第32話 平野での決戦
どうも、ヌマサンです!
更新が遅れてしまい申し訳ありませんが、今回はついにロベルティ王国軍とシドロフ王国の戦いが始まります!
はたして、両国の戦いがどうなるのか、楽しみにしていてもらえればと思います!
それでは、第32話「平野での決戦」をお楽しみください!
ゼラモ砦でのアマリア会心の戦から3日後。ロベルティ王国軍8千は街道に沿って南下し、シネスティア平野に布陣していた。
シネスティア平野。ここが軍議でも話題に上がっていた東西の街道と南北の街道が交わる交通の要となる地である。ロベルティ王国軍は街道が十字に交わる地点の北西に布陣。
対するシドロフ王国軍は5千5百の軍勢で南北へと伸びる街道を塞ぐような形で陣を張って待ち構えていた。この5千5百の軍勢の総大将はカイルではなく、その父であり、国王でもあるシドロフ王ビクトルその人であった。
「カイル、ラウル、アルセン。そなたら3名が無事で何よりじゃ。じゃが、これからの戦では汚名を返上する働きをせよ。できなければ、その時にまとめて罪を問うこととする」
そう国王であるビクトルから申し伝えられた王子カイルと側近のラウル。そして、将軍アルセンの3名は雪辱を果たすべく、気を引き締めてかかっていた。
「アルベルトよ。そなたの進言通り、プリスコット、フォーセットの両国に援軍を要請したが……未だ姿を見せぬのはどういうことじゃ?」
「そう言われましても、自分にも分かりませぬ」
カイルたちがアマリア相手に敗戦した日。国王ビクトルは今後の方策について臣下に意見を求めた。そして、新参者のアルベルトの意見を採用し、両国に使いを出して援軍を求めることとした。
内容としては、3国同盟の盟約を今こそ果たすべき時であること。さらには、シドロフ王国が滅ぼされれば魔の手は残る両国にまで伸びることなど、5か条をあげて援軍を出すことの利害を説いた。
使者には言い出しっぺのアルベルトとその妹であるクロエに命じた。アルベルトは海側のフォーセット王国、クロエは山側のプリスコット王国へと向かわせた。
そうして今日の朝になり、フォーセット王国からアルベルトが帰国した。ゆえに、色々と結果を聞きだしているのだが、『援軍を出す』と口先だけの返事だけではなく、返書まで預かってきている。
アルベルトのしっかりした一面をビクトルは信頼しつつも、フォーセット王国の援軍が姿を見せないことにいら立ちを覚えていた。援軍が遅れれば遅れるほど、シドロフ王国側が追い込まれるのは明らかであるからだ。
そして、プリスコット王国からクロエが未だに戻らないことも不安を強める一因となっていた。
しかし、昼頃に事態は急変。シドロフ王国の西側より6千5百もの大軍が向かってくるというのである。そのことに警戒感を露わにしたビクトルであったが、すぐにプリスコット王国軍であることが判明し、肩の力が一気に抜けた。
「国王陛下、家臣クロエが拝謁します」
「おお、クロエか。援軍と共に戻って来たとは驚いたぞ」
「はい、私が副都に到着した時には国王ラッセル自ら副都に入っており、戦支度の大半が完了していたのです。そのため、援軍と共に帰還したしだいです」
それまで引きつった表情を浮かべ、苛立ちを募らせていたビクトルも嬉々とした表情へと変化していた。それを見たクロエも強張っていた表情筋が緩む。
クロエが国王ビクトルへの報告を行なっている頃には、西への街道を塞ぐようにプリスコット王国軍は布陣し、目の前へのロベルティ王国軍へ圧力を強めていた。
さらに、嬉しい出来事は続くものである。プリスコット王国軍が布陣し終えた頃、東からはフォーセット王国軍が到着し、東への街道を通れぬように封鎖する形で布陣。プリスコット王国軍と向かい合うような形状となり、3か国の同盟軍は凹形の陣形となった。
その日は双方そのままにらみ合う形で動きはなく、そのまま朝を迎える。その翌朝、ロベルティ王国軍から矢がシドロフ王国軍へ射かけられたことで、日の出とほぼ同時に開戦となった。
最初は矢を射かけ合うだけであったが、途中からは双方ともに間合いを詰めての白兵戦となる。ロベルティ王国軍の先鋒であるアマリアは自ら先頭に立ち、シドロフ王国軍の先鋒を担うアルセン・ロメロと戦端を開いた。
アマリア率いる2千はアルセン率いる3千と一進一退の攻防を繰り広げる。その戦場の只中で、アマリアとアルセンの両将は遭遇し、たちどころに一騎打ちが始まった。
序盤は長槍を扱うアルセンの方が間合い的に有利であり、アマリアはその鋭い突きを凌ぐので手一杯となっていた。しかし、馬を寄せていくほどアマリア有利に動いていき、近づかれ過ぎたアルセンは槍を打ち捨てて命からがら後方へ退いた。
一騎打ちはアマリアに軍配が上がり、アルセンが馬に鞭打って逃げ出す様を見たシドロフ王国軍の士気は乱れ始めた。アルセンの副将として詰めていたラウルの必死の指揮により、何とか総崩れとはならず、間一髪のところで持ち応えている始末であった。
「どうしてプリスコットもフォーセットも動かぬのだ!?」
開戦から2時間経っても東西に陣取る両国の軍勢は一向に動く気配がなかった。そのため、シドロフ王国軍はジリジリと後退を余儀なくされていた。
「クロエ!ラッセルの元へ行き、軍を動かすように伝えて参れ!」
「は、はい!」
ビクトルの声に弾かれるように馬に飛び乗り陣を飛び出すクロエ。目的地は言うまでもなくプリスコット王国の本陣である。
「アルベルト!おぬしはクリスティーヌの元へ行って参るのじゃ!」
「了解しました」
恐らく自分が指名されるだろうことを感じ取っていたアルベルトは、すでに馬に乗り指示を待っていたため、すぐに陣を発つことができた。
ちなみに、クリスティーヌとは、フォーセット王国の女王であるクリスティーヌ・フォーセットのことである。その美貌から周辺諸国からは『妖艶女王』とあだ名されていた。
しかし、アルベルトが本陣を駆けだした直後、驚くべき一報が飛び込んできた。なんと、東側に陣取っているフォーセット王国軍が撤退を始めたというのである。
「なぜ、なぜにフォーセット勢は撤退し始めたのだ!?」
苛立ちと動揺が重なり、自然と早口になるビクトル。すぐに方々へ人をやり、何が起こっているのかを探らせた。
しばらくすると、フォーセット王国軍が撤退し始めた理由が明らかになった。突如として現れたロベルティ王国軍により、フォーセット王国の王都レミアムが奇襲攻撃を受けたのだ。
王都が奇襲されたとなれば、ただ事ではない。フォーセット王国軍が慌てて来た道を引き返すのも無理はなかった。
そして、ロベルティ王国軍の参謀クライヴは狙い通りに事が進んでいることで、したり顔である。それもそのはず。
シネスティア平野に着陣した日の軍議にて、クライヴはトラヴィスに依頼し、奇襲策を実行に移すこととしたのだ。その部隊の副将にはトラヴィスの娘であるセシリアがあてがわれた。
奇襲に向かったトラヴィス率いる部隊は一度平野に向かってくるフォーセット王国軍を通過させ、それから王都まで騎兵のみの部隊で一気に王都レミアムまで駆け抜けたのであった。
この奇襲部隊が騎兵のみということで、シネスティア平野に残ったロベルティ王国軍には騎兵がほとんど残っていなかった。だが、坂落としをくらわせたことで歩兵のみの軍勢で押しまくっていた。
されど、ビクトルたちシドロフ王国軍は敵に騎兵がいないことを知るなり、こちらが騎兵を動員し、機動力で押し切ることで戦況を覆せるかもしれないと考え、一気に本隊も加勢に加わって猛反撃に出るのであった。
第32話「平野での決戦」はいかがでしたでしょうか?
今回はロベルティ王国軍がシドロフ王国軍を押していっている感じでした!
さらに、フォーセット王国軍を戦いに参加させないために、フォーセット王国の王都を奇襲するクライヴの策には驚かれた方もいるかもしれませんね……!
ともあれ、ここからの戦いも楽しみにしていてもらえればと思います!
――次回「シドロフ王国軍との激戦」
更新は3日後、10/24(月)の9時になりますので、お楽しみに!




