただ、今回ばかりは運が悪かったとしか言うほかなかった。ともあれ、現国王が結果として死亡したことで、シドロフ王国は権力の空白地帯と化していた。


 その空白地帯をどうするか。協議していたところへ、南からもう一つの変化が伝わったのだ。


「マリアナ様、フォーセット王国の女王クリスティーヌ陛下と、プリスコット王国国王であるラッセル陛下がお目通りを願っております」


「国王が二人揃って……!?これは一体どういうことなの?」


 マリアナも急な報せに驚きつつも、両国王を玉座の間へ通すように通達。少し時間が空いたものの、3国の王が謁見の間で顔を合わせることとなった。


「マリアナ陛下、忙しい中お目通りが叶い、恐悦至極に存じます」


「こちらこそ、お出迎えもせず申し訳ありません。それで、今回のご来駕はどういったわけでしょうか?」


「ふふ、妾もラッセル陛下と考えていることが同じだと知った時には驚いたのじゃが……」


 ラッセルに代わり、クリスティーヌが王都テルクスまでわざわざやって来た理由についての説明を行なった。この理由にはマリアナも内心驚かされたが、表情には出さず、静かに最後まで言葉を聞き届けていた。


「……つまり、プリスコット王国とフォーセット王国の両国はロベルティ王国に従属したい……と?」


「いや、従属ではないさ。国ではなく、ロベルティ王国の中の領地の1つとして扱って欲しいということさ。我々なら、ロベルティ王国プリスコット領……といった具合にね」


 そう、両国の国王は国を維持したまま配下に収まる従属ではなく、ロベルティ王国の領土の一部に、つまり併合を望んだのである。ラッセルとクリスティーヌは思わぬところで考えが割符を合わせたかのように一致。


 考えというのは、このまま王国の体制を維持するよりも、ロベルティ王国の領土として見られる方が得られる利益が大きいということ。


 もちろん、他にも理由は多岐にわたるが、どうあっても併合される方が理に適っていると判断したことは紛れもない事実。


 だが、併合については難しい問題であり、マリアナは大いに悩んだ。その末に、両国の総意であるならば受け入れるということをラッセルとクリスティーヌにはその場で返答。


 正式な文書は後で送付することとし、この日をもってプリスコット王国とフォーセット王国はロベルティ王国へと併合された。


 これにより、プリスコット王国はロベルティ王国プリスコット領、フォーセット王国はロベルティ王国フォーセット領と改められた。


「マリアナ様、ここまで来たのならシドロフ王国も併合してしまってはどうでしょうか?むしろ、シドロフ王国のまま残しておくわけにもいかないでしょうし……」


「ええ、ここまで来たらナターシャの言う通り、シドロフ王国も併合するわ。国王のいない状態で放置するわけにはいかないもの」


 ナターシャからの提言を受け入れてからのマリアナの動きは実に迅速であった。数日後にはシドロフ王国を併合するという旨をシドロフ王国の王都パレイルへ掲示した。


 マリアナやナターシャの予想では反対運動が展開されると踏んでいたのだが、国民たちは反対どころか歓迎する姿勢であった。


 これには、レティシアの根回しがあった。こうなることを見通して、レティシアがシドロフ王国の民衆にロベルティ王国の統治ぶりを噂として広めさせていたのである。


 中でも税制面でロベルティ王国の方が民に優しいことなどがシドロフ王国の国民から好感を得た一番の理由なのであるが、かくしてシドロフ王国の民衆はロベルティ王国への併合を受け入れた。


 そして、旧シドロフ王国の統治を任されたのは、この男であった。


「ナターシャ、旧シドロフ王国領の領主には誰が適任だと思うかしら?率直な意見が聞きたいわ」


「適任者ですか……。でしたら、忠勇無双の者が1人ほど。名は――」


 この時、ナターシャがマリアナに推挙したのが、数十倍の敵にも怯まず玉砕覚悟で籠城戦を挑み、城を最後まで守り抜いたアルベルトであった。彼は現在、身柄をロベルティ王国預かりとされている。


 すなわち、アルベルトは即日マリアナによって、領主に任ぜられた。さすがのアルベルトもこのマリアナからの突然の命令には驚いたが、王命に逆らうことも出来ず、引き受けたのである。


 こうしてアルベルトが旧シドロフ王国領の領主となったわけだが、領地の名をアルベルトの妻、シュテフィの家名であるロメロに決定しようかという時、アルベルトから要望が届けられる。


 要望の内容は、領地の名を『ロメロ』ではなく、『ラローズ』としたいということであった。なんでも、アルベルトの曽祖父はシドロフ王国の貴族であったが、ロメロ家の台頭で没落したとのことで、貴族であった頃の家名が『ラローズ』だったため、再び『ラローズ』の家名を名乗ることを許してほしいという内容であった。


 無論、マリアナたちには拒む理由など無い。すぐさま、アルベルトに『ラローズ』の家名を名乗ってよいと返書を出し、旧シドロフ王国領は名をロベルティ王国ラローズ領と改められた。


 こうして、ロベルティ王国に南の3国が併合され、旧クレメンツ教国の領土を加え、南北にわたる広大な領土を支配することとなった。


 ――これは北方の小国に過ぎなかったロベルティ王国が、ルノアース大陸屈指の大国へとのし上がった歴史的な瞬間であった。

第68話「降りかかる火の粉を払って」はいかがでしたでしょうか?

今回でロベルティ王国に南の3国――シドロフ王国、フォーセット王国、プリスコット王国が併合されていました。

さらに、ヴォードクラヌ王国が再度建国され、ロベルティ王国の同盟国ということに。

ともあれ、ここからロベルティ王国がどう動いていくのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

――次回「大義親を滅す」

更新は3日後、2/9(木)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ