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A:帰るべきとなる場所

さて、今回からちょっとした小話をあとがきに書きたいと思います。この物語にはほとんど関係ないですが、お暇な人は見てください。

三、

「・・・・お客さんかい?フレア?」

 ぼさぼさの長い髪の毛をまとめようともせずにそのまま腰まで伸ばしている女の人が現れた。

歳は俺より二三歳ほど上ぐらいではなかろうか?フレアも可愛いほうの部類に入るが、この女性も綺麗だった。まぁ、フレアのお母さんだろうからそれは当然だろう。ものすごく眠そうな表情で目は半分死んだような感じである。着ている服は作業着のようなものなのだが、彼女が着ると完璧に着こなしているのがわかる。

「ええとですね、この人は私が召喚した人なんですよ?すごいでしょ?」

 俺に母親を、母親に俺を紹介せずにフレアは胸をそらして母親に自慢している。ああ、そういう子もいるなぁ、たまに・・・・

 その言葉を聞いたフレアの母はものすごく驚いたような表情をしたのだった。先ほどまで死んでいた瞳は目の前に半漁人が現れたような顔をしていた。

「・・・なんだって?誰が誰を召喚したって?」

「え?私がこの人を召喚したんですよ?」

 そういったフレアのほっぺたを両方からつまむ。

「・・・・いひゃぁいれす!(訳:・・・・いたいです!)」

「・・・あんた、あたしの部屋にあるあれをつかったのかい?」

「ひゃい、ふぁれをしゅかえばしゃうかんひゅふぎゃふひゃへるとひひました(訳:はい、あれを使えば召喚術が使えると聞きました)」

 さらにほっぺをつねる力をあげながら今度はこっちに視線を這わせた。その目はものすごくかわいそうなものを見る目をしていたのだった。なんだ?どうしたんだ?

「・・・・はぁ、あんた、名前は?」

「え、俺ですか?・・・零時ですけど?」

「零時か・・・悪いね、このおばかが迷惑を現在進行形で掛けているそうじゃないか・・・とりあえず、フレア・・・あんたはもう寝なさい」

 ようやくほっぺつねりから抜け出すことに成功したフレアは

「お〜いたっ・・」と呟きながら自分の母親を見る。

「・・・でも、昼ですよ?」

「寝てないんでしょ?」

「まぁ、そうですね・・・言われて見れば・・・眠いれす・・・」

 おやすみなさいといいながら去っていったフレアに

「ああ、おやすみ」と二人で返事をしていて俺とフレアの母親がその場に残された。

「・・・・こっちの世界にフレアに呼ばれたんだって?」

「え、まぁ・・・」

「おっと、名乗るのが遅れたねぇ・・・あたしの名前はネリュっていうんだ。フレアから偽名の話は聞いたのかい?」

「ええ、まぁ・・・」

「そうかい、これはあたしの本名だからな・・・」

 そういった後にため息をついてネリュさんは俺に頭を下げた。

「・・・・うちの娘があんたに迷惑を掛けちまってすまない!」

「え?」

 突然のことに俺は驚いてぎょっとなって眼をぱちくりと四回ほど繰り返したのだった。

「・・・えっと、とりあえず・・・頭を上げてくれませんか?未だに状況がつかめてないんですけど?」

「・・・・そうだね、詳しく説明したほうがよさそうだからね・・・・まぁ、娘が出来が悪けりゃ、母親の私も出来が悪いって事だけどね」

 そういって俺の目の前の椅子に座り、彼女は

「ふっ」と自嘲気味に笑ったのだった。そして、今度はかなり真剣な顔となって重苦しそうに口を開いたのだった。

「・・・結果から言うけど、今のところ一度召喚しちまったものをもとの世界に戻す方法なんて見つかっちゃいない。だから、零時、お前は元の世界に帰れない・・・」

「あ〜やっぱりですか・・・・」

「あれ?反応薄いな?」

 彼女は

「シリアス顔が足りなかったかな?」と呟きながらも俺のほうを見たのだった。

「・・・普通この場合はがっくりときたり、激怒したりする場面じゃないのか?」

「ん〜そうなんですか?でも、フレアが必ず俺を戻すっていってくれましたからね・・・」

 俺がそういうと彼女はかなり驚いた顔となったのだった。美人さんが驚くと非常に面白い顔になることを俺ははじめて知ったのだった。

「見ず知らずのどこぞの馬の骨ともわからない娘を信じるのかい?」

「いえ、そういうわけじゃありません。俺が信じているのはこの世界では今のところ俺だけですよ。この世界のことを詳しく知る人の近くにいても損にはならないと思います。損得勘定で今のところは動いているだけですよ・・・」

 途中、言っていてなんだか恥ずかしくなってきて顔がちょっとだけ赤くなるのを感じてしまった・・・

「へぇ、あんたも大概のお人よしか・・・フレアがなつくぐらいだからねぇ・・・」

 そういってしばしば考えるような仕草を見せて

「うん、そうだな・・・」と頷いた後に俺に立つように促したのだった。

「さ、迷惑を掛けた側だ・・・・宿と食事ぐらいは提供させてもらうよ」

「え、いいんですか?」

「いいもなにも、この家にはあたしとフレアしか住んでないんだ。しかも、あたしゃ、夜に仕事に行っているからね・・・フレアはずっと一人で泣きながら夜を過ごしてきたんだ」

 遠い目をしてそんなことをネリュさんは呟く。しかし、俺が瞬きを一回したら既に笑っていた。

「さ、こっちだ」

「どうも・・・・」

 フレアが上がっていった階段をネリュさんと共に上がり、彼女は数ある部屋の一つを指差した。そこの隣の部屋には“私の部屋”と書かれており、さらにその隣には“あたしの部屋”と書かれている部屋があった。

「ここ」

「ここですか?」

「ああ、そうだ。部屋が隣になってりゃ、何かあったときにも大丈夫だろ?なんなら、フレアかあたしの部屋のどっちかに一緒に住むかい?その場合は同じような生活をしてもらわなきゃ、困るけどね〜」

「たとえば?」

「そうだね〜・・・・・寝食を共にする・・・つまり、寝るときゃ、あたしの隣かフレアの隣だ。どうだい?悪い話じゃないと思うけど?」

 なんだか非常に意地悪そうな表情でそんなことを言ってくる。むぅ、初対面の俺にそんなことを聞いてくるなんて・・・

「じゃ、ネリュさんの部屋で・・・」

「そうかい、それなら寝ようと思ってたんだけど・・・」

 俺を後ろから抱きしめるような感じで引っ付いてくる。あわてた俺は声を張り上げたのだった。

「じょ、冗談ですよ!」

 離れようにも引っ付いて離れてくれなかった。

そのまま俺の部屋となった部屋を彼女は開けて中に入り、入ってすぐ近くにあった電気のスイッチらしきものを押して部屋の中央の天井辺りについている電気をつけ、ようやく離れてくれて近くにあったベッドに座ったのだった。

俺はなんだか自分が壊れたような感じがしたので螺子を頭に思い浮かべている途中だったのだ。ううむ、この人ってかなり他人のペースを崩すのが得なのかもしれないな・・・・俺ってよくマイペースだって言われてるんだけどなぁ・・・・少しばかりへこんでいる俺の耳に彼女の声が聞こえてきたのだった。

「ここはホテルじゃないから鍵は無いけどね・・・・まぁ、わかんないことがあったらあたしかフレアに聞いてくれ・・・ああ、そうそう・・・」

 ちょっと声を潜めて俺に隣に座るように言った。

「・・・なんです?」

人工物アーティファクトって話、フレアから聞いた?」

「人工物?それって何ですか?」

「ん〜聞いてないか・・・ちょっと、話していいかい?」

「ええ、構いません。静かに聴いてますよ」

「・・・そうかい、人工物って言うのは“人が神様になるための試練”の一つってこの世界では言われているものさ。“完璧なる人間を作る”ってことをコンセプトにかなり前・・・数千年前ぐらいから行われているものさ・・・しかし、これまで一度も“完璧なる人工物”は作られなかったんだよ。その結果、人は神になることをあきらめ、その“人工物”もあきらめたんだ。何で出来なかったのかわかるかい?もとより“完璧なる人間”なんて一人もいなかったんだ。人間ってのは大半が欲の塊さ。確かに、中には欲を持っていない人もいるけど・・・そうしたら別のものが足りなかったりするんだ。だから、いつの間にか歴史の山に消されるところだったんだけど・・・一部じゃ、やっぱり“人工物”を歴史の裏で作っている連中もいたのさ・・・実はあたしの家系もずっとそれでね・・・小さい頃から両親は人工物をずっと作ってたんだ。そりゃもう、何かにとりつかれたように毎日毎日“人工物”を作っていた。そんなある日、両親は私を置いて消えてしまった。まぁ、よくはわからないけど誰かと協力してそれを作るんだとさ・・・まぁ、その頃にはすでに私は一人で生活できるまでになっていたから、親に反抗するつもりでもあった。まぁ、そのままここに住み着いて生活してたんだ。で、親の背中を見て育った私だったからねぇ・・・私も“人工物”を作ったんだ・・・・他人に迷惑を掛けないようにして生活しようにも、やっぱり寂しいって気持ちはあったんだ。だけどまぁ、まさか他の世界の男の子に迷惑を掛けるようになるなんてうちのフレアも成長したもんだ」

 話し終わってそんな複雑な表情を見せたのだった。

「え?フレアって血がつながっていないんですか?」

「ああ、そうだよ。だけどまぁ、あたしとは血がつながってないけど・・・・最低でも血がつながっている連中並の絆があるって自負するね〜」

 そういってにやりと笑うネリュさん。その瞳は静かながらも、絶対的な自信を持っているようだった。

「さて、ご自慢話はこのぐらいにして・・・・この世の中って言うのはどう転ぶかわからない・・・この世界じゃ、別に“人工物”がどうだとか言われてないからね・・・だけど、この世界には魔法がある。間違っても信頼できない人物に名前を教えたりしちゃ、駄目だよ?あんたみたいなおせっかいが一番危ないからね・・・」

 少々とがめるような視線を俺に送ってネリュさんは笑ったのだった。それを言うなら、見ず知らずの俺を拾ってくれた子の二人のほうが(一人は原因だが)よっぽどお人よしではないかと俺は思うのだった。

「じゃ、私は眠いから寝る・・・寂しくなったらあたしの部屋に来るといい」

「ええ、話に来ますね」

 ネリュさんは

「じゃ、またね」といって去っていこうとした。なんとなく、俺は彼女を呼び止めたのだった。

「あ、そういえばネリュさんって何歳ですか?」

「・・・・な、何歳に見える?」

 恐る恐るといったような表情で俺を見たのだった。

「・・・二十一ですかね?」

「残念。私は二十歳だ。あ〜あたしはふけて見えるのか〜」

 がっくりと来ているネリュさんにあわててフォローをいれることにした俺。

「ええと、その、大人びてるって感じたんですよ」

「それって裏を返せば実年齢の割にはふけてるってことよね?」

「うぐっ、た、確かに・・・」

 彼女の反乱に何もいえなくなった俺だったのだが、ネリュさんはそんな俺の表情を見て笑ったのだった。相当、困ったような表情をしていたのだろう。なかなか笑うのをやめてはくれなかった。

「まぁ、あながち間違っても無いから構わないからね」

「というと?」

「ま、後でのお楽しみってことで・・・じゃあね。悪いけどこれからはフレアの面倒をみてくれよ?」

「わかりました」

 ネリュさんはそういって完全に出て行き、残された俺はベッドに倒れこんだ。

「・・・・疲れた」

 見知らぬ世界、立ちしょんの現場をおさえられた、化け物に襲われた、美少女にあった、城がでかかったなどなどといろんなことをあっという間の期間に体験してしまったのはさすがにまずかったらしい。俺の体は既につかれきっていたのだった。

「・・・・ちょっと、眠るか・・・・」

 先ほどのネリュさんの言葉(寝食を共にする)を思い出したのだが、そういう考えを捨てて眠ることに専念する。

「・・・・羊が・・・・・」

 羊でも数えようかと思いながら寝返りをうつ。

「羊が・・・一・・・匹・・・・羊肉が・・・二割引・・・・?」

「零時さん、いじられにきましたよ〜」

「・・・フレアが・・・一人・・・?」

 あれ?ぼやけてきた視界にフレアの姿が映ったような・・・・ううん、そんなことよりかなり眠くなってきたなぁ・・・・

「ありゃ?もう寝るんですか?」

「・・・・・・」

「返事ぐらいしてくださいよ?」

「ぐが〜」

「む、完璧に無視する気ですね?それなら、私も共に寝ます!」

 フレアはなにやら俺の隣にやってきてそのまま寝転がったのだった。まぁ、既にそのときには俺の意識はあっちの世界(夢の世界)に旅立ったのだった。


ようやく本腰が入ってきた・・・といいたいところなのですが、実質問題、まだまだ登場人物は出てきます。では、ちょっとした小話を・・・・あれは高校二年のときだったでしょうか?作者の高校ではマラソンがあり、女性の先生が教えてくれました。生徒たちの「寒い!」「疲れる!」との言葉に先生が返した言葉がこれでした・・・「男はたくましくないとね!」とのことである。さらに、おしゃべりを続けていると「男はクールじゃないとね!」といったりしてました。まぁ、ちょっとした小話なんでここまでにしておきますね。評価(この話についてでも結構です)してくれるとうれしいです。

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