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ランドレス戦記〜漆黒の女騎士は亡き主の意思を継ぎ戦う〜  作者: ヌマサン
第2章 帝国への従属
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第30話 3国平定戦の始まり

どうも、ヌマサンです!

今回からはロベルティ王国による3国への侵攻が始まります!

はたして、ロベルティ王国は南の3国に勝利することができるのか……!

それでは、第30話「3国平定戦の始まり」をお楽しみください!

 いよいよロベルティ王国による3国平定戦が始まる。しかし、どういうわけか平定戦が始まったのは雪解け前なのであった。


「ナターシャ。気を付けて行ってください。初の総大将で緊張していると思うけれど……」


「はい、王国の威信にかけても勝利を収めて参ります」


 いつも以上に口調が固いことから、ナターシャが緊張していることをマリアナは察していた。それゆえに副将を務めるトラヴィスやクライヴにしっかりナターシャを補佐するよう、何度も諭していた。


 そうとも知らず、ナターシャは先頭に立って王都テルクスを出た。王都テルクスが見えなくなった頃、セルジュの嫡子ジェフリー率いる2千5百の先鋒部隊が進軍速度を上げていく。


 翌日には、ジェフリー隊がシドロフ王国との境を越え、最北端の砦であるゼラモ砦へと攻めかかった。


「何、もう敵が攻めてきたのか!?雪解けにはまだ早いではないか!」


 砦を守る将軍も予想よりも10日近く早く現れた敵兵に驚かされていた。すなわち、シドロフ王国は侵攻開始……すなわち、王都テルクスを発つのが雪解け後だと予想していたのだ。


 しかし、クライヴの計画はそのさらに上を行くものであった。戦端を開くのが雪解けと同時だったのだ。王都テルクスを出陣したのも、雪解け前だったのはそのため。


 ともあれ、不意を突かれる形となったシドロフ王国側はろくに防戦することも出来ず、同日ゼラモ砦は陥落。将軍含め、守備兵5百は討ち死にとなった。


 さらに驚くべきはそれからのジェフリー隊の進軍速度である。ゼラモ砦を陥落させた翌朝5時には次なるブイユ砦に猛攻をかけた。


 ブイユ砦も早朝からの猛攻に耐え切れず、昼前には陥落し、守備兵の半数が戦死し、残る半数は逃亡してしまった。ブイユ砦の守備を任されていた将軍は逃げようとしたところを背後からジェフリーに斬り殺されてしまっていた。


「よし、一旦砦に入って昼食をとり、一息ついたら出立するぞ!」


 昨日からの連勝にジェフリー隊の指揮はうなぎのぼりであった。その高い指揮を維持したまま、昼すぎには砦を出て南下。そうして夕方には続くナネダミ砦を包囲した。


「もうすでにゼラモ砦、ブイユ砦も陥落したのか……!早い!早すぎる!」


 守備を承っていた将軍がジェフリー隊の迅速な進軍に驚いている頃、思わぬ出来事が発生した。ナネダミ砦の守備兵が内側から門を開き、投降し始めたのだ。こうして一晩のうちに脱走兵は3百にのぼり、残る兵数は2百をきるまでに激減していた。


 そこを明け方から一気呵成に攻められたのではシドロフ王国側に勝ち目はなく、将軍以下2百名はあえなく討ち死にとなった。


 その夜はジェフリーも酒宴を開き、戦いの疲れを労っていた。その一方で、ジェフリーは開幕三連勝をナターシャ本隊へと報告していた。


「姉上、ジェフリー隊は単独で南に出過ぎている。ここを敵に襲われればひとたまりもないのでは?」


「ナターシャ殿、俺も同意見だ。ジェフリー殿の書面を見ても、勝利に浮かれていることは明らかだ」


「なるほど。つまり、今ジェフリーは慢心していて危ない……と」


 ナターシャはクライヴとトラヴィスからの進言を聞き入れ、次鋒のアマリアに2千の兵を与えて急ぎ南下させた。副将には寡黙で冷静沈着なユリアを添えた上で。


 当初、アマリアは敬愛してやまないナターシャの父親であるドミニクを射殺したユリアを快く思っていなかったが、ナターシャの取り成しで仲良くするようになっていた。


 そうして半年近く交流を続けていくうちに、竹を割ったようなサッパリした性格のアマリアと寡黙なユリアは性格だけ見れば正反対だったが、ずいぶんと仲良くなっている。


 ともあれ、今では距離もかなり縮まったアマリアとユリアのコンビを向かわせた。ナターシャも不安半分、安心半分といった様子で見送った。


 こうして本隊から離れたアマリア隊2千は最初の合戦を行なったゼラモ砦に入った。そこで一晩休息をとっての出発を考えていた頃。ジェフリー隊が敗走してきた。


「あ、兄上!?そのお姿は……!?」


「おお、アマリアか。昨日の明け方に敵襲を受けたのだ」


 ジェフリーはアマリアから受け取った水を飲み、呼吸を整えながら昨晩起こった出来事をアマリア、ユリアの両将に語った。


 一昨日の晩、ジェフリーは戦勝祝いの酒宴を開き、兵士共々酔いつぶれていた。その翌朝、ジェフリー共々、兵士たちが二日酔いでまともに動けぬ状況となっていた。


 そこをシドロフ王国の騎兵2千の奇襲を受けてしまった――それがジェフリーの言葉であった。


 アマリアから敵将が誰だったかを聞かれ、ジェフリーはシドロフ王ビクトルの嫡男、王子カイルの旗が見えたと答えた。


 すなわち、敵国の王子自らの奇襲ということで、アマリアもユリアもいよいよ敵も本腰を入れ始めたのだということを悟った。


 ユリアはすぐにナターシャたちロベルティ王国軍本隊へと使いを出し、援軍を仰いだ。


 対して、アマリアは治療班にジェフリーと負傷兵6百の治療を行なわせ、残る兵を集めてゼラモ砦での籠城支度を整えさせた。


 こうして撤退してきたジェフリー隊を収容してから2時間ほどで王子カイル率いる2千の兵に包囲された。だが、砦内にはジェフリー隊を含めてロベルティ王国軍は2千6百。


 兵数で優るロベルティ王国軍を包囲した以上、カイルたちも手が出せずにいた。しかし、翌日にはシドロフ王ビクトルの腹心であるアルセン将軍が3千で着陣。こうしてアマリアたちは倍近いシドロフ王国軍5千に包囲されてしまった。


 これを聞いた本隊首脳陣は大いに慌てた。だが、ナターシャが誰よりも落ちついていたこともあり、動揺もすぐに静まった。


 ナターシャは残る6千5百のうち、トラヴィスに3千の騎兵を預け、先行してゼラモ砦へと向かわせ、本隊も南下の速度を上げてゼラモ砦へと急いだ。


 その頃。ゼラモ砦では籠城を続けるか、打って出るかの二つに意見が割れていた。ジェフリーとユリアは籠城を続け、本隊の到着まで持ちこたえるべきという意見。


 対して、アマリアは敵が打って出て来ないと高を括っている今こそ、打って出て敵を撃破するべきだとして、聞かなかった。


 軍議の場ではアマリアとジェフリーが衝突し、出陣前の先鋒争いと同様に兄妹ゲンカとなっていた。寡黙なユリアでは、カッカとしているルグラン兄妹を抑えられなかった。


 こうして、ジェフリーと議論……いや、ケンカを終えた後、へそを曲げて陣屋に籠ってしまった。だが、その日の夜のうちにアマリアは4百の精鋭を率いて独断で打って出てしまう。


 ジェフリーは勝手な行動をしたアマリアを散々罵倒したが、見捨てるわけにもいかない。そこで、ユリアに1千6百を率いらせて後を追わせた。そして、自分は負傷兵6百と共に砦に残ったのだ。


 あくまで、自分は反対したのにアマリアが独断専行し、敗退してしまったとナターシャに報告する文書の作成まで始めていた。


 しかし、文書を作成するジェフリーの耳に届いたのは、砦の外から聞こえる勝鬨であった。


 何があったのかをジェフリーは側近に問い、アマリアが打って出るなり、敵の将軍を2人も討ち取り、勢いそのままに5千の敵軍を蹴散らしてしまった……と。


 ――その報せに驚いたのはジェフリーだけではなく、総大将であるナターシャも同じなのであった。

第30話「3国平定戦の始まり」はいかがでしたでしょうか?

今回はジェフリーの3連勝した末に、油断から敗北を招いてました。

さらに、独断で出撃したアマリアが勝利したのには驚いた方も多いかもしれませんね……!

次回はその詳しい話も出てきますので、お楽しみに!

――次回「望外の勝利」

更新は3日後、10/18(火)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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