第46話 『母親』
どうも、ヌマサンです!
今回は『母親』についての話になります!
どんな話になるのか、楽しみにしてもらえればと思います!
それでは、第46話「『母親』」をお楽しみください!
シャノンを剣術指南役として召し抱えたロベルティ王国。これにより、兵士たちの剣術の技量は少しずつではあるが、上昇しつつあった。
冬の間も春の遠征に向けて、準備を整えられるところから着実に整えつつあった。今回はルイス率いる帝国軍は加勢することはできない。帝国の北方に位置する領地からも、ヴァルダロス王国との戦に駆り出されたためである。
この時、フレーベル帝国はヴァルダロス王国相手に苦戦を強いられていた。ヴァルダロス王国はルノアース大陸最南端に位置している。
ロベルティ王国の倍近い国土と兵力を有する国である。それでも、動員できる兵力は5万ほどである。そんなクレメンツ教国の半分も動員できない国に帝国は苦戦していた。
その理由は謎の兵器にあった。奇妙な筒から光の玉が飛来し、地上で炸裂するのである。筒の直径が大きいものを魔導砲、小さいものを魔導銃と呼ぶ。
飛距離も弓矢の倍近いため、帝国軍は接近するまでに甚大な被害が出る。これにより、帝国軍は戦を仕掛けるたびに負ける状況となっていた。
このような状況が重なり、フレーベル帝国からの援軍は出せないとロベルティ王国にも通達が届いた。それと同じものは、言うまでもなくシドロフ王国、フォーセット王国、プリスコット王国へも届けられている。
そして、来春の遠征で動員可能な兵数としては、ロベルティ王国軍2万2千、シドロフ王国軍4千4百、フォーセット王国軍4千8百、プリスコット王国軍5千2百のあわせて3万6千4百。
前回の遠征よりも1万以上少ない数ではある。されども、帝国が攻めろという以上、攻めなければならない。
だが、帝国から言われたから遠征するわけではない。今回の遠征では南から帝国軍が攻め立てることはない。つまり、南からの脅威はなくなったことになる。これにより教会は信者を増やすべく国土を拡大しようとしていることは、教皇パトリックも演説で語っていたと情報が入っている。
すなわち、こちらから攻めずとも、向こうから攻めてくることに他ならない。そのことが伝わったことで、3国の遠征意欲は極限にまで高まっていた。ましては、前回の遠征では一際戦意の低かったシドロフ王国など、他の国が動かなくても遠征すると息巻いているほどだ。
ともあれ、兵士たちの士気の高さは前回の比ではない。あとは、攻め込んでからクレメンツ教国がどう出るかにかかっている。また、遠征も兵糧の事があるため、なんとしても秋までにはケリをつける必要がある。
すなわち、相変わらず長期戦はできず、ただただ短期決戦で決めなければならない。
「ナターシャ。今回もロベルティ王国軍の総帥として出陣してくれるかしら?」
「ハッ、陛下の仰せのままに」
「ふふ、ナターシャも前の戦の雪辱は晴らしたいでしょう。ですが、焦らず無事に生きて帰ることを優先しなさい」
「心得ております。願わくば、勝利と共に帰国したいものです」
マリアナは女神のような優しい微笑みをもって、ナターシャを見る。ナターシャもマリアナを仕えるべき女王として敬い、命令に従っている。そんな主従関係も、早くも3年目に突入していた。
「マリアナ様も即位なされた時より、さらに王としての風格が増したように感じます」
「そうかしら?自分ではあまり実感が湧かないのだけど……」
ナターシャの言葉に嘘偽りはない。即位した時と比べれば、段違いに上に立つ者としての貫禄が備わってきている。とても、まだ11歳の少女とは思えない。
そういうナターシャとしても何度も軍を率いているうちに、総帥としての落ち着きや威厳が備わって来ており、まさしく経験により人が育っているという証明であろう。
そうして話は次の遠征の話へと移り、その話の中でナターシャは遠征の将軍たちの役割や、留守に残る者たちの一覧表を提出した。
遠征に向かう主だった将軍たちには、総帥のナターシャを筆頭に、総帥補佐の役職には千軍万馬の将軍であるトラヴィス、ローランの兄弟を据えた。
そして、先鋒には勢いのある若手を配置。先鋒部隊の大将にはアマリア、次鋒にはローランの嫡子ノーマンといった具合に。また、後ろ備えには冷静な判断ができるユリアを置き、物資の運搬役にはクレアを添えた。
留守として本国に残る者として、内政を預かる宰相セルジュ、外交を受け持つクライヴが主である。文官のフロイドは引き続き王国の財政を管理し、ジェフリーは王宮の守備を統括し、自身も西門の守備を受け持った。
残る北東、南東の門の守将にはそれぞれ、モレーノ、ダレンの両名を添え、王城の守りを固めさせた。
そして、マリアナが疑問に思ったことが1つ。この遠征に出る者と残って留守を守る者の名簿の中に、しかるべき人物の名がどこにも記されていないことだ。
「ナターシャ、名簿のどこにもセシリア・ハワードの名が見当たりませんが……」
「セシリアは今、戦場に出すわけにはいかないのです」
「なにか、セシリアが軍中で問題でも起こしたのですか?」
「いえ、そうではなく……」
ナターシャは許可を貰い、マリアナへと耳打ちした。耳打ちにて伝えられた内容に、マリアナも大いに喜んだ。
「そうだったのね……!セシリアのお腹に赤ちゃんが……!」
「はい。身重な彼女を戦場に引っ張り出しては、お腹の中の子に触るでしょうから」
セシリアが出陣を控えさせられた事情は『おめでた』であった。他でもない子を持つ身になるセシリアもクライヴも驚いていた。
なにより、妊娠が発覚したのも数日前である。予定では、今年の秋の半ばには出産を迎えるとのことであった。
セシリアの妊娠をどこから聞きつけたのか、トラヴィスは早々にセシリアとクライヴの下を訪れており、これには話を聞く者みなが苦笑するほどであった。
「それにしても、昨年末にはフロイドにも元気な男の子が生まれたし、めでたいことが続いているわね」
そう、フロイドとヘレナの間にも男子が生まれていた。あのセルジュの屋敷でのパーティーの折に、ヘレナのお腹にいた子供である。
フロイドとヘレナの間に生まれた子供の名はディーンという。ナターシャも屋敷を尋ねた際に、一度だけ抱かせてもらった。
ともあれ、今の時点ではセシリアのお腹にいるのが男の子なのか、女の子なのかは分からない。それこそ、生まれてからのお楽しみといったところか。
「これだけ懐妊が相次ぐと、次はナターシャかもしれないわね」
クスッとからかうような笑みをこぼしながら、マリアナはナターシャの方を見つめる。
「生憎と私には相手もおりませんから、それはないでしょう」
ナターシャは今年で25歳となったが、色恋沙汰がまったく聞こえてこないのである。ナターシャほどな麗人からこうまで浮いた噂がないのは、周りもいぶかしんでいるところ。
ともあれ、本人が色恋沙汰に消極的なのはカルメロ一筋であることに他ならないのだが、それを公言することはできないため、周囲からすれば謎に包まれているように見えてしまうのだ。
「そういうマリアナ様も、10年後には母君になっておられるかもしれません」
「そう言われても、まったく想像もつかないわ。だって、自分の母親の顔も見たことがないんですもの」
マリアナからしてみれば、何気ない一言であったが、その言葉はナターシャを含め、周囲の者には重く突き刺さった。
うかつに母親の話など、マリアナの前でするべきではなかった。みな、そう思っていたが、時すでに遅しである。そこからはナターシャが取り繕うように会話をつなげ、マリアナとの謁見を終えたのであった。
第46話「『母親』」はいかがでしたでしょうか?
今回はフロイドとヘレナの間に子どもが生まれたという話や、セシリアが身ごもったという話が出てきてました。
失う命もあれば新たに芽吹く命もある――
次回からは新章開幕するので、楽しみにしていてください!
――次回「春、再び遠征へ」
更新は3日後、12/5(月)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!




