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ランドレス戦記〜漆黒の女騎士は亡き主の意思を継ぎ戦う〜  作者: ヌマサン
第2章 帝国への従属
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第29話 雪解けを待つ

どうも、ヌマサンです!

今回はクライヴがプリスコット王国から帰ってきた後の話になります!

はたして、ロベルティ王国の戦争の準備は進んでいるのか……!

それでは、第29話「雪解けを待つ」をお楽しみください!

 ――クライヴがプリスコット王国より帰還した。


 その一報を受け、マリアナはクライヴを玉座の間へと召喚した。その傍らには宰相セルジュと財務を受け持つフロイド、セルジュの嫡子ジェフリーの3名の姿があった。


 外にはしんしんと雪が降り、窓の外は一面銀世界となっていく中、会議は行われた。


「クライヴ、プリスコット王国へ向かっていたとのことだけれど……」


「はい。雪解けまでにプリスコット王国としての動きを確かめておかなければなりませんでしたから」


 クライヴは今回のプリスコット王ラッセルとの会見の意義と成果のほどをマリアナに改めて説明した。それを一同は静かに聞き届け、口を開いた。


「クライヴの言う通り、プリスコット王国から加勢しないという約束を取り付けられたのは大きいわね」


「クライヴ殿の言う通り、雪解け後はシドロフ王国、フォーセット王国を攻める形になるわけか」


「いいえ、攻めるのはシドロフ王国のみです」


 クライヴの言葉に疑問が残る一同。そこで、フロイドが地図を広げ、説明を求めた。それに応じ、クライヴは地図を用いての説明を行なうこととなった。


「まずは、街道に沿って南下。南下する道中でシドロフ王国側の砦を落としていきます。おそらく、この南北に伸びる街道を南下していくと、敵は東西の街道と交わるこの地にて決戦の構えを見せることでしょう」


 クライヴの説明は芝居の筋書きのように滑らかに進み、聞くものみなが引き込まれるものがあった。それだけではなく、地図を用いているということもあってか、非常に分かりやすい。


 そして、クライヴの言う街道と街道の交わる場所。東西の街道とはすなわち、西のプリスコット王国、東のフォーセット王国を結ぶ街道であり、まさに3国同盟にとっての最も要となる地であった。


 ロベルティ王国としても、ここまで進出すればプリスコット王国とフォーセット王国への攻撃がしやすくなる。つまり、3国はこの地点を死守しようと、必死に向かってくることは明らか。


 そうなれば、追い込まれたシドロフ王国が両国に援軍を要請することは確実となる。今、プリスコット王ラッセルからの返答によって、最も警戒すべきは東から寄せてくるであろうフォーセット王国からの援軍のみとなった。


 そのように説明されれば、クライヴとラッセルの会見が実に大きな意味を持ったことが伝わるのではないだろうか。


「僕としては、フォーセット王国も調略しておきたいところではあるのですが……」


「それは時期的に難しいだろう」


「その通り。正直、フォーセット王国とはプリスコット王国ほど上手く話がまとまるとは考えづらい」


 ジェフリーが指摘したのは、雪解けまでの時期である。すでに年も明けて2ヶ月は経とうとしていた。つまり、来月には雪解けであり、今からフォーセット王国の調略となると厳しいことは言うまでもないことであった。


「となると、東から来ると予想されるフォーセット王国の軍勢への対処をいかにするかを議論する方が良さそうということか」


 セルジュの意見に反対する者はなかった。よって、翌日からは軍の重鎮であるトラヴィス、近衛兵長のナターシャを加えた面々での会議が連日行われた。


「まずは、クライヴ殿の言う通り、南北と東西の街道が交わるところまで一気に進軍するということで良かろう」


 トラヴィスの発言で街道の交差するところまでは、道中の砦を攻め落としながら進むことで決定。そこからは、軍勢を2つに割り、シドロフ王国、フォーセット王国の両軍を迎え撃つというセルジュの策が取られる流れとなった。


 しかし、クライヴはそこでは納得せず、フォーセット王国への奇襲策を提案し、クライヴの奇抜な策略がマリアナにも気に入られ、その策をもって3国平定を成し遂げようということで会議は決着となった。


 そうして雪解けまでの1ヶ月の間、マリアナの下で着々と進軍の準備を整えていくロベルティ王国なのであった。


「ナターシャ殿」


「これはトラヴィス殿。そのように血相を変えて、どうかなされましたか?」


「マリアナ様に総大将の任を下りたいという旨を申し上げたところ、誰か後任の者を見つけて来れば許すと言われてしまったのだが……」


「そのようなことをなさっていたのですか」


 刺すような視線を向けられ、トラヴィスもたじろいだが、1万を超える大軍を指揮できる器ではないと辞退したのだとナターシャに詳細を語った。


 だが、トラヴィスはこれまで十数年にわたって1万近い軍をまとめて、3国ににらみをきかせてきた事をナターシャに小突かれ、トラヴィスも耳の痛い気分を味わうこととなった。


「ナターシャ殿の言う通り、俺も1万近い兵をまとめて3国と戦ってきた。だが、それは守りの戦。今回は攻めの戦となるわけだが、俺は攻めるのには向かぬのだ。どちらかと言えば、攻めるのはナターシャ。おぬしの方が向いているだろう」


「いえいえ、私も千以上の数を指揮したことはありませんが……」


 トラヴィスとナターシャは総大将の地位を譲り合った。なんとしても総大将の地位を譲りたいトラヴィスと総大将の地位を譲られたくないナターシャ。


 だが、最終的にはトラヴィスが副将として補佐するという条件付きで、ナターシャは総大将の任に就くことを受けた。


 ナターシャが後任の総大将となることについてはマリアナも快く承諾した。代わりの近衛兵長として、ナターシャの家臣であるモレーノが任命されたのだった。


 こうして3国平定軍の総大将はナターシャ、副将としてトラヴィス、参謀としてクライヴが同行することまで決まり、先鋒はルグラン兄妹が争ったが、セルジュの取り成しで兄のジェフリーが先鋒、妹のアマリアは次鋒という形で収まった。


 このように誰が先鋒かまで決まっていき、3国の平定開始はもはや雪解けを待つのみとなった。


 財務を担当するフロイドも戦争のための資金を準備し、武器兵糧の確保を予定通り完了していた。


 こうして戦前の準備が滞りなく進み、なんとか帝国の要請通り3国を平定するべく動き出す。総数1万1千の兵を揃え、さらには兵糧も夏の終わりまでの約半年分を用意し、準備万端なのであった。


 対して、雪解けにも攻め込まれようとしている3国の方はといえば、プリスコット王国、フォーセット王国はロベルティ王国の戦争準備を聞きつけ警戒感を高め、戦支度を怠らなかった。とはいえ、プリスコット王国は形ばかりの戦支度であったが。


 3国の中心に位置するシドロフ王国も東西の二国に遅れる形となったが、街道沿いに3つもの砦を新たに築いていた。それも、ロベルティ王国軍の侵攻路が読みやすいからこそできることであった。


 シドロフ王国国王ビクトルは3つの砦に兵五百ずつ籠め、指揮官として戦い慣れした将軍を一名ずつ配置。ロベルティ王国の侵攻に備えていた。すなわち、ロベルティ王国軍とシドロフ王国の第一戦は街道沿いの砦をめぐる戦いとなることは明白であった。


 ロベルティ王国はダレンに物見を命じ、3つの砦の構造を絵図にしたため、提出させた。シドロフ王国が雪解けまでの砦を築いてしまったことが裏目に出る形となった。しかし、そのことをシドロフ王ビクトルは知らない。


 ともあれ、今まで自国を侵略されるばかりであったロベルティ王国が侵略する側となる3国平定戦が今、始まろうとしていた――

第29話「雪解けを待つ」はいかがでしたでしょうか?

今回はクライヴやトラヴィスが作戦を立案したりしてました。

その作戦が上手くいくのかどうか、楽しみにしていてもらえればと思います!

そして、ナターシャは総大将の任をまっとうすることができるのか!?

――次回「3国平定戦の始まり」

更新は3日後、10/15(土)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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