第36話 次なる侵攻目標は
どうも、ヌマサンです!
今回は次なる敵であるクレメンツ教国をめぐる話になります!
はたして、次なる敵はどのような相手なのか……!
それでは、第36話「次なる侵攻目標は」をお楽しみください!
ロベルティ王国がフレーベル帝国への従属するための条件。それはクレメンツ教国を北から攻撃し、帝国軍と挟撃という形をとることにある。
その前段階として行われたのが今回の3国平定戦。無事に3国をフレーベル帝国へ従属させることが叶い、さらには4国会談の後には帝国からの要請で来春のクレメンツ教国への遠征にはロベルティ王国軍だけでなく、シドロフ王国、フォーセット王国、プリスコット王国の3国も加わり、4カ国連合で攻め込むことも決定した。
さらに、4カ国の軍勢だけではクレメンツ教国に鎧袖一触、簡単に相手を打ち負かされる可能性があるとして、旧ヴォードクラヌ王国を統治する領主の面々などを帝国からの援軍として派遣することも付け加えられた。
そうして帝国が南北からの同時進行を企てていることは、風の噂でクレメンツ教国を統べる教皇パトリックの耳にも入っていた。
「教皇様。帝国は来春にもまた攻め込んでくるみたいだけど……!」
「ほう?司教レティシアよ、何をそこまで慌てる必要がある?神は必ずや神敵を退け、我らをお守りくださる。これまでにも神をも恐れぬ帝国は3度にわたり10万の大軍を送り込んできたが、すべて退けられておるではないか。今度、20万30万という数で攻めてこようと同じことよ」
「でも!これまで大丈夫だったからって、今回も大丈夫とは限らない!」
「ええい!そなたは神への信仰心が足らぬ!信仰心が薄れているから、そのような世迷い事をぬかすのだ!誰か、この不埒者を地下牢に放り込んでおくのだ!」
教皇の近くに詰めていた聖堂騎士に2名がレティシアを羽交い絞めにして連れ去ってしまった。
「神よ……!そのお力をもって神敵を退けたまえ……!」
司教レティシアを地下牢に放り込んだのち、教皇パトリックは祭壇にて神へ祈りを捧げ続けた。現実的に考えれば、国境沿いの防御を固めたりすべきなのだが、そういったことは一切行わなかった。
そこには神を信じるがゆえの感情、信仰心があるのは明らかであったが、もはや人の上に立つ者としてはあるまじき行為なのは間違いなかった。
また、これまでの3度にわたる帝国軍の侵攻はすべて南から行われた。しかし、クレメンツ教国に南側から入るには、ヘキラトゥス山地に3本しかない切り通しを抜けるしかない。
切り通しとは山や丘などを部分的に開削し、人馬の交通を行えるようにした道である。つまり、人馬の交通を行なえる程度の道幅しかなく、10万の大軍が通過するには細く伸びた隊列になってしまう。
さらには、クレメンツ教国の南部の守備を任されているヴェルナー・タンデルが切り通しを塞ぐような形で関所を築いているため、その関所を突破しないことには教皇のいる聖都コーテソミルへの道は開かれない。
切り通しは道幅が狭いだけでなく、左右は切り立った崖であることから、崖の上に弓兵を配置することで、左右から矢の雨を浴びせることも可能となるのだ。そうなれば、帝国軍がいかに大軍で攻めかけようとも突破できないわけである。
では、海路はどうか。クレメンツ教国は東の端が海に面しており、フォーセット王国同様海上貿易が盛んな国でもある。だが、海流は北から南へと流れているため、クレメンツ教国からフレーベル帝国へ進むには適しているが、逆を行なうとなれば進むは難し、退くは易しとなるのである。
まさに帝国から見れば、南から攻め続けている限りクレメンツ教国は難攻不落の地なのである。それゆえに、教皇パトリックは帝国恐るるに足らずと高を括っているのだ。
また、北の3国が帝国に従属したと知っても、大した焦りはなかった。確かに南に比べれば北は進軍しやすい平地が続く。その平地はザチュア平野という。
ザチュア平野は3つの大きな河川があり、北からウルムクーナ川、ルーナム川、サドール川という。いずれも西にあるモギウス山脈を源に、平野を大きく曲がりくねりながら海へと注いでいる。
そんな3つの河川のうち、最も北に位置するウルムクーナ川は流れが早く、渡河するのが難しい。すなわち、北から攻めるにあたって一番の難所となるのが、このウルムクーナ川となろう。
さらに、クレメンツ教国は国土の8割近くが平野のため、人口も多い。人口が多いとはすなわち、動員できる兵数が多いということになる。さらには、国民の大半がクレメンツ教の信者であることから、団結心も強い。
戦において、この『団結心』が最も厄介なのである。味方がそうならば心強いが、敵に回せば苦戦を強いられることとなり、厄介至極。
そんな信仰心で団結したクレメンツ教国こそが、次なる敵なのだ。一体、どのようにして攻めるのか。それが肝要となる。
ともあれ、ロベルティ王国ではクレメンツ教国の地理や気候などの情報を集め、春に向けての準備を着々と進めていた。
「クライヴ、クレメンツ教国はどの程度の兵力が動員できるかなどは分かりましたか?」
「そうだね、国の規模と人口から考えても、最低でも10万近い人数を動員できると見ておいた方が良さそうだ」
「じゅ、10万ですか……さすがはクレメンツ教国としか言いようがありませんね……!」
クライヴからの情報を集め、ナターシャは思案した。だが、ロベルティ王国を中心とした4カ国で連合を組んだとして、辛うじて3万を超える程度。あとは帝国からの援軍がどれほどの数なのか、それによって戦況は決まると言っても良かった。
ともあれ、南からも帝国軍が攻める手はずとなっている以上、敵のすべてが北に向かってくるわけではない。
仮に南北に半数ずつ軍を割いて向かってきたとすれば、それでも敵勢は5万ほどとなる。となれば、『兵数は形だけでも5万以上は揃えておきたい』というのがナターシャの紛れもない本心。
ともあれ、ロベルティ王国とフレーベル帝国の間では何度も使者が往来し、出兵に向けての準備を進めていた。予定では、南からはカルロッタ率いる帝国軍8万が南から侵攻する予定であり、援軍としてロベルティ王国に向かう帝国軍は2万ほどとなっていた。
援軍の数が想定していたよりも少ないのには、訳があった。南からヴァルダロス王国軍5万が攻めてきているため、帝国軍の主力部隊はそちらに割かれており、クレメンツ教国相手に大軍を割くことができないのであった。
帝国からの返答を受けたナターシャから、ロベルティ王国の女王であるマリアナは苦しい戦になると報告を受け、ほとほと困り果てていた。
「セルジュ、頼みとする帝国軍がこれでは、遠征するのはマズいんじゃないかしら?」
「そうですね……帝国からの援軍が来るということで、3国も協力することを約束したわけですからな……」
そうなのである。3国の中でも特に、シドロフ王国を説き伏せるのには労力を要していた。それも、帝国軍が来るからとなんとか軍を出させる約束を取り付けたのであるから、やってくる帝国軍が少ないとなれば、ごね始めるに決まっている。
ともあれ、出兵前から4カ国連合はガタガタであり、頼みの綱の帝国もあまり期待はできない状況。はたして、心を一にしてクレメンツ教国征伐を行なえるのか、早くも暗雲が立ち込めていた。
第36話「次なる侵攻目標は」はいかがでしたでしょうか?
今回はクレメンツ教国の教皇パトリックが神頼みで備えをしていないことだけ伝わっていればと思います……!
そして、北から攻め込むロベルティ王国の方でも各所との調整に苦労したりと、前途多難な感じでした。
ともあれ、次は少し平和な日常回になります……!
――次回「ルグラン邸でのパーティー」
更新は3日後、11/5(土)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!




