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ランドレス戦記〜漆黒の女騎士は亡き主の意思を継ぎ戦う〜  作者: ヌマサン
第2章 帝国への従属
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第37話 ルグラン邸でのパーティー

どうも、ヌマサンです!

今回はサブタイトル通り、セルジュの自宅でのパーティーの話になります!

はたして、どんなパーティーになるのか……!

それでは、第37話「ルグラン邸でのパーティー」をお楽しみください!

 季節は秋。今年のロベルティ王国は3国の平定という戦争があり、来年にはクレメンツ教国との一戦が控えている状況にある。


 そんな中、気候が良かったことも相まって稲や野菜の収穫量は例年よりも多く、豊作となっていた。豊作となったことで、王国内から税として納められる農作物も多くなり、来年のクレメンツ教国への遠征における食料の心配をする必要がなくなった。


 食料と租税の管理については宰相のセルジュがフロイドと共に行ない、遠征における必要な食料がどの程度かなどの計算までを行なった。そんな事務的な仕事が終わったのは秋の終わりであり、道に落ち葉が敷き詰められていた。


「フロイドよ、今週の26日は空いているか?」


「今週ですか?今週の26日は休みのはずですが……何か急な仕事でも入ったのですか?」


「ああ、すまない。誤解させてしまったか。仕事ではなく、26日にパーティーを開くから、良ければ来ないかという誘いだ」


「パーティーというのは、セルジュ様のお屋敷ですか?」


「そうだ。他にはクライヴにも声をかけている。文官たちの仕事もひと段落したことだし、集まってパーッとやろうと思ってな」


 王宮内の広い廊下を歩くセルジュとフロイドは、週末にセルジュ邸で開かれるパーティーの話をしていた。


 宰相であるセルジュから直接声をかけられたことに喜びつつ、フロイドは帰宅した。パーティーへはもちろん参加すると即答している。


「あなた、おかえりなさい」


「ああ、今帰ったよ。ヘレナ」


 自分の屋敷へ帰ったフロイドは寝間着へと着替えていた。着替えながら妻のヘレナと今日あったことなどをお互いに報告するのが日課となっている。


「そうだ、26日にパーティーに誘われたよ」


「パーティーかぁ……なんだかお貴族様みたいで楽しそうだね」


「ははは、ロベルティ王国に仕える今じゃ私たちも立派な貴族だ」


 フロイドたちがヴォードクラヌ王国に仕えていた頃、ウォード家は下級貴族でパーティーなどに呼ばれる家柄ではなかった。そのため、2人とも貴族のパーティーには参加したことはなく、憧れの感情があった。


「それで、パーティーというのはどこで行なわれるの?」


「ああ、聞いて驚くんじゃないぞ?なんと、宰相のセルジュ様のお屋敷だ」


「まぁ!宰相様のお屋敷で……!」


 フロイドがドヤ顔を決め、ヘレナもフロイドの予想通りの反応をしていた。だが、ヘレナの表情は驚きというものがありながら、喜びという感情も感じ取ることもできる表情であった。


「もちろん、ヘレナも参加しても良いとセルジュ様から了承を得た」


「本当ですか!?」


「ああ、本当だとも」


 にこやかな会話をする2人。その後もセルジュ邸でのパーティーの話は続いた。が、話が一段落した頃にヘレナはポツリと呟いた言葉があった。


「あなた、私は身重だから、やはりパーティーの参加は控えようかなって思うんだけど」


「やっぱり、パーティーの参加は厳しいか?別に参加したからといって、最後までいる必要はないし、途中で帰ることも可能だ。行くだけ行ってみるのも悪くないと思うが……」


「う~ん、それじゃあ、行くだけ行ってみてもいいかな?」


「もちろんだ。私も初めてのパーティーはキミと参加したいからな」


 普段は表情の硬いフロイドであるが、妻のヘレナの前では喜怒哀楽がはっきり分かるほどに表情が豊かなのであった。


 こうしてフロイドとヘレナは週末のセルジュ邸でのパーティーを楽しみに、それまでの日々も幸せを噛みしめながら過ごしていくのであった。


 そして迎えたパーティー当日。セルジュ邸は前日から準備に追われていたが、準備をする使用人たちも楽しそうに買い出しに行ったり、飾りつけをしており、屋敷中がお祭り騒ぎであった。


「アリソンよ、どこへ行くつもりだ?今日は屋敷でパーティーを開くというのに」


「何よ、あなたが勝手に開いたパーティーじゃない。それに、貧乏貴族ばかり集まる場に居ては、貧乏がうつりますわ!」


 アリソンに怒鳴り返されては、さしものセルジュも返す言葉もなかった。もう好きにさせようと諦めたような表情で外出するアリソンを見送り、自身もパーティーの準備を手伝うべく屋敷内に戻っていった。


「父上、私も今夜は出かける用事があるので、失礼します」


「なっ、ジェフリー!そなたまで勝手な……!」


 妻のアリソンに続き、嫡男のジェフリーまでもがパーティーの日に勝手な外出をしてしまった。しかも、パーティーのある夜にも戻らないと言うではないか。


 宰相として王国内では文官武官問わず頼りにされるセルジュも、家庭の方では苦労人であった。


「父さん」


「アマリアか。そなたまで外出するというのか……」


「……?ボクは外出はしませんよ?明日はナターシャお姉さまと狩りに行く約束はしていますが……」


 てっきりアマリアまでも外出するのかと思っていたセルジュの表情は暗かったが、アマリアの返答を聞き、表情は一気に明るくなった。


 こうしてパーティーの支度は着々と進み、日が暮れた。日が暮れるのも早くなり、早くも冬の気配が漂い始めていた。


「セルジュ殿、此度はお招きいただきありがとうございます」


「クライヴ殿。よく来てくれた。存分に楽しんでいってくれ」


 クライヴの肩をバシバシと叩き、会場へと送り込む。セルジュはそれを参加者全員に施していた。そして、その最後の参加者となったのは他でもないフロイドであった。


「フロイドもよく来てくれた」


「いえいえ、私のような一文官にまでお声がけくださり、恐悦至極に存じます」


「そちらの方は奥方かな?」


「はい、妻のヘレナです。身重の身ですから、途中で帰ることになるかもしれませんが……」


「ああ、気に病むことはない。奥方の体調を第一に考えてやりなさい」


 フロイドもヘレナも感謝の意を示しつつ、参加者で賑わう大広間へと入った。そこには普段接する機会もないような人も多くいたが、フロイドはヘレナと共にその輪に入っていく。


 大広間にはタキシードで決めているクライヴの姿や、日ごろの態度や身なりからは想像もつかないような赤いドレスに身を包んだアマリアの姿もあった。


 フロイドもクライヴとは面識があったため、基本的にはクライヴの近くで話に混ざっていた。


 そんなパーティーでは豪華な食事が食卓に並べられており、そんな上級貴族らしい食事に舌鼓をうちながら参加者皆が楽しい時を過ごした。また、食卓の上にはセルジュ自作のスイーツも並んでおり、食したご婦人がたからは、自分たちの屋敷でも作ってほしいといわれるほど大絶賛されていた。


「あなた、ごめんなさい」


「いや、気にすることはない。セルジュ様も笑って許してくださる」


 かねてから懸念されていた通り、途中で帰ることとなったフロイドとヘレナ。ヘレナは申し訳なさそうな表情を浮かべており、フロイドも気にしないようにと何度も伝えていた。


「まぁ、なんだ。初めてのパーティーは楽しかったかい?」


「うん!それに、あなたと一緒じゃなかったら参加することもできなかっただろうなって思ったよ?だから、ありがとう」


 満面に喜色が表れているヘレナを見て、フロイドもたいそう満足な気持ちになった。この笑顔が見れただけでも、パーティーに参加した意味はあった。そう思いながら、フロイドはヘレナと共に帰宅するのであった。


 セルジュ邸でのパーティーはウォード夫妻が帰った後も続き、日付が変わる頃になって、ようやく解散に。


 さらに、パーティーにも参加しなかったアリソンとジェフリーの2人はその日は夜更けにも帰らず、明け方になってようやく屋敷へと帰って来たのであった。

第37話「ルグラン邸でのパーティー」はいかがでしたでしょうか?

今回はセルジュの自宅でのパーティーだったわけですが、アマリア以外の家族は全員が外出してしまうという事態に……

そして、フロイドとヘレナが憧れのパーティーに参加することもできていたわけですが、夫婦仲睦まじい様子が伝わっていればありがたいです。

ともあれ、次回からはまた戦争の話になります……!

――次回「英雄は英雄を知る」

更新は3日後、11/8(火)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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