第67話 江戸の敵を長崎で討つ
どうも、ヌマサンです!
今回はジェフリーによるフォーセット王国攻めになります……!
はたして、帝国の後ろ盾で国王になったジェフリーがどんな末路をたどるのか――
それでは、第67話「江戸の敵を長崎で討つ」をお楽しみください!
ウルムクーナ川の戦いにて帝国軍とシドロフ王国軍が壊滅し、プリスコット王国からルイス率いる軍勢がヴォードクラヌ領へと撤退を始めた頃。
ジェフリー率いる1万2千はフォーセット王国の王都レミアムの包囲を続けていた。しかし、各方面で帝国軍不利に戦況が動いていることや、ナターシャ率いる大軍が迫ってきていることなど、知る由もない。
ひたすらに情報を集め、ロベルティ王国と戦うか否かを静観し続けていたルイスとは異なり、まったくといっていいほど情報を集めずに怒りに任せて戦いへと突っ走るジェフリー。
両者の戦い方は正反対と言ってもいいものであり、結果までも反対になってしまいそうな、危険な香りまで醸し出している。
ともあれ、ジェフリーに率いられた兵は帝国軍から借り受けた兵が9割近くを占めているが、残る1割はロベルティ王国から無理やり徴兵してきた者たち。
ロベルティ王国で無理やり徴兵した者たちの戦意は低く、かといって帝国兵たちもよそ者であるジェフリーに従っているわけではない。
そんな兵士たちがいかに数を頼みに攻めようとも、籠城するフォーセット王国軍6千は一糸乱れぬ奮戦を続け、20日以上にわたって寄せ手を退け続けていた。
「ルービン、戦況の方はどうなっておるのじゃ?」
「ハッ、寄せ手は戦意など無いに等しく、このまま寄せてくる敵を撃退するだけで充分すぎるほどの勝ちを収められます」
「ふむ、相手がいかにジェフリー・ルグランとはいえ、油断してはならぬ。それに、ナターシャたちロベルティ王国の臣下たちがあやつの暴挙を黙って見過ごすとも思えぬ。近いうちに動きがあるじゃろうから、戦の流れの変化を見逃すでないぞ」
「無論、承知しております。万事、お任せを」
ルービンはフォーセット王国の女王であるクリスティーヌとの謁見を済ませると、再び最前線である城門へと戻る。
最初、ルービンはジェフリーを見た時、『ルグラン』の家名を聞いて焦りはしたが、彼が恐れているのは勇猛で知られる妹の方。今回の相手は兄の方だと分かって、ホッと肩の力が抜けたほどだった。
そんな敵からも侮られるジェフリーだが、戦の腕前は事実として微妙であり、兵を指揮することに関しては妹に遠く及ばなかった。そんなわけで、フォーセット王国が干戈を交える相手は『アタリ』であった。
ルービンの見立てでは、このまま十数日持ち応えれば、敵軍を壊滅させられる。逃亡兵が続出し、攻めてくることすらなくなるだろう。そう踏んでいるわけだが、ジェフリー率いる軍の内情を見れば、その予想は正しい。
事実、すでに逃亡兵が出始めており、ジェフリーがいかに手を尽くそうとも、逃げ出す兵が後を絶たない。そんな有様を見て、渋々配下に加わったモレーノとダレンは嘲笑っていた。
モレーノたちが指揮するのはロベルティ王国で無理やり徴兵された兵1千2百。モレーノ率いる部隊からは逃亡兵など、1人も出ておらず、それは全員が直属の上官であるモレーノに心から従っているからだ。
「ダレン、この戦は負ける。その時には……」
「分かってるって。すでに手は打ってある。後は、面倒な帝国兵どもが死に絶えてくれれば、それでいい」
夜の陣幕にてモレーノとダレンはヒソヒソと密談をしていた。2人とも心から従っておらず、こんなくだらない戦で兵を死なせまいと、果敢に攻める――フリを続けていた。
だが、いつかはジェフリーにこのことがバレる。その前に、なんとしてもジェフリーたちには痛い目にあってもらわなければならない。
そう考えて密談をした翌朝のこと。突如、南西から2万を超える騎兵が姿を現したという一報が飛び込んできた。この軍勢こそ、ナターシャがフォーセット王国方面へと派遣したマルグリット率いるサランジェ領の兵士たち2万4千。
精鋭騎馬隊で知られるマルグリット指揮するサランジェ族の戦士たちは獲物を見つけた猛獣の如く、王都レミアムを包囲するジェフリーたちへと牙をむき、襲いかかる。
元より逃亡兵が相次ぎ、戦意もない軍に精強なサランジェ族の戦士たちが負けるはずなど無く、瞬く間に帝国兵たちは殺戮の憂き目を見た。だが、その中に統率のとれた部隊が1つ。モレーノ隊だ。
彼らは速やかに城攻めを放棄し、迅速にジェフリーの本陣へ撤退。総大将であるジェフリーを戦禍に巻き込まれる前に救出し、王都テルクスへと撤退していくのであった。
総大将が逃げ、統率のとれなくなった帝国兵たちはあっさりと投降。こうして朝に始まった合戦は昼前には終了。あまりの腑抜けた戦に、マルグリットも拍子抜けしていた。
「プリスコット王国の将軍、ルービンだ。援軍、感謝する」
「なに、アタシらだって頼まれたから来ただけさ。ま、あとの追撃は任せておきな」
「ルービン将軍、私はヨーゼフ。こっちは姉でサランジェ領領主のマルグリットよ。私たちが来たこと、女王様に伝えてもらっておいてもいいかしら?」
「あ、ああ。もちろんだ。言われずとも、今から伝えに行く。貴殿らの武運を祈る」
手をひらひらと振りながら、ルービンはマルグリットとヨーゼフの姉弟に背を向け、クリスティーヌのいる謁見の間へ。援軍が来たことで、敵が壊滅したことなどを報告するために。
そして、ルービンと別れたマルグリットとヨーゼフは昼食を取り、交代で仮眠を取った後で王都テルクスへと出発。その動きの迅速さたるや、フォーセット王国の者たちから称賛されるほどの鮮やかさであった。
「おい、王の帰還だ!早く門を開けろ!」
数日後、無事に王都テルクスまで戻って来たジェフリーであったが、誰も門を開けて王都へは入れさせないことを不審に思っていた。
そんな中、城門に切り揃えた灰色の髪に、水色の瞳が特徴の青年が姿を現す。
「フロイド!早く門を開けろ!貴様は私の、ロベルティ王国の家臣だろう!」
「フッ、笑わせるな。王位を簒奪した逆賊が!お前の家族はすでに捕らえ、獄に下した!」
「獄に下しただと!?ふざけるな、貴様のような一文官風情が王族にそんなことをしてタダで済むと思うな!」
冷静に問答するフロイドに対し、怒りで周りが見えなくなっているジェフリー。自らの母であり、王太后となっているアリソンと自らの妻である王妃、それに王子とした息子までもが牢獄に送られたとあれば、冷静さを失うのも無理はないのかもしれない。
「すでに、マリアナ様からも許可は下りている!『逆賊ジェフリー・ルグランを討て』と!」
「なに、マリアナ様が……!?」
驚きに表情を歪めるジェフリーの首は、次の瞬間には落ちていた。落としたのは他ならぬモレーノ・カスタルドである。息子のダレンがその首を拾い上げ、討ち取ったことをフロイドに証明する。
すると、ジェフリーの首が城門が開くカギにでもなっていたかのように、城門はあっさりと開いた。モレーノとダレンは他の兵士たちにジェフリーと同じ末路をたどるつもりなら、この場で名乗り出るように怒鳴りつけたが、そんな人間は1人としていなかった。
虚しいことであったが、罪なき忠臣を殺して王を僭称した者の末路としてはお似合いの最期だっただろう。獅子身中の虫は獅子の体内でしか生きられなかったとはいえば、それまでの事であろうか。
――ジェフリー・ルグラン。享年27。
ジェフリーの死により、ロベルティ王国で起きた内乱は帝国を始めとする近隣諸国に動乱をもたらしながらも、どうにか終息。その後は、マリアナが再び王位につき、ロベルティ王国は元の体制に戻るべく、再び脈動していくこととなる――
第67話「江戸の敵を長崎で討つ」はいかがでしたでしょうか?
今回はついにジェフリー死亡――
ジェフリーに投降せざるを得なかった、モレーノとダレン父子、フロイドからも裏切られる結果に。
今回のジェフリーによる内乱で混乱した国内をどう元に戻していくのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!
――次回「降りかかる火の粉を払って」
更新は3日後、2/6(月)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!




