ルート零LAST 夢では寂しい 現実は騒がし
ルート零はこれで終わりです。着々と終わっていっているルートシリーズ・・・
ルート零
「・・・・零時君、零時君!」
「・・・ん?」
目が覚めるとそこは部室棟だった。既に外は夜になっており、俺以外に残っている人は誰もいないようである。そして、俺を起こしてくれたのはなんだか久しぶりに出てきたような八重先生だった。
「・・・・あいたた・・・」
「まったく、零時君のお母さんから連絡があってあわてて探していたらまさかこんなところで夢見心地だったなんて・・・・はぁ、何をしているんだか・・・・」
動かぬ頭が八重先生を捕らえて俺の脳みそ内も活発に動き始める。
「・・・俺、寝ていたんですか?」
「ええ、寝ていたみたいだけど・・・もしかして、気絶してたとか?」
八重先生は
「誰かに殴られて気絶・・・?まさか、確かに日ごろの行いが悪いのは知ってるけど誰かしら?本命が生徒会長で次点が彼の妹さん・・・・」と呟いている。
「・・・あ〜小説がちっとも進んでない・・・・」
先ほどまでかいていた小説は当然のように進んでいなかった。
そして、その小説のおかげで自分が夢の中で瑞樹と小説の話の後に何をしていたのか思い出し・・・はぁ、俺ってなんて夢を見ているのだろうか?見知らぬ女の子に告白をしようとしてなおかつ、その女の子が自分の許婚なんてなぁ・・・今年は受験なのにそんなことにうつつをぬかしているほど俺の学力はピラミッドの頂上辺りに到達していないはずだ。まだまだ、下のほうだ。
「さ、とりあえずもう帰って。電気の戸締りとかはしておくからさぁ・・・・」
そういって先生は俺の頭をくしゃくしゃと撫でると立ち上がって出入り口のほうへと歩いていった。
先生は電気のスイッチに手をつける。
「ほら、何してるの?帰るわよ?」
「あ、はい!」
俺はあわてて立ち上がると書きかけの小説を乱雑に鞄の中に放り込んでよだれのあとをぬぐいつつ、外に出たのだった。
ちょっと肌寒いと感じる季節だったのだろうか?とりあえず微妙に寒気を感じながらも俺は八重先生と共に帰り道を歩いていた。
「夢を見るってことは相当爆睡してたってことね。で、どんな夢を見てたの?」
「な、なんすか?別に面白い夢なんて見てませんよ。まぁ、しいて言うなら思春期の男が見るような夢です」
そういって俺は歩を進める。先生は右手をあごに添えてなにやら考える仕草を見せてにや〜と笑った。
「零時君って以外にスケベだったのねぇ〜」
「何か勘違いしていると思いますけど、そういう夢じゃありません。小説の話でしたよ」
その話をしたら彼女はさらに興味を持ったのか俺に近づいてくる。
「へぇ、始まりはどんな感じだった?」
「そうですねぇ・・・・瑞樹が俺が主役の小説を書いて、俺はそれを読んでました。そして、次にその話に出てきていたヒロインと夢の中での俺の許婚が同じ名前・・・それについては夢の中の瑞樹が勝手に設定したんですけどね。一言で言うとめちゃくちゃな夢でしたよ・・・・まぁ、先生のおかげで最後の一言を言わずにすんでほっとしています。それについてはお礼を言っておきますよ」
先生は何か考えている。その顔は普段からは考えられないほどに真剣だった。
「へぇ、やっぱり女の子に興味を持ってる年頃なんだ?」
「ま、まぁ・・・・」
「で、どんな女の子、もしくは女性が好みなの?ん?お姉さんに言ってみて♪」
にこにこしながらそういってくる先生。なぜだかあせり始めた俺はこほんとせきをして先生に告げる。
「あ〜そういえば今日は僕の一番大好きなロボットが出るアニメがある日でした。」
「何?どうせガンダ○でしょ?」
「いいえ、違いますよ」
「それなら、何?エヴ○じゃないし、マジン○ー?いやいや、マク○ス?ううん、もしかして、ロボ○ン?」
「いいえ、違いますよ」
俺は先生の手をとって走り始めた。先生の家は俺の家の隣だからだ。
「ドラ○もんです!」
家に帰りつくとこれまた久しぶりに見る感じの雅がたっていた。
「お帰りなさい♪」
「あれ?兄さんは?」
「仕事に行ったよ。今日は代わりに私が作ったんだ。たぁんと召し上がれ♪」
そのままキッチンに連れて行かれてアニメを見ることもままならずにさまざまな料理が前に出されていく。
「・・・珍しいな?こんなに作るなんてさぁ?」
「ふふふ、いいじゃん♪大好きな兄さんにはおいしいものを食べてもらいたいからね」
にこにこしてそういっているので何か裏がありそうで怖いのだが・・・いや、ここで怖がっていてはいけない、直接本人に聞いてみれば大丈夫だろう。
「・・・雅、ちょっと聞きたいんだが・・・」
「何?すり〜さいず?」
「いや、もしかしてこの料理の中に毒とか盛ってないだろうな?」
「盛ってない盛ってない!兄さんは私を何だと思ってるの?正義の味方だよぉ〜正義の味方はそんなことしないし、相手を倒すときはきちんと正攻法で拳で叩きのめすの!でも、たとえ兄さんが悪の組織の親玉になっても大丈夫!私が愛の力で正義の道へ連れて行くから!あのさぁ、聞いて聞いて!この前私ね、村雨し・・・なんとかって悪の組織の親玉を倒したんだよ!え?どうやって倒したかって・・・・(以下略)」
さて、この食事を平らげるのに何十分要するだろうかと思いながら話半分、箸を動かすのに半分と意識を使っていた。
そこへ、誰か客が来たようでチャイムが鳴り響く。
「あ、はーい!」
「待って、兄さんは愛妻料理を食べてて構わないからね。私が代わりに行ってくるよ。じゃ、行ってきます!」
何故か敬礼のポーズをとって玄関へと向かっていった。
「まぁ、雅の料理ってまずいと思ってたんだが意外にうまいもんなんだなぁ・・・」
しみじみそう思いながらも箸を動かしていると雅が戻ってきた。
「誰だった?」
「いや、人違いだったよ。私と兄さんのひと時を邪魔するような奴なんて一人もいなかったよ」
俺は雅の足元をふと見たのだが・・・・
「じゃ、邪魔するとかなんですか!」
「そうだぞ、私たちはただ単に遊びに来ただけだ」
右足にルナをひっつけ、左足にソルが引っ付いていた。
「・・・何してんだ?」
「くっ、零時様・・・・お見苦しいところを見せて申し訳ありませんが、私たちをのけ者にしようとする雅様にばれないように潜入しているのです」
「いや、それ普通にばれるだろう?」
「なんの私らは新開発のステルス機能があるのだ!」
ステルス機能なんて関係ないだろう。ばれないようにもぐりこんだ割には背中に花瓶と電話帳をつけているだけなのだが・・・・これがステルス機能だろうか?まだ風呂敷を背負っていたほうがばれないのでは?
「兄さん、誰と話してるの?」
「おいおい、気がついてないのかよ・・・・」
「?」
どうやらステルス機能は雅にみごとに効いているらしい。そして、雅が座ったところで背中のステルス機能をはずして(ステルス機能だけに用が済んだら捨てるっす!)ルナとソルが立ち上がる。
「あ、あなたたち・・・いつの間に!?」
雅は驚いて椅子から立ち上がる。
「俺の義妹は馬鹿だろうか?」
「ふふふ、雅様・・・私たちに潜入を許しましたね?」
「どうだ?新開発のステルス機能!」
「足が重いと思っていたら引っ付いていたのね!」
気づくのがおせぇよ。いや、既に何もかもがおせぇよ!
「く、兄さんは渡さないわ!」
「何のことかわかりませんが、私たちと零時様は遊ぶのです!」
「おう、夢の中まできてくれる仲だからな!」
「な、何ですって!だけど、私の夢の中での兄さんは・・・・」
「何言うんです!私たちの夢の中での零時様は本物ですよ!さらに・・・」
「わたしだってなぁ・・・・」
くだらない自慢大会が始まったので俺は食器を水につけると二階へと上がる。
「お帰り、零時君」
「のわっ!」
部屋の暗がりにはこれまた久しぶりに見る気がする瑞樹の姉、瑞実がこっちを見ていた。
「あ〜ただいま・・・・ってなんでこんなところにいるの!?」
「趣味」
「趣味!?何の趣味なんだぁ!」
「まぁまぁ、姉さんも疲れて帰ってきているんだよ。僕だって疲れているんだ」
「瑞樹!お前まで・・・・」
「そうですわよ、零時さん。汚らしい部屋を片付けている私は静かな場所を好むのです」
「パトリシア・・・・お前もか?」
俺に彼女なんて出来ないだろう。
いや、これから先にもしかしたら出来るかもしれないのだが、まだまだ、こんなろくでなしがたくさんいれば寂しいって思わなくていいのかもしれない。きっと、夢では瑞樹と吉希以外登場していなかった・・・・寂しかったのは夢の中の俺。寂しいとは思っていないのは現実の俺さ。だから、俺はこれからもこの人物たちと歩いていきたいと思う。そこが、どんなに荒地であったとしても・・だ。
〜ルート零 END〜
ルートシリーズが終わっていくことにちょっとでも哀愁を感じる方、ご連絡下さい。いえ、別に何かできるわけでもありませんけどね。すみません、役立たずで・・・・さて、自虐しているならさっさと続きを書いたほうがよさそうですが、今回のルート零ではできるだけ多くのキャラクターを登場させたかったと思っていました。話がわかんなくなるかたもいるかもしれませんが、夢の中の零時は寂しいと感じていたのですが、改めて一緒にいてくれた友人や新たにできた友人とこれからも仲良くやって行きたいという誰もがもっているであろう夢を持っています。名前だけとなった吉希は見事に零時の心の寂しさを具現化できた人物だと思っています。さて、八重先生の零時への呼び方が代わっていたことに気がついた方はいたでしょうか?これも変化していく日常を表したつもりです。なんだかあっというまだったきがしますが、これにてルート零は終わりです。




